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オウム爆弾娘ミャンマー潜伏か…現地緊急リポート
タイ国家警察局調べで浮上
地下鉄サリン事件で特別指名手配されているオウム真理教の「走る爆弾娘」菊地直子容疑者(35、写真右)ら3人が、タイ国境に近いミャンマー国内に潜伏している可能性が浮上してきた。タイ警察当局の調べで分かったもので、3人は麻薬取引に関与しているとされ、日本政府にも報告されているという。1995年3月の事件から12年。事件は新たな局面を迎えるのか。真相を探るため、現地に飛んだ。
「菊地容疑者のほか、やはり地下鉄サリン事件の高橋克也容疑者(49)と公証役場事務長逮捕監禁致死事件の平田信容疑者(42)が潜伏しているとみられるのはミャンマー領内でタイ国境に近いモンギョン周辺です。手配後、菊地容疑者らがタイに潜伏していたことはほぼ確実ですが、捜査の手から逃れるため、この周辺に移ったようです」
タイ国家警察局で、ただ1人の日本人警察官、戸島国雄大佐=同左=は夕刊フジ記者に証言してくれた。
戸島氏は警視庁鑑識課に所属し、三島由紀夫割腹事件(1945年)や連続企業爆破事件(48年)、そしてオウム真理教事件を担当。95年にタイ警察局科学捜査部にJICA専門家として派遣され、指導にあたってきたが、その実績が評価され、2002年から警察大佐として現場捜査にもあたっている。
戸島氏が潜伏情報を掴んだ経緯を明かす。
かつて菊地容疑者が潜伏していたというチェンライ市郊外の貸家
「タイ国内の捜査に従事してきましたが、時々、オウム逃亡犯に関する情報が入ってきていた。詳しくは話せませんが、こうした情報を一つ一つ確認。関係各方面とも連携して調査した結果、モンギョン潜伏の可能性が高いと判断した。この街は今や麻薬の最大の生産地とみられています。我々が菊地容疑者を追うのも、この麻薬取引に関与している可能性があるためです。だが、ミャンマー領内であるうえ、武装組織『ワ州連合軍』が支配している地域だけに捜査は難しい」
タイ、ミャンマー国境付近。中央に見えるのは武装組織の要塞の一つだという
『ワ州連合軍』は、ミャンマー東北部・シャン州に本拠地を置く少数民族ワ族による武装組織。かつてゴールデントライアングル一帯を支配していた麻薬王のクン・サが死亡後、徐々に利権を手に入れ、最大の麻薬生産集団に急成長した。その財力で、ロケット砲など強力な武器を購入するなど軍事力も大幅に増強し、約2万人の兵士がいるとされる。
ミャンマー軍事政権とも和平協定を締結しており、一部シャン州の実効支配を許されているが、麻薬取引ルートの拡大のため、タイ側にも越境。タイ国軍との間で死傷者が出る銃撃戦が度々起きている。
菊地容疑者らはタイ警察だけでなく、ミャンマー警察も手が出せない地域に逃げ込んでいる可能性があるわけだ。
記者も菊地容疑者らの写真を手に現地周辺で聞き込み取材を行った。その結果、複数の有力な目撃情報を得ることができた。
中には、わずか1年前の情報もあった。
菊地容疑者のタイ潜伏情報は、約10年前にも浮上した。96年2月、オウム真理教名古屋支部にいた元総会屋のO氏が不法滞在容疑で、タイ国内で逮捕。その際、O氏が「菊地容疑者らがタイ北部に潜伏している。数日前には菊地容疑者と会っていた」などと供述したからだ。
「当時、タイ警察の力の入れようは並々ならぬものがあった。逮捕の会見も警察庁長官自ら行ったほどで、菊地容疑者が潜伏していたとされるタイ北部チェンライ市郊外の貸家なども一斉捜索した。警察幹部も『オウム関係者がタイに潜伏しているのは間違いない』と語っていた」(タイ警察関係者)
あれから約10年、今回、新たにもたらされた菊地容疑者らのミャンマー潜伏証言。日本政府も、こうした情報を把握している。菊地容疑者に捜査の手は迫るのか。
★大家「滞在していた」
菊地容疑者らが潜伏している可能性が浮上したミャンマーのモンギョン周辺。武装組織が支配する地域だけに、記者ら外国人が訪れるのは極めて難しい地域だった。そこで記者は隣接するタイ・チェンライ県を訪れた。かつて菊地容疑者が潜伏していたアジトがあったとされ、数々の目撃情報がタイ警察に寄せられているためだ。
菊地容疑者が潜伏していたという貸家を訪れると、女性の大家は「滞在していたのは間違いない。期間は1カ月ぐらいだった」と証言する。
さらに、ジープでミャンマー国境を目指し、徒歩で山道を登って、国境付近に向かった。国境は目と鼻の先だ。
しかし、タイ国境警備隊に、「これ以上先に行くと、武装勢力がいる。極めて危険な地域で、立ち入りは禁止だ」と行く手を阻まれる。仕方なく、警備隊の1人に3人の手配写真を見せると、「この真ん中のヤツは、数年前、この付近で見たことがある。間違いない。こいつは誰なんだ」と、驚くべき証言がもたらされた。警備隊が指摘したのは、高橋容疑者だった。
モンギョンを仕事で訪れているタイ人建設業者に話を聞くと、「1年前、菊地容疑者に似た女は見ている。ただ、今よりもふっくらしている」と明かしてくれた。
取材をすればするほど、3人に関する情報が集まってきた。
■きくち・なおこ 地下鉄サリン事件のサリン製造や都庁爆弾テロに関与した疑いがある。92年東京国際女子マラソン(途中棄権)などにオウム真理教陸上部として出場したため、「走る爆弾娘」の異名を持つ。
■たかはし・かつや オウム真理教・諜報省のメンバーで、地下鉄サリン事件では日比谷線中目黒発を担当。運転・見張り役を務めた。目黒公証人役場事務長拉致監禁致死事件、東京都庁小包爆弾事件にも関与している。
■ひらた・まこと 2005年2月、オウム真理教を脱退しようとした女性の兄を拉致し、監禁の末に死亡させた公証役場事務長逮捕監禁致死事件など。麻原彰晃(松本智津夫)死刑囚の身辺警護などの経験がある。
ZAKZAK 2007/06/29
http://www.zakzak.co.jp/top/2007_06/t2007062918.html