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【新世界事情】責任問われて政治家は?【中日新聞】
2007年6月20日
「なんとか還元水」とか弁明していた政治家が突然、自ら命を絶った。政治家は国民の代表であり、民主国家では、説明責任と結果責任を問われるのが常だ。世界の政治家はどう責任を取っているのか。そこには日本同様、権謀術数が渦巻き、謝罪や辞任だけでなく、居直り、そして死があった。
『裸の王様』で選挙 ネパール
二百三十年以上にわたって、政治の安定に資してきたネパール王室が存亡の危機に立っている。ギャネンドラ国王(59)の専横が原因だが、根底には六年前の王宮乱射事件に絡む疑惑がある。
二〇〇一年六月、カトマンズの王宮で何者かが機関銃を乱射。ビレンドラ国王夫妻やディペンドラ皇太子ら十人が死亡し、国王の実弟のギャネンドラ王子(当時)が新国王に就いた。
政府の捜査は「ディペンドラ皇太子が乱射後に自殺」「暴発だった」など二転三転。その場にいなかったギャネンドラ国王と、ただ一人無傷だったパラス現皇太子による謀略説がくすぶる。
国王は〇五年二月、強権を発動し、非常事態を宣言、直接統治に乗り出した。「腐敗した政治家には任せられない」と強調したが、国民から総スカンを食った。
昨年四月、民主化運動の高まりで、親政は崩壊。国王は“張り子の虎”となった。昨年暮れ、国王夫妻が親族の結婚式に出席するため、幹線道路が二時間にわたって通行止めにされると、住民から怒号が飛び交った。
不正蓄財の一方で、電気代滞納が指摘され、パラス皇太子の素行の悪さも有名。ある観光業者は「王制は残してほしいが、あの国王親子はダメ」と話す。
今年十一月に王制廃止を掲げる共産党毛沢東主義派も参加して新憲法制定のための制憲議会選挙が行われる。王室の命運は、この結果にかかっている。
(バンコク・平田浩二)
復権遠く恥辱のみ 中国
中国で一度失脚した政治家が、返り咲くのは至難の業だ。スキャンダルや汚職の摘発は常に、「権力闘争」と背中合わせだからだ。闘いに敗れた者は、これでもかとばかりに貶(おとし)められる。
昨年九月、上海市党委書記だった陳良宇氏(60)が汚職事件で解任された。胡錦濤国家主席にとって、江沢民前国家主席を頂点とする上海閥は“目の上のたんこぶ”。わが世の春を謳歌(おうか)していた上海閥のホープを排し、結果的に弱体化をもたらした。
北京市内で党の査問を受けた陳氏は、これまでに少なくとも三度、自殺を図ったとされる。関係者の話を総合すると、陳氏は「自分は江前主席の方針に従い、方向性は誤っていない」と五度にわたって中央政治局に手紙を書き、ひたすら弁明の機会を求めた。
宛先(あてさき)は上海閥の黄菊副首相(二日に死去)や曽慶紅国家副主席だったが、すべて無視された。昨年十月下旬ごろからは、新聞をひたすら破り続けたり、茶わんを地面にたたきつけ、いすで看守に殴りかかったりと、奇妙な言動が目立ち始めた。
そして一度目は下着をシャワーのノズルに引っかけ首をつり、二度目は照明器具に頭から突進、三度目は睡眠薬を大量に服用した。だが、いずれも未遂に終わった。昨年末、中央の会議で、陳氏の近況が報告されると、どっと笑いが起きた、とされる。
党の処分はまだ出ておらず、司法判断はさらにその先だ。陳氏の容疑が何だったのか、党は明らかにしていないが、もはや勝負あり、そんなことには誰も興味がない。 (上海・豊田雄二郎)
しがみつく イスラエル
辞めないことが、この人の「けじめ」のつけ方だ。
イスラエルのオルメルト首相。支持率は世論調査で2−3%に低迷し、アラブ・メディアの決まり文句は「ほとんどゼロ」。建国以来、最も不人気の首相だ。
理由は、昨年夏のレバノン紛争の失敗。その原因を究明する政府調査委員会による中間報告を読むと、ほとんど「無能」の首相である。それでも「指摘された問題を改善するのが責務」として、職にとどまる。
首相はほかにも▽知人の実業家の株取得に際し、便宜を不正に供与▽高級マンションを格安購入した見返りに、開発業者に便宜を供与−など、さまざまな疑惑を持たれ、犯罪捜査の対象でもある。一昔前の日本政界で流行した「疑惑の総合商社」状態だ。
それでも辞めず、政界の辞任要求も強まらない。理由は、選挙が怖いからだ。
首相が不人気だから、首相が率いる最大与党も不人気。早期解散・総選挙は党解体につながりかねない。別の有力な連立与党も、できるだけ選挙を先延ばししたい。首相の「クビ」を取るどころではないのだ。
国民の政治意識が高かったイスラエル。移民急増と相次ぐ政治腐敗を受け、無関心が広がっている。前回総選挙の投票率は過去最低だし、首相退陣を求めるデモの参加者数も、首相への圧力となる水準を大きく下回った。無関心も首相の延命を支えている。
「政局には強い」と定評があるオルメルト首相。常に権力維持のため、次に起きる事態への準備に余念がない。もっとも「その準備能力を発揮すれば、昨夏の戦闘で成功できたはず」との声もあるのだが。
(エルサレムで、萩文明)
“禁句”で謝罪、辞任 ドイツ
ナチスの復活阻止を国是とするドイツでは、ナチス擁護の発言は政治家の資質を欠くものとして厳しく追及される。
今年四月、ナチス党員の判事だった経歴から辞任に追い込まれた過去のあるバーデン・ビュルテンベルク州の元首相の葬儀で、エッティンガー現州首相が、元首相のナチス経歴を否定する弔辞を読み、やり玉に。
中央政界でも、大連立政権与党の社会民主党(SPD)から資質を問われたエッティンガー首相は、ドイツのユダヤ中央評議会に赴き、全面謝罪するはめとなった。
ナチスの“実績”に触れた演説で辞任に追い込まれた政治家も。一九八八年十一月、ユダヤ人迫害の引き金を引いた「水晶の夜事件」五十周年の記念日に、イエニンガー旧西ドイツ連邦議会議長は第二次世界大戦以前のヒトラー政権について、「魅力的な時代」と議会で演説した。
議長は当時の雰囲気を表現した、と釈明したものの、ナチスを懐古する発言として野党議員の大半が退席。世間からも激しい指弾を受け、翌日に議長を退いた。
その一方で、金銭スキャンダルでは不透明な決着も。九九年に発覚したコール元首相をめぐる二百万マルク(当時・約一億円)の裏献金問題では、罰金三十万マルクの行政処分で捜査は終了。献金者やわいろ性の有無も分からないまま、幕引きとなった。
壮絶な死で疑惑を封印したのは、政治資金の不正利用が指摘されたメレマン元経済相のケースだ。不逮捕特権がはく奪され、捜査当局が一斉捜索に着手した〇三年六月のその日。趣味のスカイダイビングに出かけた同氏は、上空四千メートルから地面に激突した。パラシュートの金具を外した形跡から自殺の可能性が高い。将来を嘱望されたこともある五十七歳の政治家の最期だった。
(ベルリン・三浦耕喜)
http://www.chunichi.co.jp/article/world/newworld/CK2007062002025733.html