★阿修羅♪ > 戦争85 > 760.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
http://www.rian-japan.com/opinions/details.php?p=374&more=1
北朝鮮:核クラブの新会員?
18:46
今日の話題
ロシア科学アカデミー東方研究所朝鮮モンゴル課々長アレクサンドル・ヴォロンツェフ執筆
本年10月9日朝鮮人民民主主義共和国(以下、北朝鮮と略す)による地上核爆発実験に関して頭に浮かんだ最初のことは、北朝鮮方面のアメリカの現在の共和党政府の政策が明らかに失敗したことを我々の前に証明することになったことである。すべての問題を積極的に同国に引き寄せる「取り込み」政策(engagement)を取ったクリントン前政権は、1994年のフレーム協定の形式で際立った肯定的結果を勝ち取ることができた。北朝鮮の核計画は国際査察官の監視の下におかれ、凍結され、ワシントンの庇護の下で、国際組織KEDOも当初の期日を遂行することはなかったが、全体的には、北朝鮮領内に2基の軽水炉から成る原子力発電所を建設する計画を成功裏に遂行した。
クリントンの後ホワイトハウスで政権を取った共和党は、ピョンヤンとの関係のパラジグマ(語形変化)を完全に替えてしまった。政策の中心は核計画崩壊ではなく、北朝鮮体制の転覆に向けられた(Regime change)。北朝鮮はジョージ・ブッシュの最初の大統領任期の最初の時「悪の枢軸」に、2期目の任期の時には、民主主義の広解釈で提案される哲学にもとづくと現在の文明世界では居場所を持たない「暴君の砦jの一員に組み入れられた。
この基本的な転換の結果になったのは、最初は、フレーム協定のメカニズムの機能の停止(2002年)、そしてその後のKEDOの凍結と最終的には清算(2005年)であった。北朝鮮の全面的孤立の方針が選択され、北朝鮮を全面的に圧力を掛けることで核計画から断念させる試みが開始された。(大量破壊兵器拡散撲滅提案「Proliferation Security Initiative PSI 拡散に対する安全保障構想」、違法行為防止構想「Illicit Activities Initiative」、等)。それに伴い、ピョンヤンとの直接交渉の徹底した拒否、ピョンヤンが2国間交渉によって危機脱出の道を見出そうとする多面的提案を無視すること、両国に不可侵条約の締結させ信頼ある安全保障に合意させ核計画を止めさせることという戦略が選択された。
さらに、孤立政策で圧力をかけ金正日体制を速やかに崩壊させる目論見は根拠がないこいとを示したアメリカ国内並びに外国の専門家団体の多数の提案も徹底して排斥された。専門家たちは、一方的な大量の圧力路線と最後通告的言葉から生産的なことは何も産まれないことを警告した。彼らの間では、「そのような路線は過去にも期待した結果は何も見出さなかったし、今だって利益になることは何もない。2国間協議で核問題の建設的解決の模索の断念は、事態を累進的に複雑にする。なぜなら、アメリカは、北朝鮮の安全を保障できる世界唯一の国であり、この問題で時間の喪失は取り返しのつかない結果を起こす危険を孕んでいる」ということがささやかれている。
結果としてピョンヤンは、ワシントンからの自国の存在を脅かされる脅威を重大に意識した。そして、ユーゴスラヴィアやイラクの運命にならないように、2003年1月には先んじて核拡散防止条約から脱退し、「核抑止設備」製造作業を強化するようになった。
北朝鮮体制とその核計画の清算に関するアメリカ共和党政権の7年間注ぎ込んだ力の結果は下記のようである。
a) キムジョンイル体制はかつてないほど強固である。この証明となるのは、2002年にピョンヤンは経済を市場改革させる冒険を試みたことだ。改革は、アメリカと対峙している不都合な条件のため思われていたほど迅速には進んでいないがそれでも現在も続いている。
b) 北朝鮮の核兵器製造は現実になった。この時、様々な国の多くのアナリストは、
