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□日本軍のインテリジェンス [池田信夫 blog]
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/38d3c1e859e755387289af744167a3ae
日本軍のインテリジェンス
2007-05-09 / Books
当ブログの記事に「書評になってない」という批判がたまにあるが、これは書評ではない。原稿料をもらって書く書評は、バランスをとって内容を紹介し、なるべく客観的に評価するよう努めているが、ここに書くのはきわめて主観的でバランスのとれていない感想であり、内容の紹介ではない。
本書も、ちゃんとした書評はアスキー・ドットPC7月号(今月下旬発売)に書いたが、そこで書けなかった感想を一つ:日本が戦争に突っ込んだ原因として、これまでは「民主主義が未熟だった」とか「封建遺制が残っていた」といった観念的な近代化論が多いが、問題はもっと具体的なレベルにあるのではないか。
その一例が、本書のあげているインテリジェンスの貧困だ。特に1940年に三国同盟を締結するにあたって、情報部門はドイツの形勢不利を報告していたのに、松岡洋右外相や陸軍首脳はソ連を含めた「四国同盟」という幻想を抱いて同盟を結び、翌年、独ソ戦が始まると驚愕する。この失敗が、日米開戦に至る決定的な分水嶺だった。その原因は、日本軍では情報の分析を作戦部門が行なったため、強硬派が自分に都合のいいように情報を主観的に解釈したからだ。
この背景には、日本の官僚組織の極端なエリート主義がある。陸軍士官学校を何番で出たかが一生ついて回り、エリートは参謀本部の作戦部門で、若いときから大きな権力をもつ。情報部門に回されるのは「傍流」だから、その分析結果なんか相手にしない。兵站は「ノンキャリ」の仕事だから、エリートは補給を考えないで強気の作戦を立てる。おかげで、餓死者が戦死者を上回るという史上もっとも愚劣な戦争が行なわれた。100万人以上の日本兵が、戦闘によってではなく、バカな上司に殺されたのである。
この原因は、封建制とも軍国主義とも関係なく、山本七平が細密に描いたように、外側の世界と無関係に身内の力関係だけで「自転する」組織にあるのではないか。それを平和主義とか民主主義などの抽象的な理念で克服したつもりになったことが間違いで、実はそういう病気は、まだそっくり霞ヶ関に(そして企業にも)残っているのだ。
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