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http://www.amnesty.or.jp/modules/news/article.php?storyid=288
「主要国政府が政治的リーダーシップを発揮すれば、死刑のない世界の実現は可能である」と、アムネスティ・インターナショナルのアイリーン・カーン事務総長はローマにおいて述べた。
「アムネスティは世界的な執行停止を求める。2006年における死刑執行の91パーセントは、イラン、イラク、スーダン、パキスタン、米国、中国のわずか6カ国で行なわれた。これらの処刑国は孤立し、世界的潮流とは相容れない」とカーン事務総長は続けた。
1977年には、すべての犯罪について死刑を廃止した国はわずか16カ国にすぎなかった。それから30年、死刑廃止国は増加の一途をたどり、死刑という刑罰がなくなるほどの勢力となっている。2006年にはフィリピンが、通常犯罪について死刑を廃止している99番目の国となった。韓国を含め、さらに多くの国ぐにが死刑廃止を目前にしている。
アフリカでは、2006年に死刑を執行したのは6カ国のみであった。ベラルーシはヨーロッパで唯一の死刑存置国である。南北アメリカで、2003年以降に死刑を執行した国は米国だけである。
アムネスティの統計によれば、世界の死刑執行数は2005年には2148件だったが、2006年には1591件に減少した。
イラクは2006年に世界の最多執行国に加わった。同国では2004年半ばに死刑が復活してから、その適用が急増した。死刑の復活以降270人が死刑判決を言い渡され、少なくとも100人が処刑されたという。2004年には執行がなかったと伝えられ、2005年には少なくとも3人が処刑された。2006年12月、サダム・フセインの処刑がテレビ放映されて世界の注目を集めた。一方この年イラクでは死刑執行数が激増し、少なくとも2人の女性を含む65人が絞首刑に処せられたが、こうした事実はおおい隠された。
イランでは2005年に比べて死刑執行率がほぼ倍増し、少なくとも177人が処刑された。パキスタンで少なくとも82人が処刑され、同国は最多執行国に加わった。スーダンでは少なくとも65人が処刑されたが、実際の数ははるかに多いと思われる。そして米国では12の州で53人が処刑された。国際法に違反して未成年時犯罪者を処刑した国は、2006年にはイラン(4人)とパキスタン(1人)のみだった。
中国は引き続き世界最多執行国である。2006年には1000人以上が処刑されたとアムネスティは記録している。中国では死刑に関する統計は国家機密であるが、実際の執行数は8000人にものぼると考えられる。
カーン事務総長は、次のように述べた。「イランと中国の2006年の執行数は許し難い。しかも、世界最多執行国である両国の高官は、死刑の適用を停止したいと発言しているのである」。
またアムネスティは、死刑の持つ残虐で恣意的かつ不公正な性質を示す多くのケースや、死刑執行に伴うおそろしい苦痛に焦点を当てている。
スリランカ人のサンジャヤ・ロワン・クマラは昨年11月にクウェートで処刑された。当初、同死刑囚は絞首の直後に死亡宣告されたが、遺体安置所に運ばれたところで、医療職員がまだ動いていることに気づいた。さらに調べてみると、弱い心拍が確認された。最終的には執行開始の5時間後に、死亡が宣告された。
米国では昨年12月、フロリダ州のジェブ・ブッシュ知事が同州内のすべての死刑執行を停止し、「致死薬注射の人道性と合憲性を審査する」委員会を設置した。これは、死亡が宣告されるまで34分も苦しんだアンヘル・ディアス死刑囚の処刑がきっかけだった。その原因は、血管ではなく軟組織に薬物を注射したためであることが後に判明した。
2002年に司法長官が石打ち処刑の停止を宣言していたにもかかわらず、イランでは昨年5月、婚外性交をしたとして、男性1人と女性1人が石打ち処刑となった。同国では、死刑囚が即死せず時間をかけて死ぬように、石の大きさが前もって決められる。
死刑には、無実の人を処刑する危険が必ずある。2006年には、ジャマイカ、タンザニア、米国で、3人が死刑判決後数年たって無実だと判明した。
世界で現在約2万人の死刑囚が、国家によって殺されるのを待っていると推定されている。
「死刑は残虐、非人道的かつ品位を傷つける究極の刑罰です。死刑は恣意的で、犯罪減少に効果がないと証明されており、暴力的な環境を永続させます。そのような環境の下では、真に正義が達成されることはあり得ません。死刑は廃止されるべきです。世界的な執行停止はそのための重要な一歩です」とカーン事務総長は述べた。
2007年4月27日
AI Index:ACT 50/013/2007