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http://www.bund.org/opinion/20061015-1.htm
日米韓 すすむ軍事再編
今度は日本がサウスコリアになる
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自主国防進める盧武鉉政権
沼田昭介
今、韓国では国論を二分する議論が行われている。焦点となっているのは在韓米軍の戦時作戦統制権の返還問題だ。9月の米韓首脳会談では、統制権を返還することで合意したが、韓国内部での議論は今も続いている。統制権の返還を主張する盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領に対し、元軍幹部や国防相経験者らは「返還要求は韓米関係の崩壊を招き、北朝鮮への抑止力を低下させる」と批判し続けているのだ。
作戦統制権とは大統領や代行者の指揮を、現地の軍司令官が作戦として実施に移す権限をさす。韓国は朝鮮戦争開始直後の1950年に軍の統制権を米軍に委譲。1994年に平時の統制権は返還されたが、戦時の統制権は米軍が保持したままである。
盧大統領はこの状態を変えるべく、2003年の就任当初から「自主国防」と「戦時作戦統制権の返還」を重要政策の一つに掲げてきた。「作戦統制権こそ自主国防の核心」であり「自主国防こそ主権国家の要」だとの主張だ。
尹光雄(ユン・グァンウン)国防部長官は、今年8月17日の韓国国会の国防委員会では、「韓国に作戦統制権がないために北朝鮮が韓国との直接対話を拒んでいると判断しているのか」と質問されたのに対し、「韓国軍に対話の当事者としての資格がないと(北朝鮮側が)主張しているのには理由があると思う」と答えている。
盧政権は大国に左右されずに自分たちの力で分断を解消したいと考えている。そのために北朝鮮と直接交渉したいのだが、北朝鮮は統制権を理由に、韓国を正式な交渉相手と見なさないのである。「何の実権も持てないでいる傀儡勢力が朝鮮半島の平和保障体系の樹立といった重大な問題を口にするのは言語道断」(労働新聞・1998年と2000年の論評・社説)という具合だ。盧政権にとって統制権の返還は、北朝鮮と交渉し、朝鮮半島の平和構築を担う「自主的な政府」になるために不可欠の政策なのだ。
しかし統制権の返還プロセスには、大幅な国防費の増大といった問題が伴う。05年9月、韓国政府は自主国防の具体案である「国防改革2020」を公表したが、兵力を68万人から50万人に減らす一方で、戦闘力は軍の近代化で倍増させるという方針だ。このため07〜11年の間に151兆ウォンの国防予算が必要だとしている。
これは2006年の国防予算を、毎年9・9%ずつ増やし続けることを意味する。導入する兵器は地対空ミサイル、空中給油機、大型輸送艦、新型潜水艦、空中警戒管制機、イージス巡洋艦等々である。独自の情報収集能力を構築するために、今年7月に打ち上げたアリラン2号に続き、自前の偵察衛星を打ち上げる計画もある。韓国内ではこうした軍事予算の増大に対し、負担増と効果の程に懸念の声があがっているのである。
そもそも統制権の返還問題が浮上する前に、米政府はすでに在韓米軍の縮小を決めていた。03年に約3万6000人だった兵員数を、08年までに2万5000人に減らす計画である。統制権返還後はさらに追加削減されるとも言われている。
その場合、統制権を返還することで、逆に米軍が北朝鮮を攻撃しやすくなるといわれる。趙元国防部長官は9月4日付けの東亜日報への寄稿では、1994年の朝鮮危機では「作戦権の共同行使者である韓国が反対したために米国による一方的な攻撃が困難となり、米朝が妥協するきっかけとなった」と述べている。
しかも統制権の返還に対して、米国は韓国の提示した2012年より3年早い2009年の返還を韓国政府に伝えている。米軍は出血を強いられる地上軍を減らし、前線に韓国軍を配置させようとしているのである。そのための基地再編も進んでいる。米側の負担が少なくなり、より先制攻撃しやすい態勢になりつつあるということだ。
米側は統制権移管による対北防衛義務の軽減で、在韓米軍を他地域に派兵する「戦略的柔軟性」を高める方針なのである。それは具体的には朝鮮半島有事の際には米国が在韓米軍以外からの65万人の兵力投入で、69万人を集結するというものだ。韓国国防白書(2004年)で明らかとなったが、その場合の供給先は後方支援基地としての日本以外には考えられない。
もともと自衛隊の発足は朝鮮戦争がきっかけである。日米ガイドライン作成のきっかけは94年の朝鮮半島危機だ。ミサイル防衛の導入は北朝鮮のテポドン発射を契機にはじまっている。この先、日本のニュー・サウスコリア化は進み、韓国の軍事政権が担った役割を、日本が担うようになるのである。つまり韓米同盟の低下と日米同盟の強化は補う形で進行しているのだ。
それ故、盧政権も日米同盟強化を警戒している。「自主国防」は掲げながらも、一方では韓米同盟が崩壊することを抑えようともしているのである。北朝鮮圧力を強める日米をおさえるためには、韓米同盟が必要になってしまうという矛盾だ。
そうした意味で盧政権は、米国に首根っこを押さえられているともいえる。米軍移転の平澤基地の拡張などを強固に進め、イラクの韓国軍駐留を継続しているのも、そうしたジレンマのあらわれなのだ。
だが日本は、盧政権が進めようとしている政策を愚かだと言えるだろうか。対米追随で外交的にも思考停止した日本のあり方は、まさに虎の威を借る狐である。実際上日本こそが米国の傀儡政権だ。
韓国で行われている議論は決して他人事ではない重みをもっているのである。米国から自立するためには、自主国防力を高めなければならないという以外の選択肢が考え出されなければならないのだ。
(韓国ウォッチャー)
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ミサイル防衛システムで安全は確保されるのか?
