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2007年4月14日発行
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JMM [Japan Mail Media] No.422 Saturday Edition
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http://ryumurakami.jmm.co.jp/
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▼INDEX▼
■ 『from 911/USAレポート』第298回
「キャンパスと人種問題」
■ 冷泉彰彦 :作家(米国ニュージャージー州在住)
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■ 『from 911/USAレポート』第298回
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「キャンパスと人種問題」
今週のアメリカのTVニュースでは、真っ赤なユニフォームが各局の画面を占領し
た感があります。赤というと、ボストン・レッドソックスを連想する方も多いと思い
ますが、全国で話題になっているのは、そうではなくてアマチュアのスポーツの花形、
大学の女子バスケットボールのチームです。先週末の復活祭の直前に行われた全米の
NCAA決勝でテネシー大学と対戦し、惜しくも準優勝に終わったラトガース大学チ
ーム「ナイツ」のスクールカラーである「スカーレット(緋色)」の色が、メディア
を染め上げたのでした。
私事にわたりますが、ラトガース大学とは私が講師で出講することの多い大学で、
今学期は授業を持っていませんが、多くの教え子がおり個人的な愛着の深い学校です。
そのラトガースの女子バスケットチームは、ここ数年非常に戦力を高めており、「マ
ーチマッドネス(三月の熱狂)」と言われるNCAAで年々順位を上げてきています。
決勝で惜敗したとはいえ、準優勝というのは大学のみならず、私の住むニュージャー
ジー州の人間にとっては「嬉しいニュース」に他なりませんでした。
ですが、全米のメディアに取り上げられたのは、その快進撃についてではありませ
んでした。決勝戦の直後に、ドン・アイマスという有名なラジオのキャスターが番組
の中で、この女子バスケットの決勝戦のことを取り上げたのですが、黒人中心のラト
ガースチームのことを「アイツらの何人かはまるで"nappy-headed hon"(あえて日本
語に訳すとすれば「アフロヘアの風俗のネーチャン」といったところでしょうか)み
たいだぜ。テネシーの子たちは可愛いんだけどな」という「暴言」を行い、これが騒
ぎになる中でチームがたいへんな注目を浴びることになったのです。
発言のあったのは4日の水曜日で、問題にされるとアイマスは謝罪したものの「オ
レは悪い人間じゃない。ただ悪いことを口にしてしまっただけだ」であるとか「オレ
は過去にも失言をしたが、発言を取り消すことはしなかった」と、この週の間は何と
か「火消し」が可能なように思っていたようでした。ですが、8日の復活祭の日曜日
をはさんで、全米ではアイマス非難、ラトガース女子チーム擁護の大合唱が起こって
いったのです。
さて、このドン・アイマスという人物ですが、いわゆるラジオの「ホンネ」トーク
の先駆けのようなベテランで、なかなか人気があったのは事実です。カウボーイハッ
トをいつもかぶっていて、シルバーの頭はボサボサ、そして低温のダミ声で「困った
ねえ。イラクの情勢は……」とか「何だよ、これじゃいつものリベラルのプロパガン
ダじゃねえか」などと「べらんめえ」と「ボヤキ節」が売り物でした。政治的には極
右というわけではなく、中道やや右で、是々非々主義に加えて「タテマエよりホン
ネ」というスタイルです。
中道やや右ということでは、今回も大統領候補として有力なジョン・マケイン上院
議員(共和)と特に近く、そのマケイン議員はよく番組に出演していました。問題に
なった「アイマス・イン・ザ・モーニング」という番組は元来はラジオのトーク番組
