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韓国の公職選挙法におけるインターネット関連規定1
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投稿者 kaname 日時 2007 年 11 月 04 日 07:02:49: 3X28X40b0xN.U
 

(回答先: 【韓国大統領選】今回のインターネット選挙運動は“微風”に止まる 投稿者 kaname 日時 2007 年 11 月 04 日 06:54:27)

韓国の公職選挙法におけるインターネット関連規定

はじめに
T 公職選挙法の概要
U 選挙における IT利用の経緯
V 現行法におけるインターネット関連規定
おわりに
翻訳:公職選挙法(抄)

はじめに


“World’―

s first internet president logs on”
「世界初のインターネット大統領がログオンす
る」―英国の代表的な新聞であるガーディアン
(The Guardian)が、2003年 2月24日、盧武
鉉大統領の就任前日に掲載した記事のタイトル

(注1)

である。「IT大国」を自認する韓国では、早い
時期から選挙運動にインターネットが用いられ
てきた。盧武鉉大統領の就任は、インターネッ
トの力なしには有り得なかったと評する者も多

(注2)

い。
 我が国においては、インターネットによる選
挙運動は、現行法上、選挙運動期間以外は公職
選挙法第129条により禁止され、選挙運動期間中
は、公職選挙法第142条、第143条により法定外

(注3)

の文書図画に該当するとして禁止されている。
このため、インターネットやブログを利用した
選挙運動の許容を求める改正論議が始まって久
しい。
 本稿では、こうした論議に資するため、韓国
の公職選挙法が、インターネットその他の ITを
利用した選挙運動についてどのような経緯を経
て現在の規定に至ったのか、そして現在どのよ
うに規定されているのかを報告する。

白井 京

T 公職選挙法の概要
 韓国において現在施行されている公職選挙法
は、1994年、いわゆる統合選挙法として制定さ

(注4)

れたものである。
 同法は、それまで個別の法律として施行され
ていた大統領選挙法、国会議員選挙法、地方議
会議員選挙法、地方自治体首長選挙法を一つに
統合し、全ての選挙に適用することで、選挙管
理に一貫性をもたせることを意図し、制定され
たものである。全17章278か条及び附則からな
る膨大な法律であり、「選

「選挙権及び被選挙権」
挙区及び議員定数」「選挙期間及び選挙日」「選
挙人名簿」「候補者」「選挙運動」「選挙費用」「投
票」「開票」「選挙に関する争訟」等の章から成
る。
 1994年の制定後、現在にいたるまで、大小様々
な規模の改正が頻繁に繰り返され、選挙の前に
は必ずといっていいほど改正されてきた。2005
年の最新の改正では、2006年の地方選挙を前に、
地方議会議員選挙における比例代表制の導入、
選挙権年齢の19歳への引き下げ、永住外国人に

(注5)

対する地方参政権付与等の改正が行われた。ま
た、これまで「公職選挙及び選挙不正防止法」
であった法律のタイトルを、簡潔に「公職選挙

(注6)

法」と改めた。
 かつて、韓国における選挙運動といえば、大
衆動員と金権選挙が定番であった。特に何万人
もの聴衆を集めて大規模な集会が行われ、動員
された人々には金の入った封筒が公然と手渡さ
れていたという。
 しかし、この公職選挙法の制定と十数回に及
ぶ改正は、演説会の場所や拡声器の使用を制限
して大規模集会を事実上不可能にし、小規模集

114外国の立法 227(2006.2)


会も制限していった。このため、統合選挙法の
制定後、選挙文化は徐々に変化し、マスメディ
アがその中心を担うようになってきているとい

(注7)

われる。

U 選挙における
IT利用の経緯
 韓国において ITを用いた選挙運動に関する
報道が初めて見られるのは、1994年 8月である。
当時、国会議員補欠選挙において、無所属のハ
ン・ジョムス候補者が、代表的なパソコン通信
(以下「PC通信」とする。)のポータルサイト
であった「チョリアン」において「ハン・ジョ
ムス候補と共に」というタイトルのメニューを

(注8)

開設したと報道されている。
 その後 PC通信を通じた選挙運動は、1995年
の統合地方選挙において、選挙運動の新しい方
法として話題となった。
 その当時の報道をみると、PC通信を利用し
た選挙運動は、特に政治に関心の低い若い世代
を中心とする多くの有権者に同時にアクセスす
ることができ、また、候補者と有権者が直接対
話できる「遠隔民主主義(teledemocracy)」と
いう新しい政治活動の形になりうるとして、肯

