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知はうごく 第2部 コンテンツ力:海外でシェア落とす日本製ゲームソフト [ITmedia]
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投稿者 white 日時 2007 年 3 月 19 日 23:09:14: QYBiAyr6jr5Ac
 

□知はうごく 第2部 コンテンツ力:海外でシェア落とす日本製ゲームソフト [ITmedia]

 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0703/15/news075.html

知はうごく 第2部 コンテンツ力:海外でシェア落とす日本製ゲームソフト

海外で日本製ゲームのシェアが減り続け、「存在感も低下しているという。「元の作品とは似ても似つかない」という「ときメモ」米国版をコナミが投入するなど、ローカライズの努力も続いているが、カギはやはり人材育成だ。
2007年03月15日 17時42分 更新

 「海外市場ではゲームソフト市場が2倍、3倍に成長しているのに、日本のソフトはそこに食い込めていない。海外出荷高は横ばいだ」

 コンテンツ産業の拡大を目指す経済産業省メディア・コンテンツ課の井上悟志課長補佐はこう指摘し、ゲームソフトの輸出拡大の必要性を強調する。

 同省の資料によると、家庭用ゲームソフト市場は2001年から05年にかけて、欧州では1798億円から5467億円へと約3倍に急増、北米でも3385億円から7117億円へ2.1倍増となった。

 しかし、日本のゲームソフトメーカーの海外出荷高は、01年の2532億円から03年には1993億円へと減少。05年には2528億円へと回復したが、ならしてみると一進一退にとどまっており、シェアは6割から3割に半減した。

 市場の成長力に差がついた原因は、ゲーム機の普及が早かった日本の方が先に成熟期を迎え、欧米が後から急成長しているからだ。とはいえ、日本より市場規模の大きい欧米で、出荷がほぼ横ばいだった日本製ゲームのシェアは減り続けており、「存在感さえ低下している」(井上課長補佐)という状況を招いている。

 しかし、携帯型ゲーム市場が拡大基調にあるゲームソフト業界の切迫感はそれほど強くない。

 業界団体であるコンピューターエンタテインメント協会(CESA)の和田洋一会長(スクウェア・エニックス社長)は、「5、6年前までは、国内市場の成長につれて業界も大きくなった。その国内が飽和状態に達したが、成長のために海外市場に目を向け始めたのはは最近のことだ。本格的な海外展開はこれからの課題となる」と語る。これに対し、経産省は「日本の存在感が低下している」(井上課長補佐)と危機感が強い。

問題はローカライズ

 ゲームソフトにとって、海外市場の開拓は簡単ではない。まず、国によって売れ筋ジャンルが違う。自社製ゲームソフトの多くを海外向けにローカライズして販売している日本ファルコム(東京都立川市)の山崎伸治社長は、「日本のユーザーは、ファンタジーや冒険など独自の世界観やストーリー性に感動するが、米国はスポーツやアクション系ゲーム、欧州ではルールや表現が面白いゲームの人気が高い」と経験則から解説する。

 また、言語の翻訳はもちろん、現地のルールや規制に合わせて内容変更を施す「ローカライズ(現地化)」が必要だ。そのうえ、お国柄に合わないと人気が出ない。

 コナミデジタルエンタテインメントは数年前、90年代に国内で爆発的にヒットし、「萌え」ブームの火付け役となった恋愛疑似体験ゲーム「ときめきメモリアル」の米国販売を計画。コンピューターグラフィックス(CG)の“日本的美少女”はそのままに、英語にだけ翻訳してモニターテストをしたが、評価は最悪だった。

 しかし、国内でシリーズ230万本を売った商品を何とか生かしたい。石塚通弘ゲームソフトカンパニープレジデントは「日本的な美少女キャラや、純情なストーリーは米国では受け入れられない」と分析。舞台設定や登場人物のCGを変えれば、ゲームの仕組み自体は受け入れられるはずだ−と考え、米子会社がキャラクターの変更などについて研究。「プレーヤーが愛着を持てる登場人物にすることが重要」として、12〜35歳の男女に市場調査を繰り返し、いくつも創造した中でもっとも人気が高かったキャラクターを選出した。

 1年半の制作期間を経て完成した「米国版・ときメモ」といえる「Brooktown High」のCG映像は、「元の作品とは似ても似つかない」(石塚氏)。結局、恋愛シミュレーションというテーマだけが共通で、中身はすべて違うほど変容したというが、同社は「米国市場に対するコナミの挑戦」と意気込んでおり、近く全米に投入する。

オンラインゲームはキャッチアップできるか

 ブロードバンド(大容量高速)通信の普及で急加速する新市場がオンラインゲームだ。ゲーム専門誌を発行するエンターブレインの調査によると、日本国内のオンラインゲームの市場規模は昨年、約1560億円に達し、平成22年には3095億円へほぼ倍増すると予測している。

