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市民もサイバーパトロール・韓国フィルタリング事情 − IT-PLUS
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投稿者 児童小説 日時 2008 年 2 月 14 日 03:30:49: nh40l4DMIETCQ
 

 日本では子供たちの間で「学校裏サイト」や「プロフ」といったサイトに個人情報丸出しで悪口を書き合う行為が問題となり、携帯サイトのフィルタリングの是非も議論となっている。韓国では携帯サイトが日本ほど普及していないが、それでも携帯のコミュニティー系サービスに同様の規制を求める声も出始めた。国民総背番号制の韓国ならではの個人情報保護を巡る問題も浮上している。(趙章恩のIT先進国・韓国の素顔)

■後を絶たないネット事件

 韓国でもネット上の事件は数え切れないほど起きている。電車に子犬を抱いて乗り込み、犬の糞を放置したまま降りた女性の写真と個人情報がネットに公開され、「ゲトンニョ」と呼ばれて日常生活に危険を感じるほどののしられたり、別れた彼女の電話番号を別の女性のヌード写真と一緒にネットにばらまいたり。オンライン上でのちょっとした口論から相手がストーカーに変貌し、個人情報を突き止められてネットに写真や電話番号が公開される事件や、友達にしか教えていないBLOGのコメント欄に悪口が数百件も書き込まれるといった事件も珍しくない。会社の上司や同僚に「この人は犯罪者です」というメールを送信して会社をクビにさせたり、結局被害者が自殺してしまったりといろんな事件が発生している。

 このようなことが起きているにもかかわらず、見て見ぬふりをしたとしてサイト運営側の責任を問うことは難しい。それゆえ、この手のサイトに子供達が触れないように「フィルタリング」することで犯罪につながるのを防止したいと考えるのは韓国も変わらない。実際に韓国ではギャンブルやアダルト、反社会的サイトを中心にフィルタリングをして、どんな人でもアクセスできないようにする制度が定着している。

■サイバーパトロールに懸賞金

韓国におけるインターネット有害情報対策は、情報通信部の傘下である情報通信倫理委員会・韓国情報文化振興院が担当し、個人情報保護やなりすまし防止は韓国情報保護振興院が管理監督をしている。1992年に「不健全情報申告センター」を設立し、パソコン通信などを利用した有害情報の通報を受け付けたのが始まりだ。

 その後政府は95年に情報通信倫理委員会を設立し、電気通信事業法により委員会の業務の一つとして「不健全情報申告センター」の運営を法制化した。2002年からはインターネットから通報できる専用ホームページ「インターネット119」を開設し、パソコン通信、インターネット、モバイルを対象に本格的な有害情報の取り締まりを始めた。

 その年の電気通信法の改正により、不健全情報申告センターは不法・青少年有害情報申告センターと改称し、2005年12月から統合通報センターも運営している。これらセンターは通報された情報の事実関係を調べてから警察の「サイバー捜査隊」に捜査を依頼、IPを追跡して運営者を摘発する仕組みだ。メールや電話、FAXからも年中受け付けている。

 このようなセンターの運営にとどまらず、情報通信倫理委員会は「不法・有害情報申告大会」というキャンペーンを一般人対象に毎年開催。有害情報と思われるコンテンツやそれを提供しているウェブサイトを数多く通報した人に賞金20万―50万ウォンを支給し、市民によるモニタリング制度「サイバーパトロール」も運営している。パトロールとなった市民はスパムメール、ビデオチャット、メッセンジャー、ファイル交換ソフト(PtoP)、ギャンブルゲーム、掲示板での反社会的書き込み、出会い系サイトの未成年者利用など、インターネットで起こり得るありとあらゆる違法行為の前兆をキャッチして情報通信倫理委員会に通報し、より大きな犯罪になる前に予防する役割を果たしている。

 特に最近問題なのはビデオチャットだ。未成年者を相手に映像を通してわいせつな会話をしたり、裸を見せるよう要求するといったことが何度も続いているため、チャットサイトを中心にパトロールを強化している。

 情報通信倫理委員会は2005年、サイバー犯罪の深刻性を訴え予防につなげるため「サイバー暴力被害事例及び予防案内書」を発刊したほど、政府が積極的に防止、摘発、処罰に関与している。IT大国を自負するからにはITの影の部分である有害情報やネット上での言語暴力、犯罪についても他国のモデルになるよう、積極的に対処しなくてはならないと考えているからだ。