(注9)

定的な評価を受けている。加えて、当時一般国
民にも知られ始めていたインターネットについ
て簡単な紹介がなされ、「単純な文字情報だけで
なく写真や動画像も見せることができる」ため、
「選挙文化の根幹を揺るがしうるもの」と評価

(注10)

されている。
 翌年1996年10月、日本においては、旧自治省
がインターネットの選挙運動利用の可否を問う
新党さきがけ(当時)の質疑に対し、「不特定
多数を相手にする選挙運動を目的にホームペー
ジを開設する行為自体が公職選挙法に抵触する」

(注11)

と有権解釈し、話題となった。その後、現在に
いたるまで、我が国においてはインターネット
を利用した選挙運動は一貫して禁止されている。
 この間、韓国の公職選挙法では PC通信やイ

韓国の公職選挙法におけるインターネット関連規定

ンターネットについてどのように規定し、どの
ように解釈してきたのだろうか。
 1994年の制定当時、公職選挙法第109条は、

「電
気及び通信の方法により選挙運動を行うことは
できない」という規定をおきつつも、「自筆の書
信、個人用コンピューター又は電話による場合
はその限りではない」という但し書きを付して
いた。また、選挙に関する事務を担う中央選挙

(注12)

管理委員会は、1995年の段階で「PC通信を利用
した選挙運動は可能である」という有権解釈を

(注13)

出している。
 しかし、1996年 4月に行われた第15代国会議
員総選挙の過程において、PC通信やインター
ネットと選挙との関係に対する楽観的な見方に
は、疑念が呈されるようになった。個人用コン
ピューター(以下「PC」とする。)の爆発的な
普及により、通信網に掲載された文章の内容が
選挙法に抵触するかどうか捜査機関が適切な監
視をすることが難しく、証拠の確保に難がある

(注14)

との指摘がなされるようになったのである。
 これを受け、直後に大統領選挙を控えた1997
年10月に、PC通信を利用した選挙運動について
明確に規定すべく、法改正がなされた。公職選
挙法の規定に、(第

「PC通信を利用した選挙運動
82条の 3)」が新設されたのである。その概要は
以下のとおりである。

・選挙運動期間中、PCを利用し、PC通信の掲
示板又は資料室等の情報貯蔵装置において、
選挙運動のための内容の情報を掲示すること
ができる。また、PC通信を利用し、対話房
(チャットルーム)や討論室を通じた選挙運
動を行うことができる。
・PC通信を利用した、候補者やその親族に関す
る虚偽事実の流布を禁止する。これに違反し
たときは、第250条及び第251条に従い処罰す
(注15)

る。なお、こうした事実があった場合、誰で
あれ選挙管理委員会に通報することができる。
外国の立法 227(2006.2) 115


・選管は、上記違反を確認したときは、電気通
信事業者に該当内容の取扱いを拒否、停止又
は制限するよう要請できる。事業者は、即時
これを履行することが義務付けられる。
・事業者及び運営者は、拒否、停止又は制限の
要請を受けた日から 3日以内に異議を申し立
てることができる。
 すなわち、選挙運動期間中、PC通信を利用し
た選挙運動が可能である点を法律上明記するが、
候補者に対する誹謗・中傷については、通信事
業者を通じて規制することができるというのが、
その要旨である。
 これを受けて与野党は、1998年の地方選挙で
は PC通信やインターネットを「第二の戦場」
とし、候補者のプロフィール、公約、漫画によ
る広報等を掲載するなど、大きく力を入れるよ
うになった。とはいえ、この時点では、選挙自
体に及ぼす影響力は、それほど大きいとはいえ

(注16)

なかった。
 しかしその間、国家的に超高速通信網の構築
を推し進めた韓国では、インターネットが急速
に普及した。上記の1997年改正は、当時主流で
あった PC通信を用いた選挙運動については明
確に規定したものの、インターネットについて
は言及していない。そのため、2000年 4月の第
16代国会議員総選挙では、インターネットを通
じた選挙運動について解釈の混乱がみられるよ
うになった。インターネットの爆発的普及とい
う現実に、法律が追いつかない状態になったの
である。
 中央選挙管理委員会は、政党や立候補者が単
にホームページを作成するのは問題ないが、バ
ナー広告や他のホームページへのリンク等は、
広告禁止を規定する第93条が適用されるため不

(注17)