星野 歩
7月5日の北朝鮮によるミサイル発射をうけ、読売新聞が行った世論調査によれば、北朝鮮への制裁措置を支持する人が92%(支持しない5%)、アメリカとのミサイル防衛の整備を急ぐべきと答えたのは64%(そう思わない24%)に上るという。一方、世界60カ国で調査された「世界価値観調査2000」によると、「もし戦争が起きたら国のために戦うか」という設問に対し「戦う」と答えた日本人はわずか15・6%と、調査した60か国中最下位だった。また、自国の軍隊(自衛隊)を「非常に信頼する」と答えた日本人はわずか8・5%で上から43番目だったという(朝日新聞06年8月6日)。
朝日新聞では、不戦を誓った日本なのだからこの結果を「情けない」という必要はないと結んでいるが、そうだろうか? 北朝鮮や中国、韓国を敵に回すような言動をしながら、その結果を引き受ける気概はなく、全てあなた任せという無責任な姿勢が見えないだろうか。
そもそもミサイル防衛といっても、具体的な中身について、どれだけの人が認識しているのだろうか? かく言う私も6月に訪れた沖縄で、米軍嘉手納基地に地対空誘導弾パトリオット3(PAC3)が配備されるというニュースに接した際、私の地元埼玉県入間基地にも配備される予定であることを初めて知った。自宅がPAC3の射程距離15qに入っていると知ったとき、それが自分の安全を意味するのか、危険を意味するのか考えてしまった。北朝鮮のミサイル発射を喜ぶかのように、ミサイル防衛の整備が大手を振って進められようとしているが、それはどういう結果を導くのか。
防衛庁は07年度の概算要求でミサイル防衛関連予算を、06年度の約5割増の2190億円とする方針を固めたという。1発約5億円するPAC3の購入を前倒しで増やすためだ。07年度予算でPAC3が導入されるのは、全国に6つある航空自衛隊の高射群のうち、まず首都を守るということで入間基地(埼玉)と霞ヶ浦(茨城)習志野(千葉)武山(神奈川)各基地の高射隊である。また、来年度予算には海上発射型の迎撃ミサイル(SM3)が発射できるよう、イージス護衛艦1隻の改修費も計上。4年間で約1千億円かけて4隻全てを改修するという。
現在アメリカがアメリカと同盟国を守るとしてすすめようとしているミサイル防衛システムは、早期警戒衛星(アメリカ頼み)が発射を探知、イージス艦からスタンダード・ミサイルSM3(1発20億円)で迎撃。それでもダメならPAC2(射程距離約百数十q)、それでも打ち落とせなかった場合「最後の砦」としてPAC3で迎撃するというシステムだ。
PAC3の射程距離は15〜30qほどといわれる。日本中をカバーしようとすれば、何百基も必要となる。PAC3はアメリカのロッキードマーティン社が作っている。08年度には日本でもライセンス生産できるようになり、三菱重工業が受注するだろうといわれている。SM3は現在日米で共同研究がすすめられている。いずれにしても莫大な予算が必要であり、日本からアメリカに次々金が流れていくのである。
そもそもPAC3は、ピストルの弾をピストルで打ち落とすようなものと揶揄される。1発5億円もするものを、そんなあやふやなものに費やしていいのかと誰もが思うだろう。
しかもあたらなかった場合はどうなるの? という素朴な疑問がわく。外れた場合は自爆し、命中した場合でも金属片が地上に落下する程度というが、命中したとして、相手方の弾頭に生物化学兵器や核兵器がつけられていれば、どちらにしろばらまかれるのである。
なおかつ今回のテポドン発射事件をみても分かるとおり、その情報はアメリカからの提供を待たざるを得ない。ますますアメリカとの軍事一体化をすすめざるを得ないのだ。そこで参考になるのがカナダの選択である。
2005年2月24日、カナダはアメリカが進めるミサイル・ディフェンスからの離脱を表明した。その10日前の2月14日のアメリカによる迎撃ミサイル実験失敗をうけてのことだった。カナダは冷戦時代からアメリカと一体化した防衛体制を組んできており、2002年12月にブッシュ大統領が呼びかけたミサイル防衛に当初は参加を表明していた。しかし、イラク戦争への参加拒否を表明するなど、カナダ国民が反対しはじめたのである。
05年2月に行われた世論調査の結果、54%の国民がアメリカの呼びかけるミサイル防衛計画への参加に反対を表明した。理由として、「その防衛システムは稼動しない」「新たな軍拡競争に拍車をかける」というものだが、アメリカ政府が無理やりカナダを参加させようとする方向性に不安を感じているからだと調査会社は分析している。
