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Taipei Game Showにはときどき,コメントに困るようなユニークさを持った作品が出展されるのだが,ここで紹介するモグラ叩きゲーム「打地鼠 政治篇」は,その典型といえるかもしれない。[TAIPEI2008#07][同#16]で紹介したテーブルゲームサイト「Star Online」(金台湾)で提供されるミニゲームの一つなのだが,そんじょそこらのモグラ叩きではない。
ブースステージの両側に配された本作の看板には,元台北市長にして,総統候補者である馬 英九氏(国民党)と,元高雄市長で,同じく総統候補者である民進党の謝 長廷氏が,それぞれの党章の入ったハンマーを振り上げた姿で描かれているではないか。
ちなみに台北市と高雄市は,日本でいう政令指定都市(都道府県と同格)より一段上の位置付けであって,それぞれの市長職は総統府への登竜門と認識されている。先頃あった立法院の選挙では,国民党の大勝が伝えられたばかりであるが,果たして総統選挙の行方はどうなるのか? 子年(ねずみどし)である今年(台湾は旧暦のため,正確には2月7日以降),台湾では盛大な“打地鼠”が繰り広げられるわけである。
そんな政局をモチーフにした本作で,プレイヤーは最初に国民党と民進党,どちらでプレイするかを選ぶ。そして,穴から出てくる敵陣営の要人を叩いていき,得点をCOMプレイヤーと争うのだ。
モグラ役としては両党要人だけでなく,総統府と書かれた建物などもあって,これをうまく叩くと大きなボーナスポイントが入る。また,なぜだかよく分からないが,ヒトラーやオサマ・ビン・ラディン,ヒラリー・クリントンや金正日と思しき人も登場し,これまたボーナス対象だ。
さらに驚くべきことに,ボーナスモグラとしては,かの孫文(孫中山)も出てくる。仮にも国父をヒトラーやビン・ラディンと同じ位置に置き,頭を叩くことでボーナスがもらえてよいものかという,実に聞きづらい質問もしてみたのだが,「深い意味はありません。単に昔の政治家ということですよ」と,実もフタもない返事が返ってきた。嗚呼,現在革命未だ成功せず,まこと民衆は散沙のごとくである(意味は自分で調べてみよう)。
どういった狙いでこのゲームを作ったのかブーススタッフに聞いてみたところ,答えは次のようなものだった。いわく,台湾では政局の混迷が続き,景気も低迷している。いまの政治に対して溜まった鬱憤を,このゲームでスカッと晴らしてください,と。
子供達に安心して楽しんでもらえるゲームとかいうものを,金科玉条のように守ってきた日本のゲーム業界。それが生み出した成果は確かに素晴らしいものなのかもしれないが,自分の周囲を取り巻く猥雑な現実になんの関わりもないゲームばかりという環境は,ある意味無菌室のように危ういと,時折思うことがある。
世の中の混沌をそのままパススルーするような不謹慎ゲームが,日本にはもっとあってよいと思う。昔は「ジャパン・バッシング」などという政治ゲームもあったんだし。それに政局の混迷も政治不信も,まったく他人事ではないのだ。