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米国を戦争へと追いやったスパイたち
CIA情報を二次解釈し、サダム・フセイン政権転覆を正当化する目的でワシントンに創設された「影の右翼情報組織」についてジュリアン・ボーガー特派員が報告する。
ジュリアン・ボーガー特派員
ガーディアン紙(英国)
2003年7月17日
ジョージ・テネットCIA長官が昨日ニジェール・ウラン疑惑について上院で行った非公開の証言から、まったく機能しなくなった米国情報システムが戦争への突入を助長したということがますます明らかになった。
これはブッシュ政権の二つ目の決定的情報解析ミス。ただ9.11を未然に防げなかったのは主に組織上の脆弱さによるものだったが、今回はホワイトハウスが情報ソースを政治的に利用するために歪曲したと非難されているので、その痛手はずっと大きい。
ブッシュ政権の元官僚、防衛・諜報筋によると、ドナルド・ラムズフェルド国防長官を中心とする政権上層部は国防総省内に「特殊作戦室」(Office of Special Plans=OSP)を作り、チェイニー副大統領など政権内保守強硬派の保護のもと、CIAが入手した生情報を独自に解釈しているという。公式行政手続きを踏むことなく、議会のチェックも受けず、CIAや国防総省内の公式情報部門さえも排除してホワイトハウスに直接強い影響を及ぼすOSPは“影の政府”と言ってもいい存在。イラク侵攻正当化の過程ではCIAと国務省を押し切る力を見せた。
テネット長官はフセイン政権がアフリカでウラン購入を企んでいたとする裏付けのない大統領発言に関して自分の責任を公式に認めたが、同時にCIAが戦争正当化への圧力を政権筋から受けていたことを明らかにした。具体的にどこからどの程度の圧力を受けていたかが、ブッシュ大統領再選に影を落としかねない。米兵死者が日に日に増えつづけ、戦争突入の真の理由が明らかになるにつれて、2004年の勝利はもはや確約されなくなっている。
ホワイトハウスの新報道官、スコット・マクレラン氏は昨日こうした批判に対し「政争のために歴史を書き換えるべきでない」として反撃したが、民主党上層部は依然、政権の責任を追求する構え。
大統領がもっとも信頼する助言者、チェイニー副大統領は“影の政府”の有力人物。副大統領はたびたび自らCIAに赴き、ルイス・リビー首席補佐官にも代理訪問させて、サダムの脅威についてもっと「積極的な」解釈をするように圧力をかけた。こうした副大統領からの異例の圧力は、CIA官僚に「適切な」解釈を促した。
元共和党幹部のニュート・ギングリッジ氏もCIAを頻繁に訪れた。9.11以降、国防総省の「助言者」、国防委員会メンバーとして再登場したギングリッジ氏は、公式の肩書きをはるかに越える影響を政権に及ぼしている。イラク開戦前、国防総省、特にOSPの使者として、CIA本部に出入りし、大きな圧力をかけた模様。
9.11直後、ラムズフェルド長官とウォルフォウィッツ副長官はイラクを対テロ戦争に巻き込もうとした。既存の諜報機関がイラクとアルカイダを結び付ける具体的な情報を提供できなかったとき、OSPがなお「念入りに」情報をひも解く任務を帯びて登場した。
元海兵隊将校でチェイニー氏の元補佐官のウィリアム・ルーティ氏は現国防次官で元レーガン政権スタッフのダグラス・フェイス氏のもとで実務を総括している。
OSPは膨大な生情報を入手できた。その一部は、全世界の諜報員からもたらされる報告に目を通し、信頼できない情報を振るい落とすことを任務とする「報告官」から得たもの。チェイニー氏やギングリッジ氏などタカ派の圧力を受けて、報告官はどんなに荒唐無稽なものでも削除しなくなったという。また、CIAや国務省筋が信頼に値しないと判断していたイラク国民議会その他反体制派からの無数の「情報」さえ、OSPは吸い上げた。
フルタイム・スタッフ10人未満では膨大な資料を処理しきれなかったOSPは、弁護士や議会スタッフ、果ては右翼シンクタンクメンバーなど、多数の人材を臨時コンサルタントとして雇い入れた。そのほとんどが情報分野の未経験者。しかも一時100名を越えた臨時スタッフは正式登録なしに職務規定もなく雇われたので「仲良しグループで部屋を埋めただけ」とも揶揄された。
国務省情報部門の幹部職員グレゴリー・ティールマン氏は言う。「彼らは都合のいい情報だけを取り上げた。すべてが異常だった。国防長官が巨大な諜報局を思いのままにしていた」
OSPの活動内容はCIAや国防総省本体にとってもベールに包まれていた。OSPは軍部情報部門とも他省庁の情報部門とも情報を共有しようとせず、通常の情報解析の枠外で勝手に解釈した内容を、他部署専門家のチェックを経ずに直接、国家安全保障委員会や大統領のもとに届けた。
OSPは、イスラエル情報機関モサドでは否認されるような極端なサダム脅威論をブッシュ政権に提供するために、シャロン首相の執務室内に設けられた非公式情報部門と緊密な関係を結んだ。外国人であるイスラエル人は通常の方法では国防総省に出入りすることは許されなかったが、フェイス氏が招き入れれば、何ら書類に記入する必要さえなかった。こうした情報交換のおかげで、フェイス氏その他新保守主義者たちとイスラエルのリクード党の長期的関係が続いたのだ。
1996年、フェイス氏とリチャード・パール氏(現在は国防総省内の有力人物)の両者は当時のリクード党リーダー、ネタニヤフ氏の補佐官をしていた。彼らは「帝国の安全を守る戦略」と題する政策文書の中で、イスラエルが真に安全になるには、サダムが抹殺され、シリア、レバノン、サウジアラビアとイランのそれぞれの政権が転覆するか不安定にならなければならないと書いた。
「イラクで大量破壊兵器が発見されないのはシリアに密輸されたからだ」という噂が米国のマスコミで広がったが、それはイスラエル首相から出た話だった。このことほど、イスラエルの影響力を示すものはない。
OSPはごった煮情報や噂やデマを集めて「完成品」をひねり出し、ホワイトハウスの固定読者に提供した。主な顧客はチェイニー氏、スティーブン・ハドリー氏だ。ハドリー氏は国家安全保障会議ではチェイニー氏の同志でライス大統領補佐官の副官も務める。かれらはかれらで一部の内容をメディアに漏らし、一部はCIAと国務省の分析官に追跡調査を迫るために使った。
テネット長官の議会証言で昨日巻き起こった大きな疑問は、この「影の情報操作」は国家のチェックをくぐり抜けられるのかということと戦争突入を許した責任を誰がとるのかということである。
再選を控えて、ブッシュ大統領は問題の深刻さを認める代わりに開き直ることもできる。ただその場合、情報担当官たちの信頼を再び勝ち取るのは至難のわざとなる。そして、ホワイトハウスの政策決定の基礎となるべき情報が確保されなければ、世界唯一の超大国が盲目になって「真の脅威」と「亡霊」の区別もつかないまま、前のめりによたよた歩きをすることになるかもしれないのだ。
(抄訳=今村和宏/TUPメンバー 「TUP Bulletin」HPより)
原文:The spies who pushed for war
http://www.guardian.co.uk/Archive/Article/0,4273,4714031,00.html