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http://www.labornetjp.org/labornet/news/2006/1160793768996staff01 から転載。
こんにちは
パリ在住、清水です。
先日、サルコジ内省により提出された「非行防止措置に関する法案」に反対するデモが、社会サービス・教育・医療関係労働組合によって組織されました。
新自由主義にとどまらず、全体主義への道もたどりつつあるフランスです。
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10月10日、「非行防止措置に関する法案」に反対し、全国的なデモが組織された。3年前に提出されたこの法案は、9月7日に、上院で議論、可決されたばかりだった。今回のデモを組織したのは、教育指導員(educateur 社会的、もしくは心身に障害があるとされた子供や青少年の社会生活を支援する)、医療(とくに精神科)関係者などからなる労働組合連合(CGT, SUD, FSU など)、また若者たちの参加も見られた。
この法案の目的は、非行の予防、すなわち、非行が起こりうると判断された場合に、どのように対処するべきなのかを指示すると共に、関係機関に、相応の権限を与えることにある。
特に、市長は、予防措置において重要な役割を与えられることになる。市長は、該当者の医療・社会サービスに関する個人情報を参照する権利が与れ、また場合によっては、家族手当の一時停止命令を出すこともできる。
この法案が提出された当初は、「非行」のみが対象となっていたのだが、法案の練り上げ作業がすすむ過程において、精神病患者も対称となっていった(18-24条)。本来ならば、厚生・教育関係省が担当すべき分野ですら、すべて、内務省の管轄下に総合的に管理されるようになる。
反対運動を展開している人々は、この法案は、「Fichage(カードに記録を記載すること)」の社会を生み出す危険性があるとみなしている。つまり、「危険人物である」との判断が、当人の行動や病的傾向など、諸々の要素から判断され、カードに記録され、「監視」の対象として特定して(identification )いく社会のことである。
そしてこれらすべてが、内務省、つまり警察によって、管理されることになるという事実は、いっそう、危険感を高めるものだ。フランス社会が全体主義への道を歩み始めているのではないかと危惧せずにはいられない。というのも、このような「カードへの記載」は、第二次世界大戦期、ドイツ占領下フランスにおけるユダヤ人狩りを想起させるからだ。当時、「ユダヤ人登録カード(fichier juif)」というのが創られ、ユダヤ人は、あらゆる差別の対象となり、強制収容所に送り込まれた。このようなヴィシー政権の全体主義・差別主義が、再び、フランスに生まれつつあるのではないかとの危機感を抱かせる法案なのだ。
フランスでは、昨年の郊外暴動、CPE反対運動と、若年層の不満が表面化し続けている。今回のデモにも、多くの若者が参加していた。MJS(社会主義青年運動 社会党系)の女性活動家は、本法案に関して、「この法案は、人々をより差別化していくものである。なんらかの非行行為や、治療をうけたことがあるという事実によって、当人の社会的上昇は、決定的に不可能となりうることもあるのだ。こうして、わたしたちは、社会的に有益・無益の観点から選別され、競争にさらされるのである。それは、若者のプレカリアート化をより強化いていくものであるともいえる」とコメントしていた。
法案
http://www.senat.fr/leg/pjl05-433.html
ARGOS 躁鬱病患者とその家族、友人のための会
http://argos.2001.free.fr/
参考文献:ドイツ占領下フランスにおけるユダヤ人登録の歴史について
Gérard Noiriel, Les origines républicaines de Vichy, Hachette, 1999, ch.IV.