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12月28日(金)
「日本国民の最大関心事」と騒がれた、あるいは「日本外交の最大課題」と位置づけられた拉致問題は、今年も解決をみないまま終わろうとしています。昨年9月に拉致被害者家族会や「救う会」が待望した対北朝鮮強硬派の安倍晋三政権が発足した時は、「拉致問題解決内閣」と称されるほど期待が高まりましたが、結局のところ拉致問題では何の成果も挙げられないまま、政権の座から去ってしまいました。
その安倍政権の外交を支えてきた谷内正太郎外務次官も今度の人事で退任します。安倍さんと同じく対北朝鮮強硬派で知られる谷内次官は内閣官房副長官補から05年1月に事務方トップの外務次官に就任して以来、拉致問題では陣頭指揮を執ってきましたが、これまた拉致問題では何の業績も残せないまま、外務省を去ることになります。
谷内次官の後任には藪中三十二外務審議官が就任するそうです。小泉政権下でのアジア太平洋州局長の頃に6カ国協議の首席代表を務めたことで知られています。また、外務審議官のポストには現在6か国協議の首席代表を務めている佐々江賢一郎アジア大洋州局長が、そして佐々江氏の後任には過去に日朝交渉で日本側代表を務めたこともある斎木昭隆駐米公使が昇格、昇進するそうです。
3人とも、拉致問題をめぐる北朝鮮との交渉では中心的な役割を担ってきたことからメディアは「任期中の『拉致問題決着』を目指す福田首相が、対北朝鮮政策を最重視した布陣とみられる」(毎日新聞)「外務省の主要ポストに北朝鮮問題に精通した人材を配置することで、拉致問題をはじめとする懸案の解決に本格的に取り組む狙いがある」(朝日新聞)と分析しておりました。読売にいたっては「藪中氏はアジア大洋州局長を務め、拉致問題など対北朝鮮交渉の最前線で尽力した実績が評価された」と書いていました。
いずれも北朝鮮との交渉経験が豊富なことは紛れもない事実です。しかし、これまでに拉致問題で一体どのような「実績」や「業績」があったのでしょうか。金正日政権に拉致を認め、謝罪させ、少なくとも5人を取り戻したのは、3人ではなく、彼らの上司であった田中均外務審議官(当時)でした。「売国奴」扱いされながらも、「憂国」の念から5人の家族を帰国させるため訪朝し、そのレールを引いたのも田中審議官でした。
田中氏は結局、家族会や「救う会」から猛烈な非難を浴び、一部メディアから「売国奴」扱いされ、右翼からは命まで狙われ始末でした。最後は、次官になれず外務省を去りました。実に損な役割を演じることになりました。そのような前任者を見れば、誰も火中の栗を拾いたがらないものです。誰が好き好んで、君子危うきに近寄りますか。ですからその後、北朝鮮との交渉では「テーブルを叩いてきた」「声を荒げた」「席を立った」と、家族会や「救う会」に報告さえすれば批判されないで済むとの風潮が生まれました。その結果、「拉致問題進展ゼロ」の状態が3年も続いています。
対話による解決にシフトした福田政権の下で「新トリオ」による外交・交渉手腕が改めて問われることになりますが、金正日政権の打倒なくして、拉致問題の解決はないとの立場から妥協を許さず、さらに制裁と圧力の強化を求める家族会との狭間でどうやっていくのか、興味津々です。家族会や「救う