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歴史にif=イフ(もしも)が許されるとすれば、過去において、もしもこうなっていたら北方領土は返還されていたであろうと思われる機会ないし可能性が3回あったと思われる。しかし、これは殆どの有識者でも気付いていないことであろうと思われる。可成り高度の戦略的思考であり判断である故に、ここで指摘し紹介しても、一部の洞察力、あるいは先見性を有した方でしか理解し評価出来ないであろうと思われる。
第1回目は田中角栄総理の時代だ。田中首相とブレジネフソ連書記長との最高首脳レベルによる厳しい外交交渉の結果、最終的に、田中首相はブレジネフ書記長に対し、『領土問題の対象は4島』と念を押し、書記長もその場でこれを確認し、「北方領土問題」が日ソ平和条約の締結によって解決されるべき戦後の未解決の問題であることが確認された。ソ連側はその後、田中総理の失脚と共に『確認しなかった』と否定した。田中角栄氏の強力が外交姿勢で領土問題が取り上げられて、返還直前まで行ったが、殆どの国民はそんな当時の田中氏の優れた外交力や壮絶な外交交渉、ソ連指導者の圧倒される心理的状況など知るよしもない。
思うに、角栄氏は米国、中国、そして旧ソ連を相手に対等に外交が出来た唯一の政治家であり、正に世界の田中であったと思われる。旧ソ連書記長のブレジネフ氏が領土返還に応じようとしたのも、田中角栄氏の誠実で強力な外交姿勢もさることながら、田中総理がアメリカを押さえられると見たからだ。これはある意味では、北方領土の返還などは、当時も今も、アメリカに従属している限り、よほどソ連・ロシアが弱体・崩壊しない限り、そして米国自体も弱体・崩壊しない限り、不可能と言えるだろう。
もしも田中氏が、ロッキード事件で失脚することもなく、政権の座にあって総理を継続していたならば、その後、速やかに北方領土は返還されていたであろうと思われる。このような外交背景を知ることも出来ないのが、国際感覚もなく戦略的思考にも欠如し、近視眼的でスキャンダルなどの風評に流されやすい付和雷同的な国民性であり、それに真の国益よりも嫉妬や妬みの個人的利害得失に翻弄されやすい国民性が大いに関係しているように思われる。万一、北方領土が返還されていたならば、日本は、豊富な漁獲資源獲得で国力が倍増していたと言えるだろう。
第2回目は、旧ソ連邦の崩壊直前の国際環境だ。ゴルバチョフ氏が、1990年ソ連邦初代大統領に就任する前の書記長時代に二度来日した際、特に第2回目の来日の際に、当然の如く、彼の鞄の中には北方領土の返還のスケジュールが入っていなければならなかった。何故なら、これを実現することで、日本から多額の経済協力資金が旧ソ連に流れ、その結果、旧ソ連邦の崩壊が止められたものであった。この因果関係を熟知している国家指導者ならば、当然に北方領土返還と経済協力を、真剣に話し合うべき歴史的唯一の機会であったと言える。
然るに、日本や旧ソ連でも、このことに気付いて指摘する有識者が皆無であったように思われるし、国家指導者でも身命を賭して訴えて行動することもなく、結果的にはこの千載一遇の機会に全く気付いていなかったと思われる。旧ソ連邦の崩壊ですら、殆どの有識者も予想出来なかったことだ。ただ、米国の某シンクタンクは、ソ連邦の思い切った決断により、経済的苦境から脱出出来ることを示唆していたが、残念ながら、日本側にもソ連側にも、真剣に且つ緊急の関心すら抱かれなかったようだ。
第3回目は、1991年に旧ソ連邦が現実に崩壊して分裂したときであろう。この時には、バルト三国を始め、幾つかのソ連邦構成の共和国が分裂し独立していったが、この機会を捉えて、日本も北方領土を力ずくでも取り返すべきであった。力で奪われた領土は、同様に力で奪い取る意志が大切であり、原則はこれしかないことを知るべきだ。日本は旧ソ連国の共和国が次々と独立を果たしていくのを傍観していたわけで、何ら行動を起こさなかったのも、余りにも他力本願で、自らの戦略的思考もなく、危機意識も危機管理もなく、ノー天気であったと言える。
これを指摘すると、恐らく、大多数の近視眼的で軟弱な国民性では、そんなことをすれば、チェチェン紛争のようになるだろうと言うかと思うが、チェチェンは原油の輸送ルートに位置するために、地政学的にも戦略的にも、ロシアが絶対に手放せない状況にあるものだ。北方領土は当時の国際情勢から言えば、とても、ロシアは戦略的な価値には気付いてもいなく、気付いていても、旧ソ連邦の大混乱の中で、その戦略的位置の重要性にも希薄であったであろうと思われる。それ故に、案外、辺境のバルト三国のように、最終的には手放していったであろうと思われる。この辺の的確な情勢分析が上手く出来ずに、大胆な行動を取ることも出来ないのが、国際感覚音痴の優柔不断の国民性であろうか。