非拡散体制のみならず核朝鮮半島と北東アジアの将来の安全にとってもこの極めて好ましくない事実は、例え決定的な程度ではないにせよ極めておびただしい程度に、ピョンヤンがホワイト・ハウスの共和党からの圧力と脅しに対して余儀なくして行なった反応の結果になったことを確信している。
c)このような悲しい結果が現実になったのは、さらに、北朝鮮の核計画に端を発している国際的性格を持つ脅威(それゆえ、その解決には専ら多国間交渉が必要になるが)だとするアメリカの主張にも拘わらず、現在の危機の根っ子がアメリカと北朝鮮との関係が解決されていないことに根ざしていたし今も根ざしているため、1994年の2国間フレーム協定の活動が中止されたため、等々、である。つまり、この2つの国によってのみ解決可能な問題であることを意味している。最近企てられたロシア、中国、韓国,その他のエネルギッシュな仲介努力も、すべてそれらは価値のあるものであったが、アメリカへのそして北朝鮮への第3国からの影響の可能性は限られるという事実をとりわけ証明するものになった。
では形成された状況の中で何をすべきか?ロシアを含めすべての国が、その程度の差こそあれ、北朝鮮での核実験を非難したことは当然のことだ。アメリカと日本の代表は国連で、周知の如く、国際社会が北朝鮮に対し最大限に厳しい対応を取り、大規模な制裁措置を施すよう主張している。我々の見解は、これは、放って置いて治癒しなかった病気を新しい薬ではなく、古い、効果がなく禁忌の薬品を投与量を増やして治そうとする試みに見える。結果、すなわち、今後の病気の進展、そして、ピョンヤンの自国の「核抑止力」増強作業の継続であるが、予見するのは難しい。
次のことを考慮することは意味があると思われる。北朝鮮に核が現れたことは、多くの観点から見ても無条件に否定的な要素であるにも拘わらず、我々の見方では、その要素の結果を過度に劇場化するのは根拠がないことと判断する。予見された不可避の連鎖反応の開始、地域の隣国、日本、韓国そして台湾の核保有化は考えられないと思われる。これらの国に核の傘を保証しているアメリカが自分の同盟国の「核の独自性」を許すことも想像し難い。
北朝鮮が核兵器あるいは資料を第3国に輸出する可能性は、そのことをまず第一にアメリカが懸念しているが、やはり少ない。なぜなら、第一に、2006年10月3日付けの北朝鮮外務省の声明に、「核の漏れ」を許さない義務が含まれていることだ。第二に、これは現在自国体制維持をまず最初に心配している北朝鮮の利益に大きく反することになるからだ。
この状況の中で、北朝鮮の核実験に関連した本年9月9日付けのロシア外務省の声明の中に含まれていた、あらゆる関係国に現在の容易ならぬ状況の中で自制と忍耐を発揮し、交渉過程により形成された状況から脱出する道を探すべく呼び掛けは、説得力があり、極めて現実的に思われる。周知の如く、同様の立場を中国外務省も表明した。
この呼び掛けにはアメリカ自身にも少なくない賛同者がいる。今世界が記述しているこの劇的な出来事(北朝鮮の核実験)の前夜に、前国務長官マデレーン・オルブライトが、ニューヨークでの朝鮮研究者協会で演説した際、現在の著しく複雑な状況の中でも、以前のアメリカが取った同国への「取り込み」政策(engagement)に戻らせる方向で北朝鮮を非核化させ、ワシントンとピョンヤンとの積極的かつ直接対話を実現させることは可能であるとの期待を表明した。クリントン政権時の対外政治部門の長であった人物のこの発言を、民主党が勝利するのではと予想される本年11月のアメリカ議会中間選挙の前夜の朝鮮問題に関する民主党の綱領演説と理解した複数の評論家もいた。
従い、関係国すべてが満足できるように北朝鮮を非核化に導くことが出来るのは北朝鮮を厳しい孤立の角に追いやる新しい試みではなくて取り込み政策(engagement政策)を修正して「取り込み政策第2版」を出版することである。そしてその先は、北朝鮮の現代の現実への適合とすでに独自に始まった体制の変質へと導かれる。