であり、CBS系列のニューヨーク地区のスポーツAM局「WNAN」の朝の通勤時
間帯の看板番組でした。その人気に乗じて、またアイマス自身のカウボーイスタイル
が映像的にも効果があるということで、ケーブルニュース局のMSNBCがこのWF
ANの番組をTVでも同時放映していたのです。
MSNBCは元来は名門TV局のNBCとマイクロソフトが合弁で設立した局です
が、当初考えていたケーブルTVとネットのコラボレーションが珍しくも何ともなく
なる中で、MS社は手を引いて実質的にはNBCの別チャンネルという形態になって
います。NBCにはもう一つ日本にも紹介されているCNBCという経済専門局があ
り、これとも差別化する形で「政治ホンネトーク」のニュース番組を並べて、視聴率
競争では善戦していました。
MSNBCが曲がりなりにも存続している大きな理由はバランス感覚です。とはい
っても、一人ひとりのキャスターにバランス感覚を求めては個性が薄くなるので、左
右両派のキャスターを並べるという手法を取っているのです。例えば、クリス・マシ
ューズとキース・オルバーマンは民主党寄り、そしてチャック・スカーボロ、タッカ
ー・カールソン、そしてこのドン・アイマスの3人が共和党系という格好です。本局
のNBCが恐らくは親会社のGE(ジェネラル・エレクトリック)の意向もあってか
民主党色が強いのを、MSNBCでは少し共和党色を強めて全体のバランスを取ろう
ということもあるのかもしれません。
そんなわけで、アイマスのトークは、相当に「べらんめえ」で行っても大丈夫、い
や視聴者もスポンサーもそれに期待しているという構図があったのです。ですから
「暴言」直後のアイマスが、それほど反省せず、例えば「あのセリフ自体、黒人のヒ
ップホップ文化から来た言葉じゃないか」というような弁解もオンエアが可能だった
のでした。
ですが、復活祭の週末を通して、この問題はじわじわと広がって行きました。そし
て全国の黒人系団体が抗議行動を始め、特にNYのハーレムの指導者アル・シャープ
トン牧師が激しい調子で「アイマスの即時解雇」をCBSとNBCに対して主張した
ことで、大問題になりました。週明けには、シャープトン師のラジオ番組にアイマス
が出演して、ひたすら謝罪を繰り返したのですが、シャープトン師はいつもの悲しい
目をしながらこれを拒否、アイマスの立場はどんどん追いつめられていきました。一
部の黒人系団体からはMSNBCに対して「停波」ならぬ「配信停止」を叫ぶ声も出
るに至りました。
今週私は、ラトガースのキャンパスにほど近い、民間の室内スポーツ施設に行く機
会がありましたが、そこでは何人もの人が、この「アイマス」問題の論争を繰り広げ
ていました。「まあ、罪のないホンネじゃないの」というような発言をする人もいた
のですが、近くにいた白人男性からは「オイオイ、ここはラトガースの地元なんだぜ。
あのスカレーットの色がバカにされたんだよ。君のような発言は見過ごすわけにはい
かないんだ」と一触即発ムードでした。
そうなのです。テネシーもラトガースも黒人主体のチームなのに、どうしてラトガ
ースだけがアイマスの揶揄の対象になったのでしょう。しかし、その赤い色が気に入
らなかったというのは解説としては妙です。その場の会話のテープなどを参考にして
みると、カウボーイ気取りのアイマスには、どうも「北部のリベラリズムに守られて
いる才色兼備、文武両道の黒人女性」に対して「からかってみたかった」という雰囲
気が見え隠れします。暴言とか失言の類いがそんなニュアンスから生まれるというの
は良くある話です。
とりあえずCBSとNBCは、アイマスに対して「2週間の出演停止」を申し渡し、
NBCは10日の火曜日には朝の『トゥディ』の枠を約1時間使って、シャープトン
師の主張とアイマスの謝罪の双方をインタビュー形式で報道したのです。その中で、
アイマスの口から「自分が傷つけたラトガースの選手たちに直接会って謝罪したい」
という発言がありました。
これを受けた形で11日にはラトガース女子バスケット部のコーチであるC.ビビ
アン・ストリンガー女史と、主将のエセンス・カーソン選手以下、チーム全員が記者
会見を行いました。この会見は大成功で、地元の各新聞は「威厳ここにあり」、NY
