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□【中国を読む】ネット・携帯が崩す「闇」 福島香織 [IZA]
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【中国を読む】ネット・携帯が崩す「闇」 福島香織
06/24 10:48
「ヤミレンガ工場の子供奴隷を救おう! 支持者は腕やシャツの襟、車のフロントにブルーリボンをつけよう! 青いリボンをつければ君も戦士だ!」。携帯電話に、こんなメールが飛び込んできた。今、中国で展開されている大型人身売買・強制労働事件「山西省ヤミレンガ奴隷工場事件」の徹底摘発を支持するチェーンメールだ。
誘拐され売られてきた未成年者らを高温のレンガ窯の危険な作業に従事させ、食事もろくに与えず、けがや病に倒れれば見殺し…。山西省や河南省でそんな地獄のような工場の実態が明らかになり、目下570人以上が救出されたところだ。
人身売買、強制労働は10年以上前から農村地域のヤミ工場、ヤミ炭坑で存在すると指摘されてきたが、表ざたになることはなかった。高利潤の「奴隷工場」は地元党幹部、警察にたっぷりワイロを支払うことができる。今回、最初に摘発された山西省洪洞県の工場は村の書記の息子が経営。県・鎮の関連21部局がこの工場の存在を黙認していた。そんな公然の秘密がなぜ今になって暴かれたのか。
■親たちの告発文
それはインターネットと携帯電話が生んだ奇跡ではないかと思う。発端はネット掲示板にはられたわが子を誘拐された河南省の父親400人の連名告発文。親たちは自力でわが子の行方を突き止め、労働者になりすまし工場に潜入、8〜13歳の40人あまりの子供たちを命がけで救出した。河南省や山西省当局や警察に訴えても全く顧みられなかったが、その過程のすべてを、血を吐くようにネット上にぶちまけた。
告発文が最初に掲載されたのは6月5日。1週間で31万アクセスを記録し、他の掲示板、ブログに次々転載された。それにあわせ地元テレビらも報道、そのリポート映像が画像投稿サイトに流れた。携帯電話に「ブルーリボン行動」を呼びかけるチェーンメールが流れ、ネット・携帯世論が胡錦濤国家主席ら中央指導者に事件徹底解明の指示を出させるまでに2週間かからなかった。警察の最初の摘発は5月27日で、ネット世論が広がる前だが、ネットがなければこれほど大社会問題として注目されなかったはずだ。
■チェック機能
同じような現象が昨今続いている。福建省アモイ市政府の化学物質パラキシレン(PX)プラント誘致プロジェクトを中止させたのもネット・携帯世論だ。ブログや掲示板でPXの有毒性、それによる環境汚染や健康被害の可能性が訴えられた。「プラント誘致反対の市民は6月1日、イエローリボンをつけて散歩しよう」と呼びかけるショートメールが飛びかった。これに応じた1000人以上が市庁舎前での抗議集会、市政府の決定に待ったをかけた。
司法が暴けない巨悪を暴き、利権に走る政府をいさめる。本来は新聞やテレビの役目だが、厳しい報道統制下で既存メディアは体制に刃向かえない。
しかしネット、携帯電話は違う。ネット人口1.4億人以上、携帯電話加入数4.87億件以上。そのボリュームと伝播(でんぱ)スピードは当局の検閲、統制も追いつけない。今この国で、真のジャーナリズムの役割を果たせるのはネットと携帯電話だけだろう。
誰が発信したのかもわからない一本のショートメール。奇妙に熱い携帯電話の光る小さな画面を凝視して、ふと顔をあげると、手首に青いリボンを巻いた若い男性が目の前を通り過ぎていった。北京の街中で、携帯電話から生まれた小さな民主の萌芽(ほうが)を確認した瞬間だ。(中国総局)