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2007年7月27日発行
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JMM [Japan Mail Media] No.437 Friday Edition
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■ 『Younghee Ahn の韓国レポート』 第２１３回
「拉致された韓国人」
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■ 『Younghee Ahn の韓国レポート』 第２１３回
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「拉致された韓国人」
今、韓国のトップニュースは、タリバーンに拉致された韓国人たちに関するもので
ある。韓国からボランティア目的でアフガニスタンへ行った民間人たちがタリバーン
に拉致されてすでに一週間がたとうとしている。拉致された２３人は韓国のある教会
所属の信者たちでほとんどが２０代から３０代だという。医療奉仕目的で行ったとは
いうが、教会所属なので布教目的も否めない。その教会は数年前にアフガンに医療院
と幼稚園をたて、毎年韓国から奉仕団を送っている。そして、２６日にはそのうちの
男性（牧師）が射殺されたという。
このニュースに対し、韓国民は、一刻も早く拉致された人たちが無事韓国に戻れる
ことを願っている。だが、一方では、拉致された人たちに対する猛烈な非難もある。
２年前、キム・ソンイルという人がイラクで反政府武装勢力に拉致された。彼は、
イラクが危ない地域と知りながら、学費を稼ぐために残り、拉致された。タリバーン
は韓国政府にアフガンからの軍の撤収という要求をしたが、聞き入られず、彼は斬首
という形で殺された。このときも、当初は今回と同じように韓国民は二通りの意見に
分かれた。危険な地域に自らの意志ではあるが学費を稼ぐために行ったことについ
て、同情する人たち。また、危険を承知で行ったのだから、それを政府が危険を冒し
てまで反政府武装勢力のいいなりになってはいけないという意見。
無残に殺される場面がテレビやネットで流れた後、彼に同情する人が増えた。お金
のためとはいえ、その理由は学費を稼ぐことで、結局は反政府武装勢力の残酷な仕打
ちにおびえながら死んでいった彼に対する同情である。今も彼を追悼するサイトが残
っている。
だが、今回の事件に関しては、国民の意見は非難めいた人たちの意見が目立つ。そ
れは、これまでマスコミで報道された内容以外にネットで出回っているデマまたは真
実のせいであるようだ。
まず、韓国政府はアフガニスタンを２００４年から「旅行制限国」に定め、その地
域を旅行する人たちには自制してくれるよう公文書を発行している。彼らはそれを無
視した。そこで、政府は一度彼らのチケットをキャンセルしたところ、「信仰の自
由」を掲げ政府を告訴しようとした。さらに、仁川（インチョン）国際空港には、今
年の二月からインチョン空港テロ保安対策協議会議長の名でアフガン旅行を自制する
ように促す案内文が出ているが、その前で奉仕団の一部の人がＶサインで記念撮影を
している。彼らは、まさかと思って撮ったに違いないが、まさに警告どおりの展開に
なってしまった。
また、彼らのブログにはイスラム教の聖地で、賛美歌を歌ったことや、イスラム教
の聖人の墓の前でワーシップ（Worship：礼拝の形の踊り）を行ったことが載ってい
る。すでにブログはネットに出回っている。
もう一つ彼らが非難されるわけは、これまでキリスト教団が行ってきた非キリスト
教に対する非難の裏返しとして、非キリスト教徒たちの反感。キリスト教の中でも宣
教を他の教派との競争のための道具にしていることなど。韓国のキリスト教内部の問
題が浮き彫りになっているからである。
現在、ソマリアでは韓国人の船員たちが海賊によって拉致され、すでに７０日間も
抑留されている。これに対する政府の動きはあまり見られない。これもやはり勢力の
あるキリスト教に対するひいきだと見る向きも多い。
韓国の外交通商省は、現地の危険度によって「旅行留意国」→ 「旅行自制国」→
「旅行制限国」→「旅行禁止国」と四段階に分けている。今回の事件を受けて、２１
日には危険度によって、海外旅行を規制することができる旅券法施行令改正案が出さ
れた。これによると、アフガンを「旅行制限国」から「旅行禁止国」に指定した。こ
れによって、韓国の旅行禁止国は、イラク、ソマリア、アフガンの三カ国となった。
旅行禁止国を訪問した場合、一年以下の懲役または３００万ウォン以下の罰金とな
る。遅まきではあるが、危険地域を旅行しようとする人たちに強力な姿勢を示した。
最初に書いたとおり、拉致された人がこれ以上の犠牲なく、無事に生還することを
祈る。だが、彼らは戻ってくるなり、国民の非難を甘受しなければならないだろう。
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Younghee Ahn（アン・ヨンヒ）
韓国生まれの韓国人。小学４年から高校１年まで、大阪在住。韓国外国語大学同時通
訳大学院日本語修士課程卒業。同時通訳からスタートして、現在は会議通訳、及び、
韓国梨花女子大で、日本語の講師も務める。著書に『シナブロ（知らぬ間に少しずつ
）』（小学館）<http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4093860971/jmm05-22>
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JMM [Japan Mail Media] No.437 Friday Edition
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【発行】 有限会社 村上龍事務所
【編集】 村上龍
【発行部数】128,653部
【WEB】 <http://ryumurakami.jmm.co.jp/>
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