タイムス(こちらも地元紙と言えます)は「二流の侮辱に対する一流の返答」という
表現で大絶賛を繰り広げています。
同時に、MSNBCには各スポンサーから「アイマスを使うなら広告出稿を停止す
る」という宣言が押し寄せました。特にP&G社は「我々の重要な顧客層に不快感を
与える放送の提供は不可能」と声明を出しています。ラトガース側の記者会見が世論
に支持され、広告主からは圧力ということでは、さすがのアイマスも命運は尽きたと
いうことになり、12日からはアイマスはMSNBCのTVからは即時追放というこ
とになったのです。
さて、こうお話すると「いかにもアメリカらしい、タテマエ的な差別問題の処理」
ではないかという印象を持たれる方もあるかもしれません。ですが、問題はそう単純
ではありませんでした。日本と全く同じように、現代のアメリカでは、70年代80
年代の感覚で「弱者の人権」を叫んでもマジョリティへの説得力は簡単には得られな
いのです。それは世相が保守化しているということもあるでしょうし、もっと言えば、
人権を叫ぶ強者に対して「草の根保守」の心情は「言論弱者の屈折」というムードを
漂わせており、その人々を説得できないままに旧来の主張を繰り返してもダメ、とい
う認識がリベラルの側にも生まれてきているからです。
MSNBCサイドとしても、一種の「危険なバランス感覚」を売り物にできたとい
うのは「ホンネのトークが可能」だという信用があることで、一種「言葉狩りに屈し
た」という印象を持たれるようでは左からも右からも見放されるという危機感があっ
たのは事実でしょう。例えば、問題が拡大する直前には、アイマスの「盟友」ジョン
・マケイン議員は、「私はこの件があっても、アイマスの番組には出ますよ」と言っ
ていました。それが許される雰囲気はあり、またこの点だけを取り上げてマケインを
叩くのは下品というムードもある、そんな微妙なニュアンスが背後にはあります。
では、どうしてラトガースの真っ赤な「スカーレット・ナイツ」チームは世論を味
方に付けることに成功したのでしょうか。そこには様々な要因があったと思います。
まず、ストリンガー・コーチとカーソン主将は2人とも黒人ですが、この問題を「黒
人差別」ということを強調するのではなく、むしろ「女性差別」という言い方を前面
に出して追及しました。勿論、これは計算の上の姿勢なのですが、その計算自体に
「人種分断には与しない」というメッセージが織り込んであったのが明らかに伝わっ
たのです。
カーソン主将は「最初は大きな問題だとは思いませんでした。TVで私たちのこと
についてバカなことを言っている人がいる、その程度の認識だったんです。でも問題
が大きくなるにつれてこれは私たちだけの問題ではないんだ、ということに気づいた
んです」という言い方で、ここでは「私憤」ではなく「公憤」なのだということを強
調しています。この点について、ストリンガー・コーチは「この子達のやっているの
は学生スポーツです。つまり社会の中でリーダーシップを取るための訓練としてバス
ケットに取り組んでいるんです」と言っています。「憤ることもリーダーシップの勉
強」という考え方は、アメリカでは非常に説得力があるのです。
その一方で、カーソン主将は「自分はアイマスさんに直接会ってみたいんです。発
言は許せないけど、その人の人となりを知らなくては、その発言に対する自分の本当
の意見は決められないからです」とインタビューで述べています。これも「最初は大
きな問題だと思わなかった」という発言の率直さと並んで、彼女らの言動に説得力を
与えています。
黒人運動家として世論に訴える役は、従来はジェシー・ジャクソン師が有名でした
が、今回のアル・シャープトン師は一味違うのが良かったように思います。ジャクソ
ン師はどうしても「人権問題摘発人」とでもいうような居丈高な印象が拭えませんが、
シャープトン師の丁寧な言動は中道の人にも説得力があると思われるからです。
シャープトン師について言えば、つい最近、自分の祖先が高名な保守系政治家の祖
先の奴隷であったということが調査を通じて判明して話題になったことがあります。
その政治家とは上院議員を長く務めた故ストルム・サーモンドという人で、20世紀
を通じて「人種隔離政策」を大まじめで主張し続け、そのために民主党から共和党へ
