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<11月22日>(木)
〇今年の日中対話でもっとも感じるのは、「中国側の変化の早さ」です。10%成長を続けている国だけあって、経済もさることながら、政治の変化もとにかく早い。連日のように会議を繰り返していて、「歴史認識」が出たのが1回だけ、「靖国参拝」はゼロ。前回訪中時の2005年には、日中関係は「とにかく意地でも動かない」という感じだったのですが、そんな固定観念を持っていると、どんどん裏切られてしまいます。なにしろ日本側は経済成長率も低いし、意識の変化も遅いものですから。
〇おそらく近いうちに、中国は「日本の国連常任理事国入りを支持する」と言い出すんじゃないかと思います。もちろん、見返りにはいっぱい条件を提示するでしょうけれども。日本側としては、そのときに慌てないように、心の準備をしておくべきでしょうね。この上海では、わずか2年前に「入常阻止」で反日デモが起きたわけですが、それが対日外交カードに化けてしまうかもしれない。同様に、「日本は集団的自衛権を認めることにしました」と言っても、「ふーん、それで?」と肩透かしをくらうかもしれません。
〇中国側に立って考えてみれば、日本が日米同盟を強化しようが、集団的自衛権を認めようが、それは現状追認に近いことなので、新たなコストが生じるわけではない。「入常」だって、実現可能性は限りなくゼロに近いのだから、「言うだけはタダ」と割り切ってしまえば、カードとして効果的に使える可能性がある。最近の日中関係では、「戦略的互恵」とか「Win-Win関係」といった言葉がよく使われますが、言葉の裏側にはこの手の「割り切りの早さ」と「したたかさ」があるのではないかと思います。日中関係が改善に向かうのは結構なことですが、相手のペースに合わせるのはなかなか大変ですぞ。
〇台湾問題についても、中国側は思い切り譲歩しているのですね。少なくとも、当人たちはそう思っている。胡錦濤総書記は、党大会の活動報告で「台湾海峡の平和協議」を打ち出した。もう「統一」とは言わない。「ひとつの中国」の枠内なら、ナンボでも話はする用意がある。善意と柔軟さをアピールしているのだが、台湾の国内政治情勢を考えれば、これが最善の選択となる。(もちろんその裏側では、中国は台湾が外交的に孤立するような仕掛けを忘れていない)
〇なんといっても、国民党が「統一」を言わなくなったことが大きい。そのことによって、民進党は「唯一の台湾独立派」という「セールスポイント」を失いつつある。そして馬英九は、優柔不断で「統一」を言い出すようなタマではない。「ライトグリーン」の台湾有権者にとっては、そのことが馬英九の「セールスポイント」になりうるのだ。こんな風に、「誰が台湾を代表するか」という競争をやっているうちに、「誰がひとつの中国を代表するか」はどうでも良くなってしまった。かくして「ひとつの中国」というフィクションは効力を失いつつある。
〇そうなると、中国側にできることは少ない。せいぜいアメリカ経由で圧力をかけてもらうことぐらいだ。日本にもお願いに来るだろう。が、アメリカが言おうが日本が言おうが、公民投票の成立を止める手段はない。そして中国が盛んに口にする「武力行使」は、所詮はブラフにならざるを得ない。ここだけは、中国が本当に困っていることなんじゃないかと思う。
〇日中対話は明日も続きます。
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