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知はうごく 第2部 コンテンツ力:冷え込むジャパニメーション [ITmedia]
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投稿者 white 日時 2007 年 3 月 19 日 23:08:14: QYBiAyr6jr5Ac
 

□知はうごく 第2部 コンテンツ力:冷え込むジャパニメーション [ITmedia]

 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0703/14/news049.html

知はうごく 第2部 コンテンツ力:冷え込むジャパニメーション

「日本のアニメは世界で人気」というが、現状は冷え込んでいる。低賃金・長時間労働が知れ渡ったアニメーターの人材不足や海外の下請け依存といった製作現場の現状は、「ジャパニメーション」の空洞化を招きかねない。
2007年03月14日 15時19分 更新

 世界に広がった日本の漫画という土壌から、「ジャパニメーション」という樹木が生まれた。国内外の興行収入が190億円に達した「ポケモン ミュウツーの逆襲」(1999年)、さらに、275億円の「ハウルの動く城」(2005年)などの世界的ヒットが登場。国際映画祭でも取り上げられるようになり、政府はアニメーションを「ゲームとならぶわが国の有力な輸出産業として注目されている」と位置づけ、本格的な振興策に乗り出した。

 宮崎駿氏のスタジオジブリ、海外でも評価の高い「新世紀エヴァンゲリオン」や「イノセンス」をはじめ、全米のビデオチャートで1位を記録した「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」(劇場版、押井守監督、1995年)などを手がけたプロダクション・アイジーのような世界的スタジオも頭角を現し、日本のアニメ市場は2339億円(2005年)で邦画の1.2倍の規模となった。ジャパニメーションは世界の主要市場に普及、浸透した。

 「日本のアニメが米市場に認められたのはやはり『攻殻機動隊』の映像作品が発売された95年あたりだ。しかし、当時はまだ、米国のアニメではご法度だったセックスや暴力の場面をマニアが楽しんでいた感があった。まだまだ、メーンストリームの若者文化ではなかった」。アイジー社長の石川光久氏(48)は日本アニメの米市場における興隆期を振り返る。

 しかし、ジブリの「千と千尋の神隠し」(03年)が米アカデミー賞長編アニメ賞を受賞すると状況は一変し、広く大衆の支持を得るに至ったという。

 その後、05年ごろまではポケモンシリーズ、ジブリアニメなどのヒット作が出るが、最近の米国でのジャパニメーションブームには一服感が出ている。

 「作品の供給過多などが原因で、米のDVDアニメの市場はピーク時より約100億円も減少し、約400億円規模に縮小した。海賊版の影響もあるのかもしれない」(石川氏)。経済産業省の研究会でも「アニメの国際展開は短期的には冷え込んでいる」と認め、“森林化”に向け、次の方策を模索する。

中核人材が育たない

 日本のアニメーション業界は他のコンテンツに比べて改善すべき課題が多い。

 アニメは日本だけではなく、米ハリウッドや中国、韓国なども作品制作に熱心だが、特に最近のハリウッドは、3DCG(立体コンピュータ・グラフィック)アニメの人気が高い。日本のアニメが強いといわれているのは2Dであり、3Dになると実は米スタジオに太刀打ちできない。今後、3DCGの流れが強まったときに対応するために、表現手法の多様化を推進する必要がある。

 また、海外展開強化のためには、ローカライズ(現地化)が不可欠であり、企画段階からの提携や、現地人プロデューサーなどとの共同作業の必要もある。

 プロダクション・アイジー社長の石川光久氏は、「これからは権利ビジネスではなく、コミッションビジネス、つまり、共同制作だ」と言い切る。同社は平成17年、世界最大のアニメ専門チャンネル、米カートゥーン・ネットワークと共同でオリジナルの新作アニメ「IGPX」の制作を開始。現在、日米双方で放映されている。

 石川氏は、「単なる権利の売買ではなく、共同制作による波及効果で、世界最大の米のエンターテインメント・ビジネスの『川上』をめざすことが、日本のアニメ制作会社の生きる道だと思う」と、企画段階から海外進出を視野に入れた展開の必要性を指摘する。

 しかし、日本のアニメ業界にとって最大の課題は、なんといっても人材育成、確保だ。企業の根幹であり、土台をなす部分だが、そこが揺らいでいる。

 背景には、テレビ局や広告代理店の下請けという位置づけで制作を請け負ってきたアニメ業界の生い立ちがあり、低賃金や長時間労働などの問題点を解決できないまま、現在に至っている。

 これまでは、多くのアニメーターの「好きだから」という情熱に支えられて成り立っていたが、若いクリエーターはゲーム業界などに流れ始めており、制作力の弱体化が懸念されている。

 アニメーターの竹内志保氏(39)は、最初に手にした給与が2万5000円だったことを覚えている。

 「どうやって食いつないでいたか、わからない。親に金を送ってもらったり先輩におごってもらったりはしていたと思うけど」

 アニメーターの給与は、新人クラスで月5万円程度の基本給と、動画1枚いくらの出来高制となるケースが多いという。1枚200円の場合、300枚描けば6万円となり計11万円だ。

 竹内氏の新人時代は1枚130〜150円。「がむしゃらに描いていた。月1000枚描く人もいた」というが、アニメ業界では人手不足は常態化、人材基盤に対する懸念は絶えない。