くら替えをした「筋金入り」の人物でした。このニュースが明らかになった際に、シ
ャープトン師の見せた表情は私には忘れられません。
会見の中でシャープトン師は「自分は人種差別主義者の祖先に自分の祖先が隷属し
ていたからショックを受けたのではないんです」として「そうではなくて、自分の祖
先が明らかに何者かの所有物であって、そのために筆舌に尽くしがたい苦しみを味わ
ったであろうということが、その所有者がどの一族かが特定されることで、自分の身
体の中の痛みとしてやってきたんです」意訳するとそういう内容のことを喋っていま
す。
これは単に「人権運動家の政治レトリック」を越えたもの、ある深い悲しみの表現
として説得力を持ったのです。その同じ悲しい目を見せながら、シャープトン師が自
分の番組にアイマスを呼んで「アンタは辞めるべきだ」と迫ったのは、これは効きま
した。結果的には、CBSラジオもMSNBCにやや遅れた12日夕刻にアイマスの
即時契約解除を発表しました。
その晩に、ラトガースの女子バスケチーム全員とアイマス夫妻は、非公開の席で会
談を持ったそうです。翌朝のNBCの報道によりますと、冒頭アイマスは謝罪をして
許しを乞うたそうですが、部員たちはまずお互いを知ることからということで、一人
一人が自分の専攻している分野を紹介しながら「どうして自分たちが揶揄されなくて
はならないのか、それはどういう文脈から成立するのか」をアイマスに迫ったのだそ
うです。
アイマスは彼なりに必死になって「ホンネ」も含めた説明を試みたのだそうですが、
部員たちは納得できない、そんな平行線の議論が非常にテンションの高い中、三時間
も続いたのだそうです。その中には涙も怒号もあったと言いますが、会談後にストリ
ンガー・コーチが会見に応じたところでは「内容は非常に建設的だった」ということ
だそうです。その翌日の13日になって、ストリンガー・コーチは最終的に彼女たち
がアイマスの謝罪を受け入れたこと、そして「赦しのプロセス」に入っているという
発表を行いました。
さて、今週は、アメリカの他の大学でも人種がらみの事件に関するニュースがあり
ました。南部のノース・カロライナ州にあるデューク大学の男子ラクロス部員数名に
関して、昨年の3月から1年越しで争われてきたレイプ疑惑が、最終的に不起訴とな
ったのです。ラクロスというのはネイティブ・アメリカン(いわゆるインディアン)
の活動を元に北アメリカで発明された球技で、オリンピックの種目にはなっていませ
んが、日本でも競技人口がだんだん増えているようです。
小さなネットのついたスティックを使い、ホッケーのようにゴールを狙うのですが、
ボールが硬いことと空中を飛び交うこと、またスティック(クロスと言いますが)が
振り回されることからかなり激しい競技です。その一方で、用具にコストがかかるこ
となどから歴史的に白人中心、やや富裕層子弟中心のスポーツというイメージがある
のです。
この事件、ラクロス部員の参加していたパーティーに黒人のダンサーを呼んだとこ
ろが、そのダンサーに対する集団レイプが行われたという被害者の申告があったこと
から、学内は騒然となりました。デュークというのは、南部の名門大学であることは
間違いありません。そのキャンパスは人種と政治的な立場で分裂状態になったと言い
ます。最終的に3名が逮捕されたのですが、この3名は終始無実を主張して徹底抗戦
の構え、その一方で人文科学系の教員たちは「デュークの校風に問題あり」という署
名を行い、また学内と周辺の黒人コミュニティは一斉にラクロス部への批判と、被害
者の擁護に回りました。
ですが、証拠はどんどん崩れていったのです。またFOXニュースなどの保守系メ
ディアはキャンペーンを張って「レイプ事件の場合は、疑わしきは罰す」というムチ
ャが横行しているのだとして、部員たちの擁護に回りました。そんな中、捜査を指揮
した検事総長が「出世のために黒人世論に迎合」しているのだという報道もされるな
ど、大混乱に陥ったのです。
最終的には被害者の証言はほとんど証拠によって覆されました。携帯電話の発信記
録、デジカメの写真に残された時刻データなどを積み重ねることによって、被害者の
主張した監禁やレイプについてはほとんどが事実でないとして崩されたのです。また
