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http://www.nnn.co.jp/rondan/tisin/061019.html から転載。
温故知新 −ビル・トッテン−
チャベス大統領の勇気
2006/10/19の紙面より
先月の国連総会で、反米左派で知られるベネズエラのチャベス大統領はブッシュ大統領を「悪魔」に例える演説をした。日本ではどの程度報道されたか分からないが、チャベス大統領の演説はインターネットなどで全訳を読むことは可能である。米国の裏庭とも呼ばれていた中南米が変わりつつあることは、いくら主流メディアが隠そうとしたところでもはや紛れもない事実である。
反米主義の高まり
チャベス大統領は前日に演説したブッシュ大統領を指して「昨日ここに悪魔が来たので、今日も硫黄のにおいが漂っている」と言った。確かにこの言葉は過激であり、ボルトン米国連大使は「チャベス大統領の言葉遣いは彼の人柄を反映している。われわれは国際問題を漫画にするような態度には対応しない」とコメントしたという。しかし悪魔と呼んだことは演説におけるわずかな部分であり、チャベスが引き合いに出した本の著者、米政策を批判する論客である言語学者ノーム・チョムスキーをはじめ、米国が世界一のならず者国家だということに気付いている人の数はこれまでになく増えている。
そしてこれまで黙っていた人々もそれを口にし始めた。それらの反発を米国政府は無視し続け、チャベスの演説も忘れられるのを待つ作戦のようだが、反米主義の高まりは止められない。ベネズエラに限らず米国の核兵器政策を批判したイランの大統領の演説も各国メディアで取り上げられ、また先進国以外の国々で組織されている非同盟運動が活性化しているという現実もそれを後押ししている。
それでも、日本では主流メディアによる情報操作のため米国批判はタブーとなっているようだ。日本のシステムは米国同様、金持ちかつ権力を代表する人々がコントロールし、すべてが営利主義となって彼らの手に富が循環するような不平等なシステムを固定化することがその目的だからだ。そしてそれを隠すためには、うそをついたり、またはテロや共産主義の脅威をけん伝し人々に信じ込ませる必要がある。
審議だけの国連
チャベスが推奨したチョムスキーの『覇権か、生存か−アメリカの世界戦略と人類の未来』という本をぜひ皆さんにも読んでほしいと思う。そして米国と非同盟国のどちらが、一部のエリートを除く大多数の国民にとって脅威なのかを考えて欲しい。悪魔に例えた以外でチャベスが述べたことは、日本人も大いに一考すべきことなのだ。
チャベスが演説で指摘したように、国連は審議するだけの、全く力のない組織に成り下がった。安全保障理事会では米国がイスラエルの侵攻中止決議案を拒否権で否決し、ここでもならず者ぶりを発揮した。チャベスは、米国がベネズエラにクーデターを起こすことを計画し、その支援をしているとまで述べた。中南米に対して米国が行なってきたさまざまな二重基準やテロ行為からして、彼にはそれを主張するだけの理由がある。
私が反米リーダーたちを支援するのは、彼らが金持ちエリート層の貪欲(どんよく)のためではなく、一般国民の幸福と安寧のために行動していると思うからだ。金権主義の利己的な目標達成のために戦争をたくらむ指導者ではなく、彼らのようなリーダーが増えることが今世界に必要なのだ。チャベスがCIA(中央情報局)によって暗殺されないことを私は心から願う。
国民が為政者監視
米国に追随して戦争への道を模索する日本の新首相は「日本版CIA」を内閣官房に置こうとしているらしい。ブッシュ自身が米財界に従順であるがゆえに戦争を求めるのと同じく、安倍首相もどこまでも宗主国米国に従順に職務を全うしていこうとしているようだ。
チャベスが国連総会で演説したことは私たち一人一人が日常生活においてできることがあることを示している。一人一人が、家族や友人、または職場で、機会を見つけて国のこと、政治のことを話題にするのだ。格差をよいとする、または構造改革によって痛みを強いることがよいとする政治家が日本を支配すべきなのかどうか。テロの恐怖を煽って軍備を強化すべきか。
国が向かう方向が個人の生活にあまりにも大きな影響を与えるということを日本人は知っている。指導者の暴走で国家を戦争に導いた歴史を覚えている人は、日本が再び戦争への道を進むことがないよう傍観者であることをやめるべきだ。国民が為政者を監視する、その為にはチャベスのように批判を恐れることなくおかしなことをおかしい、と言い切る勇気を持つ必要がある。(アシスト代表取締役)