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円借款で建設のダム、深刻な土砂堆積…インドネシア
(読売新聞・http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070513i403.htm)
政府開発援助(ODA)の円借款によりインドネシアで建設されたダムの湖が、計画より大幅に早く土砂で埋まり、浚渫(しゅんせつ)などのため多額の追加出費が必要となるケースが続出している。
融資した国際協力銀行(JBIC)は、こうした実態を示すデータのほとんどを開示していないが、読売新聞が入手した同行の内部資料では、全体の約9割が土砂で埋まったダム湖もある。立地などに問題があった可能性も指摘されており、海外での融資のずさんさを浮き彫りにしている。
インドネシア・スラウェシ島西部にあるバカルダム(水力発電用)は、日本のコンサルタント会社が設計し、同行が220億円を融資して1990年に完成した。土砂はその直後からダム湖にたまり始めた。堆積(たいせき)する土砂は、設計段階では年平均約13万立方メートルと予測していたが、実際にはその6倍以上の同約80万立方メートルが堆積。土砂をはき出すゲートを開けても流れ出なくなったという。
こうした土砂堆積が問題化するダム湖が続出したため、同行では、同国内の100以上のダムを対象に、日本のコンサルタント会社に調査を依頼した。
入手した報告書(2004年12月作成)によると、土砂の堆積が特に深刻だった八つのダムのうち三つは、同行の融資によるものだった。中でも最も危機的状態にあったのがバカルダムで、総貯水容量(約690万立方メートル)の93%が土砂で埋まっていた。その他のダムも、総貯水容量の26%、36%に上っていた。
バカルダムは、乾期でも、周辺都市などの朝夕計6時間の電力需要を満たす発電を予定していたが、ダム湖の水不足で実際には平均約2・5時間しか運転できず、周辺の住宅や工場では、日常的に停電が発生しているという。
このため、同行で昨年、さらに詳しく調査した結果、土砂を排除するための追加工事などで60億円以上かかることがわかった。同行は「追加融資についての交渉内容は言えない」としているが、インドネシア側は融資の受け入れに難色を示しているといい、工事が実現するかどうかは不明だ。
堆積量が予測より大幅に増えた点について、同行は「上流部の違法伐採で森林が減り、河川への土砂流入が増えたのが主原因」と説明する。しかし、建設にかかわった関係者は「ダム建設用地近くの傾斜が緩やかすぎて土砂が流れなかった。立地の問題であり、違法伐採は言い逃れにすぎない」と指摘。同行幹部も「完成からわずか20年弱で埋まってしまうのは異常。当初設計に問題があったと考えざるを得ない」と話す。
円借款によるインドネシアのダムを巡っては、今回の報告書の調査対象ではないが、ビリビリダム(スラウェシ島)でも、既に許容量を超える土砂が堆積し、約100億円を追加融資。また、ウオノギリダム(ジャワ島)でも、5年前に7億5000万円かけて緊急工事が行われたが不十分で、抜本対策のため多額の費用が必要とみられている。
(2007年5月13日11時51分 読売新聞)