★阿修羅♪ > 戦争86 > 912.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
宗派間紛争が激しさを増すなどして悪化するイラクの情勢を、「内戦」と認定すべきか否かをめぐる議論が米国で活発化している。論争が熱を帯びるのは、定義の仕方次第で、ブッシュ米政権のイラク政策への評価と今後の政策の行方に大いに影響してくるからだ。(外信部 佐藤貴生)
「慎重に考察した結果、用語の変更が正しいと決断した。武装し軍隊と化した各派が政治的計画のため戦っていることは内戦と特徴付けられると判断した」。米3大ネット局のひとつ、NBCテレビは11月27日、こんな見解を打ち出して、今回の論争に火を付けた。
スノー米大統領報道官はこれに対し、「(イラクの現状は)一定地域を支配することより民主主義の基盤を揺るがすことを狙った宗派間の暴力であり、2つの勢力が領土や主権を争い合う内戦とは違う」との理由を掲げ、直ちに反論した。
◇
世界史を少しさかのぼれば、17世紀中葉に英国で国王と議会の勢力が争った清教徒革命▽奴隷制の存廃などをめぐる19世紀半ばの米南北戦争▽20世紀初頭、ロシア革命後に起きた共産勢力の赤軍とそれに抵抗する白軍との戦い▽1930年代に共和国政府とフランコ将軍率いる右派の間で展開されたスペイン内戦▽70年代から90年にかけてイスラム、キリスト両教徒間の武力衝突を軸に続いたレバノン内戦などが、典型的な内戦として挙げられよう。
いずれも、「シビル(国内の)・ウォー(戦争)」という英語の表現通り、確かに一国の領土内で国内勢力により戦われている。さらに共通しているのは、指導者に率いられ組織だったおおむね2つの勢力が明確な大義名分を掲げて、政治権力を争った点である。
◇
今のイラクは、領土内で紛争が起き、イスラム教スンニ派武装勢力と、国際テロ組織、アルカーイダ系の外国人テロリストたちによる米軍、イラク政府、民間人に対する攻撃から、シーア派とスンニ派との暴力の応酬に比重が移ってきているから、「国内の」という規定にはほぼ当てはまる。
では、「戦争」の目的や参戦組織の実態はどうか。
シーア派勢力の場合、サダム・フセイン体制が倒れてから手にした権力の分け前を守り、あわよくば増やそうという意図とみられ、別掲の図にあるサドル師率いるマフディ軍のように組織も指導者も明確になっている。これに対し、スンニ派側は目的も組織も指導者も不明で、条件をすべて満たしているとは言い難い。
従って、イラクの現状は代表的先例の特徴に厳密に沿った「狭義の内戦」には必ずしも当たらず、スノー報道官にひとまず軍配が上げられそうである。ただ、とらえ方は以上、見てきた以外にもさまざまあって内戦か否かの判定は難しい。
はっきりいえるのは、内戦と定義されれば、ブッシュ政権がイラクをモデルに中東民主化を進めると目標を設定し直したイラク戦争は失敗したことになり、外からは手が付けられないとのイメージが定着して、駐留米軍撤退を求める国内圧力が一段と強まることである。同政権がイラク情勢を「内戦」呼ばわりされるのを何としても避けたい理由は、まさにそこにある。
(2006/12/14 10:04)
http://www.sankei.co.jp/kokusai/usa/061214/usa061214001.htm