そうした流れに対して「BMD(弾道ミサイル防衛)システムは、弾道ミサイル攻撃に対して我が国国民の生命・財産を守るための純粋に防御的な、かつ、他に代替手段のない唯一の手段であり、専守防衛を旨とする我が国の防衛政策にふさわしいものであることから、政府として同システムを整備することとする」というのが、03年12月の日本の閣議決定である。本紙1221号でDo Yoosa氏が日本社会の実態として「自分達は相手に照準を合わせた攻撃体制をとっているのに、いざ自分達に照準が合うとヒステリックに反応するという無責任性というか、鈍感性」を指摘しているが、まさにその通りの対応だ。
(グリーンアクションさいたま)
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アメリカ軍に一体化される自衛隊
戸川まさえ
2006年6月20日、復興支援は終了したとサマワの陸上自衛隊に対して撤収命令が出された。1月後の7月20日には第1陣が帰国した。
だが、今なおイラクで任に当っている航空自衛隊について、報道で取り上げられることはほとんどない。03年の12月にイラク特措法(「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」)に基づいて自衛隊が派遣されてから2年半。相かわらず航空自衛隊は帰国を許されずに、逆に輸送業務を拡大して任務に就いているのだ。
空自の輸送任務は当初は、クウェートからイラク南部のタリル空港への物資輸送だった。今やそれはバグダッド空港、北部のアルビル空港などへと拡大している。輸送地域の拡大に伴い、C130Hは、ミサイル探知機、誘導ミサイルを撹乱させるフレア、コックピット周りの防弾板、防弾フォームなどの装備を取り付けている。政府は国連の物資を運ぶと言っているが、実際は「国連」という名の米軍や軍事物資の輸送だ。これらの輸送は誰が見ても兵站活動であり、軍事活動に他ならない。
派兵以来、私は小牧基地への抗議や監視活動を続けてきたが、輸送業務を一手に引き受けている航空自衛隊小牧基地には、国内各地の航空自衛官が集まってくる。これまで200人が派遣され、小牧基地隊員の中には3回、4回と、イラクへの派遣を繰り返している隊員も存在する。「自分ひとり拒否しても、他の誰かが行かされる」と考えている隊員は多いのだ。
イラク以外にもペルシャ湾岸に海上自衛隊が恒常的に派遣されている。PKO活動は自衛隊にとってはもともと本来業務ではないのだ。自衛隊法100条の雑則業務として行われているだけである。イラク特措法などはそのための時限立法だが、今年9月に1年間延長された。
しかも、05年に出された政府答弁によれば、陸上自衛隊のイラクでの活動の支援のために04年1月から05年10月までの間に車両134両、武器・弾薬及び武器関連物資約120トン、その他の物資約2900トンを民間航空会社が輸送していた。また今年1月、第7艦隊旗艦ブルーリッジが名古屋港入港。2月室蘭にチャンセラーズとブルーリッジ、鹿児島にJSマッケーン、長崎にステザム、4月には秋田にステザム、大阪にカーティスウィルバー、5月には和歌山に第7艦隊所属のカウペンス、佐世保に空母リンカーン、宿毛にラッセル、清水にシャウプが入港。7月には空母キティホークとイージス巡洋艦カウペンスが小樽港に入港し、イージス駆逐艦ジョン・S・マケインが鳥取県の境港へ入港した。こうした民間港は、本来は港湾法によって港湾管理者である自治体が使用権限を持っているものだ。99年に政府が配布した「周辺事態法9条の解説」という冊子にも、有事の時でも米艦船が地方自治体の管理する港湾施設を使用しようとする場合には、「通常と同様、地方公共団体(港湾管理者)の許可を得る必要がある」と明記されている。港湾管理権は地位協定5条に優先するのだ。
しかし今やそれは無視され、米艦船入港の既成事実化がどんどんはかられているのだ。
2004年1月に『琉球新報』がスクープした外務省機密文書「地位協定の考え方」(外務省条約局とアメリカ局が1973年4月に作成)の第五条の一「施設・区域外の港・飛行場からの出入国」には、「港湾施設の使用に関する合同委員会の合意の中には、米軍が優先使用施設・区域の使用を希望する際は、使用に先立ってすみやかに日本側管理機関に通告する℃|の規定がある」「港の優先使用施設としては現在は、小樽、室蘭港がその対象として合意されている」と書かれている。日本政府は、いまなおこの機密文書「地位協定の考え方」の存在を否定しているが、今やあらゆる条文は無視され、日米軍事一体化の既成事実だけが積み重ねられているのだ。
(エコ・アクションなごや)
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(2006年10月15日発行 『SENKI』 1226号4面から)
http://www.bund.org/opinion/20061015-1.htm