 そんな政府の姿勢は「情報通信青少年有害媒体物表示制度」と「インターネット内容等級サービス」という制度も生み出した。

 2001年7月に発効された改正「情報通信網利用促進および情報保護などに関する法律」により、「青少年保護法上の青少年有害媒体物にあたる情報を情報通信網を利用して提供しようとする者は青少年有害媒体物であることを明記」するよう義務付けた。この表示制度では、ウェブの場合は最初の画面にサンプルコンテンツを提供せず、全体画面の3分の1以上の大きさで「この情報内容は青少年有害媒体物であり情報通信網利用促進及び情報保護などに関する法律と青少年保護法の規定によって19才未満の青少年は利用できません」という告知文を表示しなければならない。

 さらにPICS(Platform for Internet Content Selection)という技術標準による電子的表示により誰が見てもどのようなコンテンツかはっきり分かるようにし、住民登録番号と氏名を入力して成人であることを証明してからサイトに入場しなければならない。表示義務に違反した場合2年以下の懲役または1000万ウォン以下の罰金が科される。

 「内容等級サービス」は処罰規定はないが、提供する側が自ら自分のコンテンツを評価し、アダルト、暴力などについてのレベルを表示するものだ。オンラインゲームの場合は等級の審査が義務付けられ、成人向けゲームなのか青少年も利用できるゲームなのかを表記する必要があるが、一般的なコンテンツの場合はまだ運営者側に判断を任せている。この制度はユーザーがそのサイトを利用する前にどんなサイトなのかを認識できるようにするためのもので、コンテンツの良し悪しを決めるものではない。

保護者向けのフィルタリングソフトである「青少年有害情報遮断ソフト」も人気が高い。「国家青少年委員会」が指定した有害サイトにアクセスできないようにし、パソコンの利用時間を管理して一定時間が過ぎると自動的に電源を落としたり、子供がどんなサイトを訪問しているのかを保護者の携帯電話へ随時SMSで送信してくれたりするサービスもある。

 KTやハナロといった大手ブロードバンド会社やポータルサイトはすべてこのようなフィルタリングサービスを提供している。料金はウイルス対策も含めて平均月3300ウォン(約400円)ほどだ。単純にアダルトサイトにアクセスできなくするならネティモという政府機関が提供する無料サービスもある。

■携帯の抜け穴ふさげ

 韓国では携帯電話のパケット定額が登場して間もないこともあり、モバイルインターネットに関してはまだ日本のように誰もが日常的に使っているというレベルではない。しかし中学・高校生の間では携帯電話でブログやチャット、コミュニティーサイトにアクセスして日に何度も更新するのが当たり前になっていて、モバイルインターネットも活発に利用され始めている。

 パソコンでは見られないように遮断していても、携帯電話からURLを入力してアクセスするとアダルトサイトにアクセスできてしまうことがあった。19歳未満は利用できないはずのギャンブルとアダルトコンテンツが携帯電話では公式サイトとして登録されている場合もある。サービスの登録時だけ個人認証をして未成年者のアクセスを遮断し、数カ月後からは誰でも利用できるように設定を変えるサイトもあれば、アダルトサイトではないと申請しておいて後からコンテンツの内容を変更した事業者もいた。

 国が指定した有害サイト、北朝鮮関係やギャンブルサイトの場合、フィルタリングを使わなくてもパソコンからは一切アクセスできないようになっている。しかしモバイルWiMAXの韓国版サービスであるWibroではアクセスできなかったがHSDPAを利用するとみごとにどんなサイトでもつながることが発覚し、情報通信部のモバイルに対する管理が甘すぎたことが問題になった。

 携帯電話は音声通話とSMSだけという親の世代はモバイルインターネットを通じて子供がどんなサイトにアクセスし、どんなことをしているのか全く見当がつかないので怖い。携帯電話からもパソコンと同じように有害情報を遮断できるサービスがほしいと要求し始めている。現在はスパムSMS、スパム電話を遮断してくれるサービスしかない。

