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http://www.nishinippon.co.jp/nnp/world/20071130/20071130_001.shtml
北京五輪前再開発で強制排除 夫妻 抗議の自殺図る 直前、本紙記者へSOS
【北京29日傍示文昭】北京市豊台区のマンション建設現場で、立ち退きを拒否していた殷永利さん(53)、芦桂敏さん(50)夫婦の自宅が29日、地元政府当局と建設業者により強制撤去され、殷さん夫婦は農薬を飲んで自殺を図った。2人は救急車で病院に運ばれ、芦さんは回復したが、殷さんは意識不明の重体となった。農薬を飲む前、記者に電話してきた殷さんは「農薬を振りかざして抗議している」と話しており、当局側が“威嚇”を無視して殷さん夫婦を排除しようとしたことから、服毒自殺へとエスカレートしたとみられる。
■「外国メディアだけが頼り…」
「建設業者が強制撤去に来た」。芦さんから電話が入ったのは、29日午前8時半(日本時間同9時半)すぎだった。
今年7月13日、建設業者に周囲の土地を掘り下げられ、「島」のように浮いた状態の自宅を訪ねた。電気や水道は止められ、夜中の襲撃などの嫌がらせも続いていた。夫婦は「ここであきらめたら理不尽で卑劣な暴力に屈したことになる」と怒りをぶちまけ、こう付け加えた。
「政府や警察はあてにならない。あんたたち外国メディアだけが頼りだ」。芦さんからの電話は、まさに“SOS”だった。
その後、殷さんから2度にわたり経過を報告する電話が入り、「屋上に上がり『近づいたら農薬を飲む』と脅して業者と対峙(たいじ)している」と話したのは午前9時25分。その直後に殷さんは農薬を飲んだ。芦さんによると、業者が屋上に上がり、2人を力ずくで排除しようとしたことへの抗議のためだったという。
記者が現場に到着したのは、2人がすでに救急車で病院に運ばれた後だった。周辺には警察官がロープを張り、自宅に近づくことができない。近くのマンションの屋上から見ると、現場では何事もなかったかのように、重機がうなりを上げて自宅を粉々に壊していた。
「当局がここまでやるとは思わなかった。夫が回復したら、一緒に中南海(共産党幹部が居住する一帯)に抗議に行きたい」。芦さんは病院で気丈にこう話したが、殷さんは集中治療室での治療が続いていた。
来年8月の五輪開催を前に、急ピッチで住宅地の再開発が進む北京市。立ち退きを拒否する住民にも数多く会ったが、彼らの主張は単なる「ごね得」だけではない。果たして、今回の強制撤去、強制排除は合法だったのか。殷さんの悲劇は今後の教訓となるのか。北京市当局の担当者は「答えられない」「分からない」と繰り返すばかりだった。
=2007/11/30付 西日本新聞朝刊=
2007年11月30日00時10分