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告発された“不法ロビー活動” 浮上したサムスンの疑惑
背後で暗躍?旧与党、司祭団 李明博失墜が狙いか
韓国サムスングループに疑惑の目が向けられている。「サムスンは多額の不正資金を管理しながら、政官界に大規模なわいろ攻勢をかけていた」と言われているのだ。サムスングループによる不法ロビー活動疑惑。韓国最大の財閥であるだけに、韓国社会に波紋を広げている。事実無根とするサムスン側。真相をめぐる攻防はヒートアップするばかりだ。不況下の韓国でほぼ「1人勝ち」のサムスン。世間の風当たりは強い。これまでも政権や市民団体から何かと非難の的にされたが、今回の疑惑に対する韓国内の反応は、これまで以上に大きい。“サムスン共和国”と称されるほど強い影響力をもつ財閥と、政官界との“癒着構造”が浮き彫りになりそうだ。今回の疑惑事件はまた、大統領選を控える政界に影響が出そうだ。旧与党陣営は、事件を「反不正腐敗キャンペーン」につなげようとしている。優勢の保守系候補、李明博氏と李会昌氏にはそれぞれ“不正”疑惑がもたれている。
(ソウル・李民皓、東京・崔世一)
サムスン本社前にはサムスン特別検事法案を支持する市民団体が集結した
「サムスン疑惑」を告発したのは、サムスングループで法律顧問団の責任者であった金勇K弁護士(49)。「良心の告白」として先月末と今月初め二度、記者会見を開いた。
「自分の口座にだけで50億ウォンを超えるサムスンの裏金があった」「サムスンからわいろを受け取っていた検事のリストを持っている」「李健煕会長の息子、在鎔専務の不法蓄財に対する資料を持っている」などと発言した。
サムスン側は金弁護士の主張が「良心の告白」ではなく「私的な感情によるもの」と反論した。
金弁護士はサムスングループで、97年から04年まで法律顧問団のチーム長をつとめた。重役待遇で7年間に総額約100億ウォン(約13億円)の報酬を得ていた。退職後も顧問料として毎月2200万ウォン(約300万円)を受け取っていたという。
サムスン側は、金弁護士が顧問契約が切れたことに腹を立て、「今回の騒動を起こした」と主張している。
当初、事件の真偽を確かめるのは困難に思えた。事実なら驚天動地の事件になるにもかかわらず、韓国社会の反応は意外と静かだった。新聞はといえば、社会面で小さく扱うだけだった。それに、金弁護士から名指しで批判された青瓦台も何ら反応を示さなかった。世間の非難に敏感な青瓦台であるだけに、奇妙というほかなかった。
検察もしかりだ。金弁護士から「(サムスンから)特別な手当(わいろ)受け取っていた検事がいる」と指摘されたにもかかわらず、「リストが公開されない限り捜査には踏み込めない」と静観した。
だが、金弁護士がサムスンからわいろを受け取っていた検事として、今月就任予定の林采珍検察総長と李貴男中央捜査部長の名を挙げると、状況は変わった。
市民は金弁護士の言葉に耳を傾けるようになった。「サムスンのために検察と青瓦台、国家情報院、マスコミは動いている」
各政党は、特別検事法案を国会に提出(青瓦台は法案提出の再検討を促している)。検察には疑惑事件の捜査本部が設置された。マスコミも騒ぎ始めた。
これまで各界の反応が鈍かったのは、「(各界に)“サムスン奨学生”(サムスンから定期的にカネをもらっている人)が多いからではないか」という指摘も出ている。
検察への不信は広がる一方だ。次期検事総長の任命に反対する声も噴出。国会では捜査の特別組織を設ける法案が成立する公算は高い。
今回の事件は、財閥と政官界との“癒着構造”を浮き彫りにするきっかけとなるのか。
事件の裏に気がかりな問題が存在すると指摘する識者たちもいる。金弁護士の背後には意外な勢力が存在するというのだ。02年に反米キャンドル集会を主導した宗教団体「天主教正義具現司祭団」だ。
金弁護士は、なぜこの時期に告発をしたのか。「タイミングの問題」と、告発者の金弁護士を保護しているカトリック団体「正義具現司祭団の純粋性」にも疑惑の目は向けられている。
今回の事件は、李会昌候補の出馬に合わせるように出てきた。出馬宣言が行われると、李会昌候補の支持率は旧与党勢力候補を追い越し、全候補中2位に急浮上した。
親北・反米を煽ってきた司祭団は何らかの行動を起こす必要があったのかもしれない。
司祭団の咸世雄神父は、02年の大統領選で、キャンドル集会を開くなどして盧武鉉当選に大きく寄与した。今でも旧与党勢力候補たちとの関わりは深いと見られる。