 韓国の保護者たちの悩みは、家ではどんなに厳しくインターネットの利用を制限しても、携帯電話からチャットをしたり塾をさぼってネットカフェ(PCバン)に行ってオンラインゲームをしたり、ネットにつながっていないと不安になるインターネット中毒を断ち切れない子供が多いことだ。インターネットを一切できないようにするわけにはいかないので、親子で一緒にネットの効率的な使い方や青少年のために作られたサイトをうまく活用するための教育を受けることも増えている。この手の教育はPTAや青少年委員会、警察庁が頻繁に開催している。

 インターネットがこれだけ普及していると、いつの間にか自分も加害者の一人になっていた、ということもある。それはコンテンツの違法ダウンロードだ。PtoPやウェブストレージを利用して音楽や映画やドラマの映像ファイルを共有するのはいまに始まった問題ではないが、2007年の韓米FTA締結をきっかけに、一般ユーザーの間でも「映像を勝手にダウンロードしてはいけない。ちゃんとお金を払って利用するべき」という認識が広まっている。

 情報通信倫理委員会は、ソフトウエアをコピーしない、ドラマや映画ファイルを違法サイトからダウンロードしないといったことをユーザーが自ら誓う大規模な「C(コンテンツ)クリーンキャンペーン」も実施した。高校では「社会と情報」という正規科目を通じて、ネット上でのエチケットやスパム対策をはじめ、どのようなコンテンツが有害情報なのか、サイバー犯罪にあったらどうしたらいいのか、違法コンテンツダウンロードはどうしていけないのか、などを教えている。この科目は以前はパソコンやインターネットの使い方を教える時間だったが、今ではインターネット社会を生き抜くためのアドバイスを行う授業になっている。

■保護が難しい個人情報の流出

 様々な制度やキャンペーン、フィルタリングを今後も徹底していけば有害情報から子供たちを守ることはなんとかできるかもしれない。しかし個人情報はどうすれば守れるのだろうか。

 今月1日、会員1800万人の韓国最大オークションサイトがハッキングされ、会員の個人情報がハッカーの手に渡る事件が発生した。中国のIPアドレスのほかにはなんの跡も残していないというハッカーは、大量の個人情報を人質に巨額の身代金を要求したそうだ。

 韓国を代表すると自慢していたサイトがハッカーに守りを崩されただけでも恥ずかしいが、その後のオークションサイトの対応は「ハッキングされてしまったのでパスワードを変更してください」の一言だけ。

 パスワードは暗号化されているから大丈夫と思っていたのにそうではなかったのか。どんな情報がどれだけ盗まれたのか。何が原因で、これからどうするのかをはっきりさせていないのでなおさら怖い。

 オークションサイトでは金銭的取引が発生するので、住民登録番号はもちろん、住所、電話番号、銀行の口座やクレジットカード番号と有効期限などありとあらゆるデータが含まれている。会員らは「ハッキングが発生しても何も告知せず、マスコミに報道されてから暗証番号を変えろというだけだなんて信じられない。その間に自分の知らないところで個人情報が使われているかもしれない。怖くてしょうがない」と憤怒している。

 しかしこれは初めての事件ではなく、すでにいくつかの大手ポータルはハッカーに身代金を渡してマスコミに報道される前に個人情報流出をもみ消していた、という実態も暴露された。韓国は何をするにも住民登録番号が必要だ。インターネットでも同じで、会員登録するにもブログを作るにも住民登録番号を入力しないと何も始まらない。

 個人を特定できるため管理しやすく、サイバー犯罪にも対処しやすいと思われていたが、今回のハッキングのように住民登録番号と金融情報が一緒に盗まれると、何をどうしたらいいのかパニックになってしまう。韓国では住民登録番号ではなく携帯電話にパスワードを送信してそれをもう一度ウェブに書き込み電話番号で認証する方法や、ネット専用登録番号を使うといった個人認証の新たなしくみを情報通信部や市民団体が進めてきたが、政府組織改変に埋もれて進展がない。

 インターネットで個人情報を守るのは有害情報から子供を守るより難しくなってきた。自分に非があるのではなく、いつどんなルートで漏れてしまうか分からないのが個人情報の怖さだ。どうか地雷を踏みませんように、私の個人情報が犯罪に使われたり、有害情報で子供たちが傷つくことがありませんようにと、祈るしかないのがもどかしい

http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMIT13000013022008&cp=3

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