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「インフラ世界一」の次を模索・韓国新政権のIT政策構想
1994年に設置された韓国の情報通信部は、IT発展の初期には強力な推進役として機能した。しかし、IT産業が成熟期に入ったいま、「世界一のブロードバンドインフラ」の先にあるものを実現するための妨げとなっているとの批判もあった。次期イ・ミョンバク政権に向け省庁再編の駆け引きが進む韓国では、IT行政の次の枠組みについて、いろんな噂が駆け巡っている。(IT先進国・韓国の素顔)<関連記事:波紋広がる「情報通信部」廃止・韓国新政権のIT政策構想(上)>
■コンテンツ行政含む再編も視野に
イ・ミョンバク次期大統領が情報通信部の解体を強く望んでいる理由は「韓国のデジタル産業はコンテンツ不足。インフラばかりで活用度が低い」という危機感からだ。ソフトウエアの競争力は低く、劣悪な環境に立たされた中小ITベンダーなど問題は確かに多い。「インフラだけは世界一と自負していたが、それも日本に先を越されようとしている」とイ・ミョンバク次期大統領は訴える。
省庁再編の方向性については、「放送と通信とコンテンツはネットワークを基盤とするサービスになっているので一つの組織で管理する必要がある。『情報通信部はネットワーク』『文化観光部はコンテンツ』と分断されたままでは効率的な成長は見込めない」と、時代に合わせた組織の統廃合を見すえている。文化政策についても、「文化は芸術としての価値にとどまらず、産業的価値を大事にしなくてはならない」と、産業政策との連携を重視する考えも示している。
実は情報通信部の解体後の政策については現在のところまだ複数の案があるようだ。次期政権は放送・通信・コンテンツの融合を優先させようとしている。そこで、「IPTVを中心に産業を活性化するため放送委員会と文化観光部の権限が拡大されるだろう」との見方もある。一方、ITはこれからバイオやナノテクと融合し、部品素材産業とも連携してくる。「だから、科学技術部と産業資源部を一つにした科学産業部を新設し、新たな産業領域に重点を置くのではないか」などの憶測も飛び交っている。
放送と通信の融合に関して次期政権は、放送委員会と情報通信部に二元化されていた機能を一つに束ね、さらにコンテンツまでも一つの組織内で管理した方が効率的と考えている。融合を加速するため、新聞の放送兼営を許可するという方針も発表した。しかしこれだけでは朝鮮日報や中央日報といった一部新聞財閥をより巨大化させることにつながり、マスコミの独立性が保てないなどと反発が大きい。そこで、コンテンツと新聞の規制を取り締まっていた文化観光部に放送政策も任せてしまうのがよいと考えたようだ。
ただそうなると、文化観光部はスポーツ、観光、国政広報、コンテンツ、放送、新聞、通信までも掌握する巨大な組織になってしまい、逆に問題が発生する可能性が出てくる。放送と通信の融合に関してはやはり情報通信部の提案通り文化メディア部を作って区別した方がよいとの意見もあり、文化観光部自身、放送に関しては文化メディア部に分けた方がよいとして同じ内容を次期政権の準備組織である大統領職引受委員会に提案している。
放送行政を担当している放送委員会に権限を集中させるべきという意見もある。放送と通信の融合に関する政策・規制、放送映像・広告、新聞政策権を放送委員会に任せ、政策と執行を一元化する。文化観光部とはコンテンツ政策で協力し、産業資源部とは端末政策で協力する関係にすれば、放送の独立性を保てるという意味だ。
■スリムな政府に必要な組織の形とは
次期政権の方針などについて記者会見するイ・ミョンバク氏=17日、ソウル〔共同〕
情報通信部のような独立した省庁が必要なのか、それよりは機能別にインフラ、技術開発、放送と通信の融合、端末といった具合に分けて産業資源部や文化観光部に振り分けたほうがいいのか。次期政権は情報通信部のほかにもすべて機能を中心に組織を改編し、実務的でスリムな政府を構成しようとしている。イ・ミョンバク次期大統領は何度も「政府は最小限の調律機能で十分、最大限市場の自律に任せたい」と強調している。規制中心の政府政策を調律、調整役としての政府に手直しするための基本的な枠組みは当選前から用意されていた。
市場競争を重要視するイ・ミョンバク次期大統領は政治と経済の癒着を防止するという意味で、退職した公務員を国営企業の社長や役員として天下りさせることも禁止する方針だ。国営企業の経営も株だけ政府が持ち、経営は民間出身者に任せるシンガポール方式を導入したいとしている。
日本でも情報通信政策が総務省と経済産業省にまたがっているように、韓国でも情報通信部と産業資源部の業務は重なっている。そのため、ノ・ムヒョン政権が始まる直前にも情報通信部はもういらないのではないかという議論があった。「融合」が始まれば、迅速な意思決定より利害関係者の意見を聞いてうまく調整できる機構が必要となり、より透明な政策決定が重要になる。
行政の透明化が進めば、個別の政策を担うのが必ずしも政府組織でなくてもよくなるだろう。例えば事業化に向けた準備が進んでいる途中のIPTVに関して、イ・ミョンバク次期大統領は「情報通信部がなくなってもIPTV事業に悪い影響を与えないように最優先で処理する」と強調した。引受委員会はIPTVに関して産業資源部が関連法を作り、放送と通信の融合を担当する統合機構を作る方案を検討しているという。「何々部」という省庁の格にこだわりいつまでも組織がまとまらないと、景気回復どころかIPTV関連産業のドミノ倒しが始まるかもしれない。
波紋広がる「情報通信部」廃止・韓国新政権のIT政策構想(上)− IT PLUS 「IPTVは宙に浮いてしまう可能性」
http://www.asyura2.com/07/asia10/msg/253.html