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http://www.amnesty.or.jp/modules/news/article.php?storyid=265
アムネスティ・インターナショナル日本は、本日付けで以下の書簡を伊吹文明文部科学大臣と安倍総理大臣に送付しました。
内閣総理大臣 安倍晋三 殿
文部科学大臣 伊吹文明 殿
アムネスティ・インターナショナル日本は、最近の伊吹文明文部科学大臣の発言とそれを擁護する安倍晋三総理大臣の発言を強く懸念します。
伊吹文科大臣は、2月25日、長崎県長与町で開かれた自民党長与支部大会で、教育基本法改正に触れ、同法の前文に「公共の精神を尊び」という文言が加わったことについて、「日本がこれまで個人の立場を重視しすぎたため」と説明し、人権をバターに例えて「栄養がある大切な食べ物だが、食べ過ぎれば日本社会は『人権メタボリック症候群』になる」と述べたと報道されています。
報道が事実であるとすれば、これは大変に重大な誤りです。
「権利に義務がつきもの」という考えはその通りです。しかし、市民が持つ権利とセットになっている義務を負っているのは、国家、政府です。市民の権利を実現するための義務を、国家、政府が果たさなければならないのです。それが「権利には義務がつきもの」の意味であり、国際的な人権基準の基本的な考えです。その責任当事者である総理大臣と閣僚が、「権利には義務がつきもの、そのためには規律が必要」と述べて市民の規律重視を打ち出すという姿勢は、自らの責任を放棄し、市民の権利を無視する態度に他なりません。
日本は、国内の人権擁護のための対応策が極めて不十分な国であると、国連諸機関や国際的な人権NGOから都度指摘されています。日本政府は、依然として十分な対応策を講じないままであり、個人通報権を定める自由権規約の選択議定書も、国内で起こる拷問等の人権侵害を実地調査することを定める拷問等禁止条約の選択議定書も、締約国になっていません。拘禁施設などでの人権侵害を調査し、必要な勧告を行うべき国内人権機関の設置についても、検討されている法案は、現在のところ、国内人権機関に関する国際基準である「パリ原則」(国内機構の地位に関する原則)*に則った中立性が確保されず、拘禁施設を所管する当の法務省内に設けるとされています。このように日本は、人権を守るための政府の義務が果たされていない状況にあるのです。
今回の総理、文科大臣による発言は、日本政府がこれまでとっている態度を省みないまま、いたずらに市民の側の権利制限を促す内容となっています。閣僚によるこうした発言が与える影響は甚大であり、見過ごすことはできません。
日本政府は、対外的には国際社会に向けて、「人権のメインストリーム化」、「人間の安全保障」を強く押し出しています。それとの整合性を確保するためにも、今回の総理と文科大臣の発言は直ちに取り消され、政府は、人権を守るための具体的方策を充実するという約束を、日本社会および国際社会に向けて鮮明に打ち出すべきです。
以上、強く申し入れます。
社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
代表者理事長 搆 美佳
事務局長 寺中 誠
*国連人権委員会決議1992年3月3日1992/54附属文書(経済社会理事会公式記録1992年補足No.2 E/1992/22)、総会決議1993年12月20日48/134附属文書
アムネスティ・インターナショナル日本支部声明
(2007年2月27日)