被害者が泥酔していたことや、薬物の使用などが明るみに出たこと、更に過去に同様
の「レイプ被害狂言」や「家庭内暴力狂言」などの履歴があるということで、証言の
信憑性も崩れたのです。
検察は、DNA鑑定の結果の公表を遅らせたり、レイプ容疑は取り下げて監禁と虐
待だけに絞ってみようとしたり、何とも歯切れの悪い対応でした。少なくとも黒人女
性の親告によるレイプ疑惑である以上、検察としては世論を意識すると簡単には不起
訴にできない、そんな日々が続いたのです。そんな中、誰もそうだとは言いませんが、
今週ラトガースの女子バスケットチームが「胸を張って女性の、そして黒人の威厳を
保った」という空気の中で、そのニュースに隠れるように、またラトガースのニュー
スを見て黒人と黒人にシンパシーを感じる層が満足感を持っているのに乗じて「厄介
な無罪宣言」を行ったという計算もゼロではないのだと思います。
それにしても後味の悪い事件です。仮に「レイプ」が無実だとしても、白人男性だ
けの学生のパーティーに「ストリップ」や「エスコート」をする黒人女性を呼んだと
いうのは、何ともお粗末な話だと思います。色々な証言からすると、酒やドラッグの
影響下、代金のことで女性と学生達の間で口論になったというのは本当らしく、その
中で明らかに差別的な言葉も飛び交っていたようです。そうした「文化」そのものに
関する反省は、「無実で良かった」という声にかき消されてしまっているのです。
ラトガースの事件にしても、デュークの事件にしても、大学のキャンパスで人種を
めぐるトラブルを見るというのはイヤなものです。ただ、この二つの事件を通じて、
人種差別の問題や冤罪の問題などが深く議論されたことは悪いことではありません。
アイマスの問題をめぐっては、渦中のNBCネットワークのスティーブ・カープス社
長は「今回の事件の教訓は?」と問われて「教訓というよりも、多くの人が様々な意
見を交換するきっかけになったという事実は評価しても良いと思います」と述べてい
ました。反省を期待する向きには不満かもしれませんが、このコメントそのものには
前向きの感触がありました。
アイマスの「処分」が決まり、ラトガースの女子チームが「謝罪」を受け入れたこ
とで、13日の金曜日には雰囲気はずいぶんと緩んできており、保守派からの「ジャ
クソン師やシャープトン師のプロパガンダは許せない」というような声も紹介される
ようになってきています。それと同時に、問題となった "nappy-headed"(アフロヘ
ア)という単語のルーツが奴隷制時代にあるということも報道され、更に双方の立場
から議論が広がっていく気配もあります。
ふと気づくと、戦争に幻惑された一時期の「国家の団結」は崩れてしまっています。
人種の分断は依然としてあり、その中で双方が言いたいことを言って衝突することが
可能になっています。そのこと自体は苦いプロセスですが、社会が正常化していると
いう証拠だとも言えるのでしょう。
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冷泉彰彦(れいぜい・あきひこ)
作家。ニュージャージー州在住。1959年東京生まれ。東京大学文学部、コロンビア大
学大学院(修士)卒。著書に『9・11 あの日からアメリカ人の心はどう変わった
か』『メジャーリーグの愛され方』。訳書に『チャター』がある。
最新刊『「関係の空気」「場の空気」』(講談社現代新書)
<http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061498444/jmm05-22>
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JMM [Japan Mail Media] No.422 Saturday Edition
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【発行】 有限会社 村上龍事務所
【編集】 村上龍
【発行部数】128,653部
【WEB】 <http://ryumurakami.jmm.co.jp/>
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