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カンボジアの空に響く歌声〜古代遺跡に魅せられた早大生の記録（４）遺跡の子供たち
2007/07/02
広場に集まる子供たち 車で遺跡の入り口にある広場に乗り付けると、多くの子供たちが手を振り、私を迎えてくれる。
「チョムリアップ・スオ(おはよう)！」
声をかけると、みな人懐っこい笑顔をみせる。
どの子も遺跡に近いサンボー村に住む。彼らは学校以外の時間は、日が沈むまでこの遺跡で過ごしている。４，５歳から１２，３歳ぐらいの子供たちが毎日集まる。
彼らを観察していると、とても面白い。一緒に遊んでいたかと思うと、喧嘩もはじまる。石や木の枝、捨てられたタイヤ、すべてのものが彼らの手にかかると、おもちゃに変わる。突然、「キャー」「ワー」というすごい声。見ると、大きい子も小さい子も一緒になっての追いかけっこが始まっていた。どの目もきらきらと輝いている。ここには日本ではあまり見られなくなった無邪気な子供たちの姿がある。
子供たちは伝統的なスカーフ“クロマー”を外国人に売ろうと一生懸命
私たちが現地スタッフのコンペアーに連れられて、遺跡の中に入っていくと、子供たちもついてきた。「マキ、マキ」と人懐っこく、私の名前を呼び、英語で話しかけてくる。「年はいくつ？」「家族は何人？」。一緒に手をつないだり、自転車に乗せてくれたり、遺跡を回るあいだ中、くっついて離れない。
彼らの手には"クロマー"と呼ばれる伝統的なスカーフが何枚も握られている。ときどき、それを私の前に押し出して「イチドル(１ドル)」と日本語で迫ってくる。私が首を横に振ると、今度は英語が跳ね返ってきた。「チップチップ・フォーユー（あなたにとっては安いでしょ）」。
遺跡をひと巡りして広場に戻る頃になってもクロマーを買ってもらえないと、みんな必死になってくる。なんとも悲しそうな顔をして「チップチップ・フォーユー」を繰り返す。まだ４,５歳の子まで、お兄さんお姉さんを真似して必死に私の体にクロマーを押し付ける。無邪気だった彼らに商売人としての顔を見る瞬間だ。この悲しそうな顔をみると、いつも心が痛む。
ホーちゃんは英語が上手なだけでなく、いろいろな国の言葉を知っている これこそ、彼らが遺跡で過ごすワケなのだ。この地を訪れる観光客にクロマーを売ることで一家の生活の足しを稼いでいる。大型バスにのって観光客がやってくると、子供たちは一斉に観光客を取り囲む。客が一つでもクロマーを買えば、「私のも」「私のも」と大勢の子供たちが群がり、収拾がつかない騒ぎになる。ここでは、こんな風景が毎日繰り返されている。
年々増え続ける観光客につれて、クロマー売りの子供たちの数も増加している。彼らの中には一日で10ドルほどを稼ぐ子もいるという。すごい大金である。今は学校に通っている彼らだが、このまま働くことが本業になって、学校に行かなくなりはしないか、とても心配だ。
遺跡の周りでは最近、ゴミが目立つようになってきている。ASCAのメンバーと一緒にゴミ拾いをして気づいたことがある。それは子供たちが普段遊んでいる場所にゴミが異常に多いことだ。一日中ここで過ごす彼らは、お菓子などを食べ、そのゴミをその場に捨ててしまう。ゴミの多くは子供たちが捨てたものなのだ。彼らにはゴミは汚くて嫌だ、ゴミを捨てるのはいけない、という意識がほとんどないようだ。
これからのサンボーの観光化問題を考える上で、この子供たちの存在は無視できないほど大きくなりつつある。私たちはASCAと一緒に子供たちに向けてのワークショップを開くことにした。テーマはゴミ問題。いかに子供たちをひきつけ、ゴミに対する意識を高めてもらえるか、腕の見せどころだ。次回は、ASCAが大活躍した、ゴミ・ワークショップの様子をお伝えしたい。（つづく）
子供たちは遺跡に入る私たちに“クロマー”を持ったままついてくる
(中澤麻紀)
ＪＡＮＪＡＮ
http://www.janjan.jp/world/0707/0707010154/1.php
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