 韓国、米国が先行し、日本は後塵を拝している分野だが、家庭用ゲーム機を活用したネットゲームへの取り組みは早かった。ブロードバンド(高速大容量)通信による常時接続が普及していなかった平成14年、スクウェア(現スクウェア・エニックス)は多人数同時参加型の「ファイナル・ファンタジーXI」を投入した。11年から150人のクリエーターが2年半をかけて開発。スクウェア・エニックスでは、「オンラインゲームは発売して終わりじゃない。遊んでいる人の動向、意見を見ながら、今も数十人体制で2カ月に一度はゲームの世界の拡張を続けている。それを含めれば、もう8年ほど開発していることになる」と話す。

 しかし、数百万人というユーザー数を誇る米国の「ワールド・オブ・ウォークラフト」や「セカンドライフ」、韓国の「ラグナロクオンライン」「リネージュ」には遠く及ばない。ネットゲームの主流はパソコンベースとなっている。

 日本がオンラインゲームに出遅れたのは、コンシューマーゲーム機の分野での強みが裏目に出た結果だ。パソコン用ゲームの分野が育たず、オンラインゲームへの発展につながらなかった。その一方、韓国がオンラインゲームの分野でリードしたのは「PC房」と呼ばれるネットカフェが普及していたことに加え、「海賊版ソフトが跳梁跋扈したがためにコンシューマー機が定着せず、毎回ユーザー認証が必要なオンラインゲームが発達した」(ゲーム関係者)という見方がある。

 いずれにしてもネットゲームの主流はパソコンべースとなっており、最近では米、韓から日本への逆上陸が相次ぐ。国内最多の参加者を集める「ラグナロクオンライン」は、韓国製ゲームを日本向けにローカライズしたものだ。

 運営元のガンホー・オンライン・エンターテインメントの森下一喜社長は「ゲームの楽しさそのもので日本は決して劣っておらず、むしろ韓国が日本のゲームの作り方を取り入れている」と一日の長を指摘する。この一方で、「オンラインゲームは参加者同士が気軽に声をかけあえるコミュニティのような機能が必要で、そのあたりのシステムや運営面のノウハウを韓国勢は熟知している」と、謙虚にノウハウを吸収する姿勢をみせる。

 同社はソフト制作会社を傘下に収め、独自開発のオンラインゲームのサービス開始を目指している。

 オンラインゲームは売り切り制のパッケージソフトと異なり、継続的にサービスを提供し続けるため、サーバーの保守管理や顧客対応に費やすコストや労力も膨大で、初期投資の回収に時間がかかる。ただ、早くサービスを開始した会社が顧客を継続的に確保できる「先行者メリット」が働きやすいため、日本勢が市場を制するためには早期の巻き返しが不可欠といえる。

ここでもカギとなるクリエーター育成

 海外市場でシェアを落とし、オンラインゲームでも出遅れた劣勢の日本のゲーム業界の反転攻勢には何が必要だろうか。

 最近の日本のゲーム業界は、需要が高い携帯ゲーム機や携帯電話向けの簡易なソフトに傾倒しており、ゲームソフト産業は任天堂のDSやソニーのPSPといった新型のポータブルゲーム機向けソフトや、携帯電話向けソフトの需要増加に活気づいている。

 特にDSでは、子供たちに人気のポケットモンスター関連ソフト2本が、発売からわずか3カ月で計500万本を突破したほか、「脳を鍛える大人のDSトレーニング」「どうぶつの森」も300万本を突破するなど大ヒットを連発。同社は「従来はゲームの複雑化がゲーム離れを招いていた。新しいゲーム機やソフトで新しい体験を提供することで、市場は再び盛り返す」と自信を深めている。

 しかし、エンターブレインの浜村弘一社長は、「DSや携帯電話向けの簡易なソフトでゲームの新しい楽しみを追及する取り組みと、ソニーのプレイステーション3やオンラインゲーム向けの複雑なソフトの開発の両方に取り組まなければ開発能力が偏る」と長期的視点にたった人材活用の必要性を訴える。

 ゲーム制作者を養成するデジタルエンタテインメントアカデミー(東京都新宿区)の平野雅一郎校長は、「日本のゲームクリエーターの創造力は決して落ちているわけではない」と前置きしつつも、国際競争で勝ち抜くために「今まではクリエーターの素質や努力で良いゲームを作ってきたが、今後は能力を伸ばす環境整備に国レベルで取り組む必要がある」と提言する。

 CGや音楽の高度な表現に加え、優れたゲーム性や物語性が求められるゲームソフトづくりは、ビジネスソフトよりはるかに難しいとも言われるためだ。米国や韓国は国や大学が人材育成に熱心だが、日本の大学はゲーム産業に無関心で、クリエーター教育の出遅れにつながっていることを課題に挙げる。

 日本の国際競争力強化のためには、クリエーターの能力強化はもちろんだが、多業種の業界慣習を理解し、ビジネスとしてのゲーム運営ができるプロデューサー能力を持つ人材が不可欠となる。「ゲームが好きだから」というだけの“オタク”的視点で対応できる時代は終わっている。

  (知的財産権取材班)

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