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DVD発売元:パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
作品名:クライシス・オブ・アメリカ スペシャル・コレクターズ・エディション
価格:¥4,179(税込み) 好評発売中
小泉自民党の歴史的大勝で終わった先の衆議院議員総選挙。しかしながら振り返って見た時,私達はこれまでの小泉政権を評価し,引き続き支持する意志を持って一票を投じたのだろうか。
「自民党をぶっ壊す」という痛烈な宣言や,『郵政民営化』に政治生命を賭けたその一徹さに惑わされただけだったような気がするのは,たぶん私だけではないだろう。つまり,現状の自民・公明連立党政権に半ば辟易しながらも,小泉純一郎の仕掛けた派閥破壊,郵政民営化の号令に,まんまと“洗脳=マインドコントロール”されてしまったのではなかろうか。
政治と洗脳,あるいは陰謀を密接に絡めた映画は,過去にもたくさんあったが,「クライシス・オブ・アメリカ」は,その中でも秀作に数えていいだろう。先の選挙期間中,期しくも自宅でDVDを観賞し,今般の選挙戦がオーバーラップしてきて,非常にリアルな物語として捉えられることが怖かった。
元陸軍の英雄である下院議員の息子レイモンドをマインドコントロールし,アメリカを支配しようと企む女性政治家と,それを阻止しようとする元陸軍少佐の攻防を描いたサスペンス。主演はアカデミー賞俳優デンゼル・ワシントン。悪夢にうなされる陸軍帰還兵マルコ少佐を演じている。また,ストーリー展開の鍵を握る女性政治家エレノアを,名女優メリル・ストリープが貫禄の演技で務めている。
本作は実はリメイクで,フランク・シナトラ主演,ジョン・フランケンハイマーがメガホンを取った「影なき狙撃者」がオリジナルだ。マイクロチップを頭に埋め込み,脳に直接命令を送信する「クライシス〜」に対し,「影なき〜」は,トランプ占いで切られたダイヤのクィーン(女王,すなわち母親の象徴)がトリガーとなって催眠状態に陥り,服従モードへと変移する。舞台設定に関しても,オリジナルの朝鮮戦争に対し,より現実に近い湾岸戦争に置き換えられた。また,米ソの冷戦を下敷きにしたオリジナルを,時代を反映して,政治家と大企業の癒着に新たにプロットし直している。
「クライシス〜」を撮ったジョナサン・デミ監督は,サイコスリラー的要素や最先端医療をふんだんに駆使するなど,現代的な味付けを怠っていない(さすがは「羊たちの沈黙」の監督!)。また,サラウンドサウンドや視覚効果を巧みに活用し,物語に奥行きを付与した点も興味深い。特にレイモンドの選挙事務所でマルコと対話をしている,DVDのチャプター8のシーンは,ガラスに透かして映る背景の複雑怪奇な色合いとその環境音の立体的な響きが効果を上げている。
また,チャプター6のホテル内の隠し部屋にレイモンドが呼び出されるシーンでは,静かな室内に突如響く電話のベル音に,サラウンドならではの方向感が実感できる。オリジナルはモノラル音声のため,こうした効果は刷り込みにくい。
一方で,「影なき〜」の素晴らしい演出は,チャプター5の「夢」の場面だ。ニュージャージーのマダムたちが集う園芸クラブの会合に,兵士たちがなぜか同席している。後にそれが,共産党幹部たちの会合で,怪しい中国人医師が洗脳に関する発表をしている場面であるのがオーバーラップしてくることでわかるわけだが,実に巧みなシーン合成であり,その効果に唸らされる。また,こうした場面のつながりを確認するうえで,DVDはシーンの頭出しが素早く,繰り返しの観賞に適していることも実感できる。
クライマックスが党大会という設定はオリジナルもリメイクも共通しているが,引き金を引く人物が双方で対照的なところがおもしろい。この辺りはぜひ見比べていただきたい部分である。
ところで,わが国の首相がまさか日本を牛耳ろうと考えてはいまいが,今般送り込まれた刺客の中には,レイモンドの母親エレノアとキャラクターが被る人物がいなくもない……!?
(オーディオビジュアル評論家 小原由夫)
http://www.nikkeibp.co.jp/style/secondstage/tanoshimu/dvd_051027_2.html
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