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こんにちは。カキフライを食べると必ず口の中をヤケドして皮がべろんとむける、パオロ・マッツァリーノです。
さあ、いよいよ発売が2月5日に迫りました、私の新刊『つっこみ力』でございます。おそらく、6日、7日には、全国の書店の店頭にお目見えしていることでしょう。税込みで735円と、お求めやすい価格ですので、懐具合に余裕のあるかたは、ぜひ一冊、お買い求めください。
近年のムダにぶ厚いミステリー小説と異なり、長時間片手で持っても腕が疲れません。通勤通学の車内で、ティータイムのひとときに、退屈な講義の間の息抜きに(ただし、一部の社会学・経済学の先生は私の本を有害図書に指定しておりますので、見つからないようこっそりね)、半身浴・岩盤浴のお供にもどうぞ(防水加工はしておりません)。
新書だから、装丁はどうせみんな同じで地味だろう、なぁんて考えたあなた、見くびってもらっちゃ困ります。本のあちこちに、とことん趣向を凝らしてます。
数メートル先からでも目立つこの帯を、とくとごらんください。ああっ、もしやこのイラストは! そうです。筑摩の担当者の粋なはからいで、吉田戦車さんのイラストが復活、しかも微妙にヒゲのあたりがバージョンアップ。
「愛と勇気とお笑いと。」帯のコピーは私が考えました。というか、そもそも2年以上前、新書の執筆依頼を受けたとき、まったく内容が決まってないのに、つっこみ力――愛と勇気とお笑いと、というタイトルで書きますと約束してしまったんですね。タイトルとコピーが先行した企画だったんです。
そして、ちくま新書は裏表紙に著者のプロフィールと顔写真が入ることになってるのですが――こちらがどうなっているかは、店頭で手にとってお確かめください。
もしかしたら、型にはまった思考しかできないアタマの固い人が『反社会学講座』と『研究報告』を読まずにいきなり『つっこみ力』を読むと、なんだこのふざけたプロフィールは、とか、なんでいきなりコントや漫才が始まるんだ! とお怒りになって、教養系の新書でデタラメを書くべきでない、みたいなヤボな批評を書くかもしれません。デタラメじゃなくて、この本の存在自体が丸ごとエンターテインメントなんですけどね。これまでどおり、使ってるデータはすべて本物ですし。まあ、そういう的はずれな反応も含めて、楽しみにしてます。
今回は大阪弁の漫才台本にもチャレンジしてみました。とはいっても、私は大阪弁の細かいニュアンスがわかりませんので、まずは、いとしこいしとかカウスボタンのようなベテラン漫才師のしゃべりをイメージして標準語で書き、それを関西出身のかたに翻訳してもらう方式をとりました。ただ、最終的には私が手を入れ調整しましたので、もし言葉の使いかたがヘンだとしたら、文責はすべて私にあります。
初心者向け入門書のパロディもあります。よくあるでしょ、優等生の女子生徒とアホな男子生徒と博士が出てくる、会話形式の入門書が。そういうのって安易な作りのものが多くて腹が立つんです。「AはBである」という学問上の法則を説明するのに、「AはBなのじゃよ」「うわあ、そうなのかあ」とか言葉尻を変えてるだけで、ちっともわかりやすい説明にはなってないんです。そこで私が、趣向を凝らすとはどういうことなのか、見本をお見せします。他人の書いたものにつまらないとケチつけるだけなら誰でもできます。戯作者としては、実践で示さなければいけません。こちらも結果をご覧(ろう)じろ、ってことで。
本文でも書いてますが、私はテーマなんてものは漠然としたものがあれば十分だと思ってます。『反社会学講座』では「学問とお笑いの融合」、『研究報告』では「フィクションとノンフィクションの垣根をとっぱらう」という方針で書き進めました。今回は前2冊をふまえ、「世の中を正しくするのでなく、おもしろくする」をおおざっぱなテーマとしております。『つっこみ力』はその意味で、『反社会学講座』から始まる3部作の集大成といっても過言ではありません。
今回もうひとつ加えるなら、「学問はもうそろそろ人間に帰れ」ってことでしょうか。学者や評論家のみなさんは認めたくないでしょうけど、たぶんもう、論理の正しさを啓蒙し、教養を広めることで社会や人間のありかたを正すという、お勉強秀才が好む方法論は、限界に近づいてるんじゃないですか。かといって、論理か情かの二者択一ってのも、極端でいただけない。その落としどころが「おもしろさ」なんです。これからの時代は、正しいだけじゃダメなんです。おもしろくなければね。
とにかく、頭から尾っぽまで、うがった見方で趣向をこらしてなんでも茶化す、江戸の戯作者精神を貫いて、でも、人の心も決して忘れぬ、そんなぜいたくな本でございます。愛と勇気とお笑いと。『つっこみ力』をどうぞひとつ、よろしくお願いいたします。
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