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【即興政治論】作家 島田 雅彦さん Q右傾化の中、サヨクの役割は?【東京新聞】
冷戦崩壊後の米国一強支配、グローバリゼーション化の進行に伴い、市場原理、自己責任を重視する新自由主義が幅を利かせ、強者と弱者との格差が広がっています。こうした時代、「サヨク(左翼)」に役割はあるのでしょうか。「優しいサヨクのための嬉遊曲」の著者で作家の島田雅彦さんと一緒に考えました。記者・豊田 洋一
豊田 日本では小泉前政権以降、特に安倍政権になって保守化、右傾化が急速に進行しているとされています。島田さんは今の政治的、社会的状況をどう見ていますか。
島田 今、欧州でも日本でも、中道右派が圧倒的にメジャーになっていて、中道左派さえも、ほとんど力を持たなくなってきています。右派にせよ左派にせよ、中道はどこでも社会民主主義を標ぼうしてきましたが、特に右派は米国との連携を強める政治方針を貫いているように見えます。小泉前政権以降、日本政治の方向性は割とイタリアと似ていて、長らく政権の座にあったベルルスコーニ前首相の政治姿勢も、基本的にオポチュニズム(日和見主義)という点でそっくりでした。ただイタリアの場合、その後、ベルルスコーニだけは政権から遠ざけてやろうという左派連合が動きだして、中道左派がもう一度政権に就くというオルタナティブ(代替手段)が健在です。ここでずいぶん、日本とイタリアと差がついた気がします。
豊田 なぜ保守化、右傾化が進んだのですか。
島田 右派の方が外交面で有利という認識で一致しているからではないでしょうか。タカ派と見られた方が、対外的に押しの強さを発揮できるし、国内でも世論を抑えやすい。最終的に譲歩しても、それまでのタカ派ぶりから態度を軟化させたという意味で、世論が納得しやすい部分があります。特に、朝鮮半島、イラク、環境などの問題に対する対応は、タカ派の方が有利という認識が、政権当事者に根強くあるという気がします。
豊田 イタリアではベルルスコーニ右派連立政権に対抗し、幅広い政党連合の「オリーブの木」方式で政権奪取に成功した例があります。日本でも、同様に政権交代を目指した時期がありますが、実現は厳しい。日本とイタリアの政治状況の違いは何ですか。
島田 イタリアでは左派のキャスチングボートを旧共産党が握っていましたが、日本では共産党が民主党と手を結ぶわけではないし、蚊帳の外に置かれていることが問題なのかもしれません。イタリアで左翼は、インテリの系譜です。知識人には左翼が多く、大学などには左翼の論客が控えています。実は米国でもそうなんですが、彼らは、左派の政治プログラム、ビジョンをずっと持ち続けているんです。
豊田 逆に日本では、インテリは右派ということでしょうか。
島田 まぁ、そう言ってもいいのかなと思います。もちろん日本のアカデミズムにも左派の人は多いのですが、いまひとつパワーにならない。政治論議をしても、井戸端会議の領域に押しやられているような気がしてなりません。それに、左派か右派かという線引きをどこでするかという問題もあります。これまでは、特に憲法九条に対する態度、戦後政治に対する評価で、ある程度は決められましたが、それもあまり適用できなくなってきました。憲法九条に関しては、多数が保持すべきだと考えていますから、心情的に左派的な人たちはかなりのパーセンテージに上ると思われますが、その人たちが愛国を口にした場合、今までの左派のイメージにはちょっと当てはまりません。九条は守るべきだが、日本を美しい国だと思うプチナショナリズムが、個々人の中で矛盾なく共存している感じはします。
豊田 資本主義も社会主義も、行き過ぎはよくない、政府が適度に関与するのがいいというのが二十世紀の教訓だと思いますが、政府は今、弱者対策から徐々に手を引き、その弊害が格差拡大という形で出ています。それを止めるため、サヨクに役割はありますか。
島田 少数意見や少数者の文化、あるいはローカリズムは保持されなければなりません。サヨクはその保持に、一定の役割を果たし続けなければならないと思います。これは文化多様性や生物多様性と同列に論じられます。つまり、グローバリズムが進むと、単一の政治プログラムや経済原則、標準的な文化が力を持ってきます。これは中央集権や標準化、統一の方向に向かいますが、それだと文化の力も経済の力もやがて尻すぼみになってしまう。つまり、それまでは負け組とか、抑圧される側だったものが復活したり、盛り返したりすることが文化や経済の原動力になっていますので、そうした多様性は担保しておかなければならないのです。
しまだ・まさひこ 1961年、東京生まれ。83年、東京外語大在学中に「優しいサヨクのための嬉遊曲」で作家デビュー。「彼岸先生」で泉鏡花文学賞、「退廃姉妹」で伊藤整文学賞をそれぞれ受賞。2003年から法政大国際文化学部教授。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/sokkyo/news/200706/CK2007060502021847.html
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