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生物化学兵器「黄色い雨」騒動 米国務省が撤回するまでの顛末
http://www.asyura2.com/07/bd48/msg/335.html
投稿者 hhh 日時 2007 年 4 月 07 日 00:08:44: SSfxXqYMGwuBw
 

1980年代米国務省長官アレクサンダー・ヘイグはソ連とその同盟部隊が
アフガニスタン・カンボジア・ラオスで化学兵器を使用したと主張した。
主な報告は1979年10月にラオスの反共難民30数名からもたらされた「上
空から散布された黄色い雨」によって「めまい・吐き気・変視症・吐血
などの後に死亡する」というものだった。米国務省は難民から話を聞き
問題の物質のサンプルを集めた。直径数ミリ程度の黄色い斑点のある葉・
茎・小石など100点近くが集まった。これらは米政府が委託した民間施設
で分析された後「東南アジアでは自然発生しない非常に高濃度のマイコ
トキシン・トリコテセンが検出された」と発表された。

マイコトキシンとは myco菌類toxin毒素 の名のとおりカビから発生す
る100以上の毒素の総称である。トリコテセンとはそのマイコトキシンの
中の一つである。カビが元であるから実際は東南アジアでも発生しうる。
曝露し皮膚粘膜から吸収されるとただれ・かゆみ・発熱・内出血・血便な
どの悪性食中毒様の症状をおこし死に至ることもある。また曝露後28日間
まで代謝物が人体から検出される。

これらは過去に生物化学兵器の病原体とみなされた事はない。(そしてこの
騒動以後も実用が確認された事はない)食中毒での死亡例はあるものの上空
からの散布で狙いどうり大人数を殺傷できるほどの兵器としての効果が本
当にあるのかは実際のところ疑問視する声が多い。

サンプルは米英の政府系研究機関などによって分析されたが、分析手法の
精度があがるにつれて、当初主張された毒素を含んでいるサンプルは全体
のごく一部であり、その一部ですら含有比は実際にはごくわずかにすぎな
い事が判明していった。残りの成分を突き止めようと政府系研究機関は骨
を折ったが82年英ポートタウンの研究者により成分は花粉と判明した。こ
の発見はたちまち世界中の研究所で確認された。

米政府はこの事実を受け入れたが、陸軍感染症研究所のS・ワトソンはそ
の理由についてソ連が「毒素と花粉を溶剤で混合した」と主張した。これ
とは別に花粉の存在についての見解がエール大学研究者から提出される。
花粉を分析した結果内部は空洞で蜜蜂が消化するとこのような形状になる
・・スミソニアン研究所や仏・英・米の花粉同定を専門とする研究機関で
分析した結果、サンプルから発見された花粉は東南アジアの自生植物で、
成分構成も野生蜜蜂が摂取する花粉と全く同じである事が判明した。加・
英の科学者らがサイエンスジャーナル誌で発表した見解などから、穀物に
蜜蜂糞が付着するなどして発生した自然界のカビから、マイコトキシン・
トリコテセンが形成され人体に入って悪性食中毒様の症状を呈すると考え
られた。東南アジアその他で集団飛行中に排泄する習慣のあるジャイアン
トミツバチの事例の報告もなされワトソンの説は説得力を失う。

83〜85年の間に米国防省と国務省が共同で現地調査を開始する。そして件
の難民へのインタビューに専門家を起用して再度聞き取り調査を行う。結
果、前回証言したものの多くは「黄色い雨」についての証言を「直接見て
いない」とはっきり撤回した。
85年政府調査チームは「難民らの『黄色い雨』使用に関する情報はあまり
にも不完全か本当らしくないままである」と結論した。95年3月の米国務
省94人権白書には該当地域で「化学兵器『黄色い雨』が使用されてきたと
の証拠はない」と明記された。

結局この「黄色い雨」キャンペーンの間、レーガン政権は生物毒素禁止条
約の枷をはずし、化学兵器生産再開と生物化学兵器研究支援額の四倍増額を
議会に認可さす事に成功したのだった。

参考
 NHK出版「世界生物化学兵器地図」p141-143
NewScientist 2002/6/22 記事
インドの黄緑の雨は冷戦偏執病の記憶を喚起する
ttp://www.newscientist.com/article/mg17423481.500.html  など

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