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<チベット暴動>IT駆使し情報戦 亡命チベット人と中国
(毎日新聞 - 03月21日 15:12)
【ダラムサラ(インド北部)栗田慎一】中国チベット自治区の暴動をめぐる状況について、亡命チベット人たちと中国当局との間でIT(情報技術)を駆使した情報戦が熱を帯びている。チベット人たちは、現地から電子メールや携帯電話で寄せられた情報をウェブサイト上に掲載。中国側は、約3000人体制で電子メールなどを監視する一方、チベット側に「偽情報」も流しているという。死者数など双方の主張には大きな違いがあるが、その事実こそチベット問題の深刻さを際立たせている。
「(前回の大規模デモが起きた)89年とは違う。我々はITという武器を得た」
ダラムサラを拠点に、ウェブサイトで死者数などを掲載している亡命チベット人で作る非政府組織(NGO)「チベット人権民主化センター」のウルジン・テンジン事務局長(43)は言う。「89年は国際電話も使えず、避難してきた人々の情報がすべてだった。情報には1週間の時差があり、中国側の発表に対抗できなかった」
同センターはインターネットが世界に普及し始めた96年に設立。以来、チベット問題の「真実」を世界に発信し続ける。今回のデモでは、世界のメディアが中国の発表と対比するため引用した。
情報提供者はチベット自治区のジャーナリストたちという。「彼らには『報道の自由』がない。だから提供してくる」
一方、「中国当局による作為情報が急増している」と語るのは、同じくチベットの状況をウェブ上で公開している元ジャーナリスト、パルブー・ティンレー氏(26)。デモ開始後は1日300件以上の着信があり、中国当局の発信とみられる情報も交じる。
ティンレー氏は「中国側が送信してくるのは写真のみ。動画では作為がばれてしまうからだ」と指摘。情報提供者は「複数の仲介者を経由して送信してくる。当局の監視を逃れるため、国外の複数の支持者を経由して私に送ってくるケースもある」と明かした。
ただ暴力的なシーンが発信され続けることで、若い世代が過激な思想に染まる危険性も捨てきれない。ティンレー氏は「ダライ・ラマ14世の非暴力思想を堅持するよう訴え続けている。チベット人は中国に併合されて以来、一度もテロ行為に出たことはない。世界に誇れる財産は守らなければ」と語った。