法の可能性があるとの有権解釈を発表した。し
かし、インターネットによる選挙運動は規制の
裏をかいて爆発的に広がり、2000年の第16代国

会議員総選挙は、インターネットによる選挙運
動と選挙管理委員会の規制の「いたちごっこ」
の状態となった。中央選挙管理委員会によれば、
1996年第15代国会議員総選挙時に比して 6倍も
のインターネット関連の選挙違反行為が取締り

(注18)

の対象となっている。
 一方、2000年の公職選挙法改正により、中央
選挙管理委員会の公式ホームページ上で新しい
試みが始まった。有権者が候補者に対する正確
な情報をもとに候補者を選択することができる
ように、候補者の財産、経歴、納税情報、前科、
自身もしくは子どもが兵役義務を履行している
かどうか等の情報について、インターネットを
通じて公開し、誰でも確認することができるよ

(注19)

うにしたのである。こうした情報の公開には、
候補者のプライバシーの侵害との批判もあった
が、これまでのように地縁や学閥等を根拠とす
るのではなく、履歴や人柄等、多様な情報を得
た上で自ら判断し投票するという新しい選挙文
化の礎石になったとする肯定的な評価が優勢で

(注20)

あった。
 こうした候補者の個人情報公開は、この年の
選挙運動において最も話題となった2000年総選
挙市民連帯(総選市民連帯)による「落選運動」
にも影響を与えた。同団体はこれらの情報等を
もとに「不適格候補者」のリストを発表するな
ど積極的な落選運動を行ったのである。同団体
のインターネット掲示板は総選挙を前に訪問者
が90万名を超え、選挙結果に大きな影響を与え

(注21)

たことは、我が国でも強い関心を呼んだ。こう
した事態について、韓国マスコミは「インター

(注22)

ネットを通じた選挙文化革命」と報じた。
 2002年の大統領選挙では、選挙とインター
ネットの関係はさらに進化した。2001年の段階
から、「1997年大統領選挙が TV討論に左右され
たメディア選挙であったとすれば、来年はイン

(注23)

ターネット選挙になる」と展望されていたが、
まさにそのとおりの展開になったのである。

116外国の立法 227(2006.2)


この選挙では「ノサモ」(「盧武鉉を愛する人々
の集い」を意味する韓国語の省略形)など、特
定政治家の自発的ファンサイトの活動が脚光を
浴びた。盧武鉉大統領の当選は「ノサモ」と20〜30代の有権者によるインターネットを通じた
支援がなければありえなかったと評される。
もっとも、公職選挙法により政党以外の選挙活
動は禁じられているため、「ノサモ」のホーム
ページは閉鎖され、当時、盧武鉉候補の所属政

(注24)

党であった民主党のホームページに統合された。
 また、2002年の大統領選挙を通じて台頭した
のが、いわゆる「インターネット言論」である。
インターネット言論とは、政治経済等の時事問
題に関する報道や論評を、インターネットを通
じて提供するインターネット新聞や政治ポータ
ルサイト等をいう。我が国でも知られる「オー
マイニュース」等のインターネット新聞は、既
存の保守的な新聞・放送等と並ぶもう一つの選
択肢として、若い有権者の圧倒的な支持を得て
いる。
 しかし、選挙法は、候補者の対談や討論につ
いては定期刊行物法に登録されたマスコミと放
送法上許可された報道機関のみとしていた。そ
のため、インターネット新聞における候補者の
インタビュー等は不正選挙活動として規制の対
象となった。例えば、予備選挙における支持を
訴えるために盧武鉉候補(当時)らが「オーマ
イニュース」のインターネット生放送を通じた
対談に出演しようとしたところ、中央選挙管理
委員会の職員らに阻止されたという事件がある。
選挙管理委員会側は、「インターネットサイトは
選挙法上定められておらず、対談は事前選挙活
動となるため違法である」との解釈を示した。
盧武鉉氏側はこれに対し、選挙管理委員会が恣

(注25)

意的に有権解釈をしていると反発した。
 このような事例が頻発し、選挙法がインター
ネット時代に合わないといった批判の声を受け
て、選挙管理委員会からも改正を推進する提言

韓国の公職選挙法におけるインターネット関連規定

が出されるようになった。与野党は協議の末、
2004年にインターネットによる選挙運動規定を

(注26)

含む公職選挙法改正案を可決するに至った。
 この改正では、韓国の選挙文化における一大
転換が図られたといわれる。すなわち、「既存の
選挙運動にインターネットを取り入れる」ので
はなく、「インターネット等のメディアを利用し
た選挙運動を主流にする」ための法改正が行わ
れたのである。2005年には、さらにこれを補強
する方向で改正が行われた。

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