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進歩派ですらいまだに囚われる「親の因果が子に報い」的思考=黒田勝弘 [SAPIO]
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投稿者 white 日時 2007 年 1 月 30 日 16:16:44: QYBiAyr6jr5Ac
 

□進歩派ですらいまだに囚われる「親の因果が子に報い」的思考=黒田勝弘 [SAPIO]

 http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20070130-01-0401.html

2007年1月30日
進歩派ですらいまだに囚われる「親の因果が子に報い」的思考=黒田勝弘
 昨年末の韓国のある新聞に、盧武鉉大統領の下で弘報首席秘書官(大統領スポークスマン、いやスポークスウーマン)を務めた女性の趙己淑・前梨花女子大教授が、床に頭をこすりつけて謝っている写真が出ていた。何事かと思いきや、開化期の19世紀末、韓国(朝鮮)で起きた“東学農民戦争(東学党の乱)”の当時、高官の職にあって彼女の先祖が農民たちを搾取しいじめたということで、その“罪”を、地元の農民たちに謝罪しているシーンだった。
 100年以上前の先祖のことを、その子孫が「すみませんでした」と謝り、それをマスコミがユーモアではなく大真面目に伝えているのだ。韓国では「親の因果が子に報い」が生きているのだ。これが韓国人の歴史観である。
 僕は趙己淑氏とは個人的にこんなことがあった。彼女が梨花女子大教授だったころ、さる大学の「言論大学院」でのマスコミ関係セミナーで一緒になった。そのころ彼女は「朝鮮日報不買運動」なる市民運動をやっていた。この運動は、保守勢力の代弁紙で北朝鮮批判の先頭に立ち、盧政権と激しく対立している朝鮮日報に対する左派や親北サイドからの非難キャンペーンである。
 朝鮮日報に対しては、北朝鮮当局は「爆破すべし!」などと公然とテロを扇動している。その結果、朝鮮日報へのデモや投石のほか、最近でも社長が乗った車が何者かに襲われるといった事件が起きているほどだ。
 大学のセミナーでも、彼女をはじめほとんどが“朝鮮日報批判”を展開していた。そこで僕は彼女らの朝鮮日報叩きを批判して厳しく対立した。その時の僕の主張はこうだった。
 そもそも(政府の影響が強い)KBSやMBCなど公共放送が、メディア批評番組で特定の新聞(朝鮮日報)に対し非難キャンペーンを展開するなどということは、よその国ではありえない、そんなキャンペーンと一緒になった盧武鉉政権下の“朝鮮日報叩き市民運動”なるものは後世、韓国言論史の汚点として記録されるだろう……。
 それから間もなくして、趙氏は政権にスカウトされ、メディア担当の総責任者になった。特定の新聞に対する“不買市民運動”をやっていた人物を、政府のマスコミ担当要職(大臣級)に起用するあたり、盧政権は実に大胆不敵だ。
 ところが趙氏に対してはその後、朝鮮日報系の『月刊朝鮮』(2005年10月号)が、彼女の曾祖父(ひいじいさん)は大規模な農民反乱(日本風にいえば百姓一揆?)だった「東学農民戦争」当時、地元の全羅道で農民いじめで知られた“悪代官”だったと暴露した。彼女は朝鮮日報に報復されたのだ。
 彼女は昨年初め、在任一年で官職は辞めている。そして最近、地元を訪れ「東学党の乱」の関係者の子孫たちに会い、「これまで家系を隠していたのは申し訳ない」といい、ひいじいさんの罪と子孫として自らの姿勢を謝ったというのである。
 彼女は家系を暴露された当初は、「不幸な家族史がいまさらなぜ問題になるのか」と反発していた。これは、米国留学帰りで、進歩派の“翔んでる女性”だった彼女としては当然だろう。しかし結局は、床に頭をこすりつけ、文字通り平身低頭で血縁文化に屈服してしまった。「先祖は先祖、私は私」を貫けなかったのだ。
 盧武鉉大統領も以前、「日帝時代の独立運動家だった人たちの子孫が、貧しい生活をしているのは問題だ」として、支援の必要性を語っている。先祖が独立運動家だろうが革命家だろうが、子孫の生活の現状はその子孫の責任だろう。しかし韓国では左派や進歩派を含め、今なお「親の因果が子に報い」式の血縁思想が、公式レベルにまで影響を与えているのだ。
 だから韓国では安倍晋三首相の誕生に際しては、安倍晋太郎─岸信介の“家系”に異様な関心を示した。韓国政治では家系は日本のようにエピソードではなく、社会的、政治的にインパクトを持っている。権力世襲や先祖の階級で子孫の現状が決定される、封建王朝的な身分社会の北朝鮮ほどではないが、韓国にも似たような風景が見られるのだ。血は争えない?(産経新聞ソウル支局長)

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