 「美少女戦士セーラームーン」などを手がけ、昨年設立50周年を迎えた老舗、東映アニメーションで約45年間、作画の現場を担当してきた吉岡修専務取締役(69)も、日本のアニメの製作現場の現状に危機感を抱くひとりだ。

 「30年前は、30分のテレビアニメは週8本から10本だった。それがここ10年でぐんぐん増え、今では大体週103本前後。しかし、アニメーターの数はそんなに増えていない。だいたい国内のアニメーターは3500〜4000人くらいで推移しているはずだ」という。

 「作画作業を中国や韓国、フィリピンの下請けに外注に出すことは、昔から変わっていないが、こうした下請け体制は、日本のアニメの質を下げる可能性をはらんでいる。現在、原画製作は日本、動画と塗りの作業はほとんど海外の下請けに任せているが、本来、我々の世界では、動画を5〜7年経験してから、原画を担当したものだった。ラフ画を清書するだけの動画と違い、原画は核の部分。映画でいえば俳優だ。いまのような分業体制を続けていれば、原画を描ける人材が日本では育たない」と懸念する。

 しかし、原画が描ける人材の教育・育成は簡単ではない。「アニメーターのほとんどはフリーか作品ごとでの契約なので、原画を描ける人材を企業や国の機関が教育するというのは机上の空論になりやすい」と解決の糸口は見つからない。

官民で土台作りに着手

 紙をめくる音が響くほどシンとするなか、アニメーターたちが机に向かっている。アニメ制作会社「手塚プロダクション」の埼玉県新座市のスタジオ。1月末からインターン実習に来ている専門学校生の高倉香恵さん(23)は「静けさに驚き、感動もした」という。がやがやと慌ただしい現場のイメージを持っていたが、まったく違った。

 週6日、朝10時から夕方6時まで。この1カ月余り、振り向く、歩く、走るといった基本動作の動画作りから入り、風になびく旗の動きなどをB鉛筆で描いた。後半は課題が与えられ、自分で動きを作る演習を重ねた。

 実習最終日を翌日に控えた今月8日、高倉さんは一心不乱にピエロを描いていた。大きな玉の上でバランスを崩し今にも落ちそうなピエロの画と、地面に倒れている画の2枚だけ与えられた。

 「この間にどんな動きでもかまわないから自分で作ってごらん」と指導に当たる作画監督、瀬谷新二さん(47)がいう。高倉さんは黙々と描き続けた。

 わざと難しい課題を与え、現場で使えるかどうかを見極める。ピエロはその1つだ。「才能のある人は経験がなくても何とかする。課題の意図が瞬時に理解でき、本能的にできる人がほしい。ある程度の資質をもってくれないと、教えても無駄になることが多い。特殊な才能を要求する仕事ですから」

 瀬谷さんが近寄り、仕上がり途中の動画をぱらぱらめくる。「枚数が増えてもいいよ。ふくらませてかまわない」と助言すると、高倉さんは真剣なまなざしで聞き入れた。

 専門学校のアニメ科に在学中の高倉さんは「学校では1つの課題を2〜3週間かけてゆっくり教わる。日本動画協会の講座は短期間でレベルが高く細かいところまで教わり、ここではさらに細かく、線一本に関するところまでご指導いただいている。慣れるまでは大変だったけど、あっという間だった。密度の濃い時間をすごせた」。映画上映やテレビ放送用の仕事に直接かかわらなかったが、「現場にしかない知識や空気がある」と実感を込める。

 考え方も変わった。「以前は漠然とアニメの仕事を志していたが、より現実感が増してきた。早くプロを目指してがんばりたい」と将来をみすえる。

■ ■ ■

 高倉さんは、アニメ業界団体「日本動画協会」が経産省の支援を受け、昨秋から始めた「アニメーター養成プロジェクト」に参加する1人だ。

 アニメ制作で中核となる優秀なアニメーターを目指す人材を見いだし、育成する方法を探る実験的なプロジェクトだ。作品の質や独自性を左右する「原画マン」としての資質があるか見極めようとしている。

 150人近い申し込み者のうち、1次と2次試験を突破した15人が昨年11月末から5週間にわたり動画と原画の講座を受けた。最終的に11人が、制作会社7社で1カ月余りインターン実習を行った。

 専門学校などで行われている従来の育成と異なり、対象人数を絞ったうえで、作画監督など現役アニメーターが直接指導にあたった。「実際に作っている人からの指導は、受講生のモチベーションが上がり、技量もアップし、自信につながる」と日本動画協会の高橋英治事務局次長。

 選考や原画指導などプロジェクト全体にかかわった手塚プロの瀬谷さんは「これまでアニメ業界は専門学校の教育にお任せで、卒業生を受け入れるだけだった。余裕がなく、各社が個別に人を育てていた。今回は原画が描ける人ということで敷居が高く、1人も残らないのではと最悪の事態も想定したが、何人かは戦力として生き残れるだろうという感じはする。業界が踏み込んだことはよかった」と手応えを感じている。

 今月13日、東京・秋葉原でインターン実習の修了式が行われ、高倉さんを含む3人が制作会社に採用された。経産省と同協会は、このプロジェクトを来年度も続ける意向だ。

 「クリエーター大国の実現」。政府がデジタルコンテンツ振興のために掲げた3つの基本目標のひとつだ。官民共同の土台作りは、実を結ぶだろうか。

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