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http://www.amnesty.or.jp/modules/news/article.php?storyid=293
中国では死刑制度が大幅に改正され、外国人ジャーナリストに関する新しい法律が制定されたが、オリンピック開催に関わるそれ以外の人権状況はほとんど改善がなく、人権運動や国内ジャーナリズムに対する弾圧は強くなっていると、アムネスティ・インターナショナルは4月30日に述べた。
アムネスティは、2008年北京オリンピック開催に向けて中国が約束した人権状況の改善についての最新の評価の中で、少なくとも北京では、オリンピックを口実に裁判なしでの拘禁が増加していると結論づけた。
アムネスティのアジア・太平洋部のキャサリン・バーバー副部長は次のように述べた。「死刑判決に関する法改正や外国人ジャーナリストへの規制緩和などの新たな改革は、中国における人権尊重に向けた重要な動きだった。しかし残念ながら同時に、裁判なしの拘禁や活動家の「自宅軟禁」が増え、国内メディアやインターネットの統制が強まっている。国の内外のジャーナリストに対して平等の権利を保障しないのはダブルスタンダードである。オリンピックのために「メディアの完全な自由」を保障するという約束を、中国はまだ果たしていない」。
中国は、オリンピック開催国としての「安定」と「良質な社会環境」を目指すあまり、このような方策をとっていると思われる。オリンピックのような大規模な国際大会を開催する国がこうした懸念を有することは理解できるが、政策と執行は法の支配と人権の尊重に基づいて行われなければならない。でなければ、さらなる不満が生まれる危険がある。
「労働を通じての再教育」を改正あるいは廃止する動きは頓挫したままである。2008年8月までに北京を「きれいにする」口実としてオリンピックを利用し、「労働を通じての再教育」が拡大適用されていることは明らかである。北京の警察は最近、裁判なしの拘禁形態である「薬物中毒者の強制リハビリ」を、現行の6カ月から1年に延長し、薬物使用者に「オリンピックまでに薬物をやめる」よう強制できるようにすることを提案した。
「中国にとってオリンピックが「永遠の遺産」となることを真剣に望むなら、中国当局および国際オリンピック委員会(IOC)は、オリンピックが拘禁形態を確立・拡大する口実として利用されていることを憂慮すべきである。中国では、こうした拘禁形態は多年にわたって改革の議題であった」とキャサリン・バーバー副部長は語った。
アムネスティは中国当局とIOCに対して最新の人権状況評価を送付した。この評価の中でアムネスティは、人権問題はオリンピックの開催に直接関連する問題であり、「人間の尊厳の保持」などのオリンピック憲章の主要原則であると述べた。
キャサリン・バーバー副部長はさらに、「競技場を作るために立ち退きを強制される家族や、人権問題に注意をひきつけようとする平和的活動家の「自宅軟禁」の増加などの人権侵害という汚点のあるオリンピックを、IOCが望むはずはない」と述べた。
<参考情報>
2008年の北京オリンピックを前に、アムネスティはオリンピックに関連する人権主要4分野について定期評価を発表している。その4分野とは、人権活動、メディアの自由、死刑、裁判なしの拘禁である。最新の評価結果は以下の通りである。
人権活動
一部の人権擁護活動家に対する寛容の度合いが増している一方で、人権侵害についてより大きく報じたりキャンペーンを展開したりしようとする人びとに対するいやがらせはそれ以上に続いた。1989年の民主化運動で活躍し長く活動を続けてきた2人の中国人活動家は4月半ばに初の香港訪問を許された。また、エイズ活動家である高耀潔医師は、受賞のため渡米することができた。しかし、まだ多数の活動家が、いやがらせを受けたり、恣意的に拘禁されたり、家族に対する妨害的監視などを受けている。
北京での強制立ち退きに反対するデモを組織しようとしたことで、葉国柱は引き続き4年間の拘禁刑に服している。親族によれば、葉国柱は健康状態が悪いということだが、その原因の一部は拘禁中に拷問されたことだという。最近では、彼が2006年末に北京の潮白刑務所の刑務官に電気ショック棒で殴られたと地元筋が伝えた。アムネスティは葉国柱を良心の囚人とみなし、彼の即時無条件釈放を求めている。
高智晟弁護士は、平和的に人権擁護活動をしたとして、「破壊活動の教唆」で2006年12月に有罪となり、警察により自宅軟禁されている。高智晟弁護士が他の活動家に対して訴えたところによれば、4カ月間の警察拘禁中に苛酷な取扱いを受け、手錠をされて鉄製の椅子に座らされたり、長時間にわたる胡坐を強いられたり、強い光を当てられたりしたという。彼が「罪」を自白したのは、ただ家族を守るためであるということであった。
メディアの自由
オリンピック期間中の「完全なメディアの自由」を約束したにもかかわらず、中国政府は国内と国外のジャーナリストにダブルスタンダードを適用している。2007年1月1日、外国人ジャーナリストに対する新しい規定が発効し、地方当局の許可なしでインタビューや取材ができることになった。しかし、外国の通信社からのニュースを国内で報道することに対する当局の規制を強化する法律が9月に導入されてからは特に、微妙な問題に関する外国のニュース報道に中国の人びとがアクセスしにくくなった。ここ数か月間、国内のメディアに対する規制を強化する規則が他にも制定され、「微妙な」歴史上の事件に関する報道については事前の許可が必要になり、司法界の汚職や人権擁護キャンペーンなど特定の20の話題については放映を禁止された。また、新しくペナルティーポイント制が設けられ、「間違った行ない」によって持ち点がゼロになれば閉鎖される可能性がある。「南華早報」紙の記事に引用されたメディア担当の高官によれば、この制度は「来年のオリンピックに先立ち、平和な社会環境」をつくりだすことを目的としている。
ここ数か月間、中国当局はインターネットへの規制もますます強化しようとしてきた。さらに、特定のウェブサイトやブログ、ネット上の記事などが監視されている。たとえば、インターネットでニュースを流すwww.ccztv.com というウェブサイトが3月に閉鎖された。
死刑
2007年1月1日、最高人民法院(SPC)はすべての死刑判決を承認する役割を正式に復活させた。これによって死刑判決の数が減少し、公正な裁判の国際基準にますます沿うような司法制度へ向けての改革が加速することになると期待し、アムネスティはこの動きを歓迎した。
しかし、制度が不透明なため、SPCによる死刑判決の見直しに大きな効果があったかどうか評価するのが困難である。たとえば、国営新華社通信は3月19日、SPCが1月1日に4人の死刑判決を承認したと報じた。しかしアムネスティは、中国のニュース報道を監視している中で、この4人とは別の少なくとも13人の死刑執行を記録している。アムネスティは中国当局に対し、SPCの死刑判決見直しについてさらに詳細な情報を公表し、死刑の判決と執行についての完全な全国統計を発表するよう求める。
裁判なしの拘禁
「首都にいるすべての薬物使用者に、オリンピックまでに薬物をやめるよう強制する可能性は捨てていない」と、北京公安局副局長は語った。
起訴も裁判も再審もないまま、「労働を通しての再教育」その他の行政拘禁の対象となる人びとがいるという報告をアムネスティは恒常的に受け取っている。オリンピック前に北京を「きれいにする」ために、軽微な犯罪をした人びとや浮浪者、薬物中毒者などを拘束する目的でこうした不正な制度が利用されていることをアムネスティは危惧している。
関連する報告書(英語のみ)
People’s Republic of China: The Olympics countdown - repression of activists overshadows death penalty and media reformshttp://web.amnesty.org/library/index/ENGASA170152007
2007年4月30日
AI Index:ASA 17/019/2007