「サムスン疑惑」が表面化して後、鄭東泳・大統合民主新党候補、権永吉・民主労働党候補、文国現・創造韓国党候補の3人の旧与党勢力候補は、待っていたかのように、サムスン特検法案を共同で発議することを決めた。よく練られた脚本のようだ。
旧与党系の候補は、大統領選挙の争点を「腐敗」に持っていくつもりなのだろう。不正ロビー疑惑の渦中にいる李明博候補と、2002年の大統領選資金の不透明な処理が報じられていた李会昌候補を、十把一絡げにしようという狙いだ。
サムスン 不況と無縁 最大の財閥
◆「サムスン共和国」
サムスングループは“サムスン共和国”と呼ばれるほど、韓国の政治、経済に絶大な影響力を持っている。
同グループの年間売上高は、韓国国防予算の4倍を上回る(140兆ウォン)。純利益は、日本のソニーを超えている。数十万人の社員を抱えていながらも、「労組活動がない」韓国唯一の財閥だ。
サムスンと並ぶ韓国系財閥の現代は、毎春労組との戦いに頭を悩ましている。
「政府もできないことをサムスンはやる」「サムスンに就職すること自体が出世なのだ」。言われるような言葉からも、“サムスン共和国”という言葉にリアリティを感じさせる。
90年代末、韓国経済が最悪の経済状況に落ち込んだ「IMF危機」の際も、サムスンは半導体と携帯電話といった精密機械部門の好調で、不況もどこ吹く風の体だった。
倒産してしまった3大財閥の1つ「大宇」や、7大財閥の「起亜自動車」、資金難で本社社屋を売却した現代と比べれば、サムスンの存在は際だっている。
ハンナラ党 「疑惑は青瓦台に」
「特別検事法案」国会に提出
ハンナラ党は15日、「サムスン疑惑」と関連し、捜査対象を盧武鉉大統領の選挙資金まで広げた特別検事法案を国会に提出した。
疑惑事件を「反不正腐敗キャンペーン」につなげようとする旧与党系候補の法案に対抗しようとする動きだ。
「サムスンの不法ロビー活動が事実であれば、ほとんどが現政権に対して行われたはず」
ハンナラ党の朴亨ジュンスポークスマンは、青瓦台に疑いの目を向けた。さらに、盧大統領が02年当選の際、サムスンから「当選祝い金」を受け取った可能性を指摘している。
青瓦台は根拠がない政治攻勢だとして反発している。
「当選祝い金なんて、ハンナラ党が書いた小説だ」(千皓宣・青瓦台スポークスマン)
旧与党系もハンナラ党の法案を批判しているため、現時点でハンナラ党の特別検事法案が可決される可能性は低いとみられる。
だが、何らかの証言や証拠が出れば、「反不正腐敗キャンペーン」を展開する旧与党系も可決に票を入れざるを得なくなり、大きな波紋を呼ぶことになりそうだ。
法案が可決されれば、盧大統領は退任後、取り調べを受けることになる。
「民主化運動」のリーダーが政治フィクサーに
政治的色彩を強くする宗教人たち サムスンと利害対立明白に
サムスン疑惑で記者会見する司祭団に群がる韓国のマスコミ
司祭団は軍事政権の終息に功を挙げたという評価を受けてきた。
NGOの設立は80年代の韓国では非合法化された。そんな中で、カトリックの神父で構成された司祭団の果たした役割は大きかったといえる。宗教施設には公権力が及ばないという不文律があったし、宗教人は誠実だとする社会の信頼と、保護があった。「真理に生き真理に死ぬ」という司祭団の声が、87年6月の「民主化運動」の火種になったのは事実だ。
90年代に入ると、NGOの設立は合法化された。司祭団の政治的面における役割は終わったかのように見えた。
だが、政権に対して物の言える時代になって司祭団は、政治に対してフィクサー的な立ち回りをするようになった。もはや、宗教団体というより、一定の政治目的を有した「理念団体」と見られるようになった。
たとえば、国家保安法廃止運動と韓総連合法化運動、在韓米軍撤収キャンペーンなどの動きだ。
司祭団は2000年の金正日―金大中による「6・15宣言」を、「朝鮮半島に平和をもたらす最善の現実的方案である」と、支持声明を出している。
大統領選挙が近づくたびに韓国政界とその周辺には、プロテスタントの牧師とカトリックの神父の存在がクローズアップされる。
カネや権力とはまったく無縁に見える宗教人の政治的暗躍と、ずば抜けた資金力で政治への影響力を駆使するサムスン。「サムスン疑惑」は、この2つのパワーが火花を散らしたことによるものなのか。ともあれ、疑惑事件は、各界各層の利害関係が深く絡み合っているのはたしかだ。
http://www.onekoreanews.net/news-tokusyu01.cfm