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安倍政府に金と肉弾を要求
破綻露呈するブッシュ政府 2006年10月2日付
ブッシュ米政府が「テロ撲滅」を掲げてやったアフガニスタンとイラクでの侵略戦争は、すでに4000億j余りの戦費を投入、2900人余りの米兵の戦死者を出した。両国ともに反米武装勢力の抵抗斗争が大きく発展するなかで、米軍はじめ外国侵略軍の兵員不足が深刻になり、際限ない戦費支出がアメリカの財政赤字を激増させている。そんななか、米情報機関のデータをもとにした「国家情報評価(NIE)」が漏えいし、反米を掲げたジハード(聖戦)が世界に拡散したとした。「対テロ戦争で米国も世界もより安全になった」としたブッシュの言い分が覆され、アメリカ支配層のなかでもブッシュ批判が噴出、醜い責任のなすくりあいをやっている。このブッシュ政府の破たんが、安倍政府を登場させ、対日要求をしている根拠となっている。
イラクでもアフガンでも窮地
イラクには現在、14万7000人の米兵が駐留しているが、首都バグダッドの米軍司令部や米大使館、かいらい政府のある地域の安全すら守れなくなっている。米中央軍のアビゼイド司令官は「内戦の激化」を理由に米軍の現状維持を求めていたが、先日そのウソも暴露され、実は米軍への直接武力攻撃が日に日に強まっていることが明らかにされた。
イラク占領当初には、米軍13万8000人と英国以下36カ国計2万8000人の多国籍軍が駐留していた。だが、ブッシュ政府のイラク戦争のウソがあばかれ、各国で即時撤兵世論が高まるなかで、スペイン、イタリア、ウクライナ、オランダなど1000人規模の派兵をしていた国が相次いで撤退、英国も削減を始めた。
反米抵抗勢力の矢面に立たされた米軍は、予備役や州兵動員、部隊交代期間の延長、さらに民間軍事会社要員や囚人部隊で補充してきたが、それも限界となった。最近でも、陸軍部隊の1部の帰国を1カ月ほど先延ばしし、交代する部隊の派遣を同程度の期間前倒しすることで数1000人単位の一時増員をはかるなど、苦肉の策をとっている。
深刻なのは新兵募集がままならなくなったことである。この1年、米軍は新兵3万人を募集するとしてきたが、陸軍は募集目標の86%、予備役陸軍は79%を達成したにすぎなかった。昨年、陸軍は新兵8万人の募集で退役する老兵と交代させようとしたが、失敗した。若者のあいだでは、イラク派遣米兵の戦傷者が急増しているため、応募者が服役後に保証される大学への無料入学も1つしかない命にはかえられないという声が強まった。
現在、イラク戦場に2万人近くの婦人兵士が派遣されているが、すでに数10人が戦死、数100人が負傷、多くが退役を求めている。婦人兵士の全体に占める比率は過去4年間に減りつづけている。
黒人は米軍で23%を占めており、人口比の2倍を占めていたが、ここ数年新兵応募率が減少している。5年前には応募率23・5%だったのが、「9・11テロ事件」後は下がりつづけて、現在では14%未満となった。黒人のあいだで、「不正義の戦争」に反対する空気が高まったことと、黒人や有色人種は第1線の兵士や下級指揮官にされ、死亡率が白人より多いことが普通だったからである。
新兵募集も行き詰まり
新兵募集が行き詰まったため、ブッシュ政府は2003年から2つの民間会社と募集契約を結び、1万5000人を集めた。新兵1人を獲得すれば5700jの報酬をやるという取引である。最近では、連邦最高裁に大学が連邦資金援助とひきかえに、軍部の募集要員が校内に入って勧誘できるとの判決まで出させている。
アフガニスタンでも、旧タリバンなど反米抵抗勢力が力を増すなかで、米軍とNATO軍4万人で対応できなくなり、NATO軍最高司令官が8000人増派を要求している。だが、欧州部隊でポーランドとルーマニアが応じただけで、ほかは渋っている。シラク仏大統領は、NATO軍はタリバン勢力などの「掃討」作戦に参加すべきでないと公言している。
他方、戦費の際限ない増額もアメリカやNATO諸国に、重大な負担となっている。アメリカでは、イラクでの毎月の戦費は約60億j、アフガンのそれは約10億jにのぼり、水害やその他災害に使う予算の15倍となっている。
米議会は9月29日、07会計年度(06年10月〜07年9月)の国防予算約4480億j(約50兆8600億円)を通過させた。このうちイラク、アフガン向け戦費の700億jは半年分で来春には補正予算が組まれる見通しだ。イラクなどの戦争遂行のための支出は累計で5000億jを突破することとなる。国民の反発をかわすため、この国防歳出法案に「イラクでの恒久的駐留」につながる軍事施設建設への予算執行を認めない条項を盛り込まざるをえなかった。
ライス米国務長官は9月26日、安倍内閣発足にふれて、5月の米軍再編合意によって「同盟の質を根本から変え、同盟を現代化した」と語りイラク、アフガンの対テロ戦への協力について「強化された防衛責任を日本は遂行している」とのべた。2000年に、対日戦略文書「アーミテージ・レポート」を発表した前国務副長官アーミテージは、10月に発表する同「レポート2」でアメリカとの情報共有の促進や外洋での海軍戦力強化を進言するといっている。
「同盟の現代化」とは、米軍指揮下で自衛隊を海外にいつでも派遣できるようにするという日米両軍の統合であろう。「強化された防衛責任」とは、安倍内閣がインド洋への自衛隊派遣やイラクでの航空自衛隊による輸送業務継続を評価したものであろう。安倍首相が公約した憲法改悪や集団的自衛権行使は、危機に立つアメリカの要求にこたえるものである。米軍再編に3兆円を出すことや、インド洋の米海軍に油を無償で補給するのも、アメリカがやっていけなくなっているからである。安倍新政府は、危機に立つブッシュ政府にたいして、カネと肉弾を提供することを最大使命としている。それは、ブッシュ政府とともに野たれ死にすることを意味している。
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