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北朝鮮周辺で放射性物質検出 核実験、なお未確認
北朝鮮の核実験発表から5日後の14日、米側から朝鮮半島周辺上空で放射性物質を検出したとの知らせが日本政府にもたらされた。「揺れ」以外で、初の証拠となるのか。国連安保理は制裁へ向け協議を続ける。瀬戸際外交が専門の北朝鮮は、再実験に踏み切るのか。その可能性を探った。【田中泰義、永山悦子、ウィーン会川晴之、北京・西岡省二】
◇定点観測で検出なく/他施設排出の可能性/過去に判定不能例も
「米軍が朝鮮半島周辺の上空で核実験を行った際に検出される放射性物質を確認した」。実験発表以降、初めてとなる放射性物質検出のニュースが14日、飛び込んできた。
しかし、核分裂反応で生じる放射性物質が大気中から検出されたとしても、それだけで核実験があったと断定するのは難しい。宇宙から常に地球に降り注いでいる放射線(宇宙線)が大気中の物質に当たって生じたり、原子炉から放出された可能性もあるからだ。
地下核実験で検出されやすいのは、核分裂の際に出てくるキセノンやクリプトンなどの気体だ。「希ガス」と呼ばれるこれらの物質は、他の物質に吸着しにくい性質を持っているからだ。しかし、大気中には欧州などの核燃料再処理工場から放出されたクリプトン由来の放射能が1立方メートル当たり1・5ベクレルあり、微量では実験実施の根拠にはならない。
また、ヨウ素131やバリウム140などが検出されれば、核実験の疑いが高いとされる。その元素が存在できる期間の目安となる「半減期」がヨウ素131は約8日、バリウム140で約13日と寿命が短いので、自然界では本来観測されないからだ。ただ、これも微量な場合は確認が難しい。
こうしたごく微量な放射性物質の変動を見極めるには、各観測点で定期的に大気中の放射性物質を測定して、基準となる量を知っておく必要がある。核実験全面禁止条約(CTBT)に基づく監視・観測では、24時間放射性物質の量を測っているため、異常な変動があれば分かるが、今回、国内の観測地点で変動は確認できていない。また、米軍の観測は、日常のデータが蓄積されているか分からず、変動をキャッチできたかは不透明だ。
過去にも核実験があったと疑われたが観測できなかった例がある。核兵器を秘密裏に開発、保有していた南アフリカのケースだ。79年9月に米偵察衛星が南アフリカ沖のインド洋上で核爆発が疑われるせん光を観測。米政府は、放射性物質の確認作業を続け、豪州の羊の甲状腺からヨウ素131を検出したが微量だったため、核実験によるものか判定できなかった。
◇政治絡み、読めぬ再実験
核実験は成功したのか、失敗だったのか。観測された揺れの規模などから専門家の間では、「実験は失敗」との見方が有力になっている。
プルトニウム型の核爆弾の場合、小分けしたプルトニウムを爆薬で瞬時に1カ所に集める「爆縮」という高度な技術が必要だ。失敗説は、この爆縮がうまくいかず、核分裂の連鎖反応が途中で止まる「未熟核爆発」で終わったため、爆発が小規模だったとの見方を根拠としている。
ただ、澤田哲生・東京工業大助手(原子核工学)は「核爆発による揺れの規模は、地形などによって爆発の威力の10分の1程度になることもある。北朝鮮が中国に通告したとされるTNT火薬換算で4キロトン級の実験に成功した可能性もある」と、失敗説に疑問を呈す。
では、再度の核実験に踏み切る可能性はどうなのか。実験が失敗なら、爆縮技術を確立するために、時間を置いて再実験に踏み切ることも考えられる。成功だとしても、北朝鮮が規模や種類の異なる核爆弾を開発している場合、インドやパキスタンが98年にさまざまな種類の核実験を実施したように、実験を繰り返してくる可能性がある。
北朝鮮の場合、こうした技術的な側面以外の要素を考慮しなければならない。北朝鮮外務省は「米国が引き続き圧力を加えるなら宣戦布告とみなし、相次いで物理的な対応措置を講じる」と11日に発表している。国連安保理の制裁決議の動きなどの国際状況を考えれば、北朝鮮が外交カードとして、再実験をちらつかせる可能性は高い。
国際関係に詳しい北京大学国際関係学院の王勇副教授は「北朝鮮が仮に再実験の実施を決定していても、その前に必ず外交交渉に持ち込もうとするはずだ」と指摘する。
◇「場所」ほぼ特定
実験の実施場所は当初特定できなかったが、関係機関の観測により、北朝鮮北東部の咸鏡北道(ハムギョンプクド)の半径10キロ程度の山中に絞られた。実験直後、日米や核実験全面禁止条約機関(CTBTO)準備委員会が推定した位置とズレがあった韓国の地質資源研究院が13日になって、ほぼ同じ場所に修正したからだ。
北朝鮮が核実験を発表した9日、日本の気象庁は各地の観測から、震源を北緯41・2度、東経129・2度と割り出した。米地質調査所は北緯41・294度、東経129・094度、CTBTO準備委は北緯41・3119度、東経129・0189度としていた。
一方、韓国の地質資源研究院は9日、北緯40・81度、東経129・01度と発表。13日に3機関とほぼ同じ北緯41・27度、東経129・18度に修正した。
震源は、複数の観測地点に地震波が届いた時間から割り出す。このため、震源を囲むようにさまざまな方向に観測地点があれば特定しやすい。韓国側の観測地点は、震源に近かったが、震源から南方向に偏って並んだため、誤差が生じたとみられる。【須田桃子】
◇核実験、許さぬ メッセージ送る−−決議案で米大統領
【ワシントン笠原敏彦】ブッシュ米大統領は14日、週末恒例のラジオ演説で、国連安保理が近く北朝鮮制裁決議案を採択する見通しであることを受け「我々は北朝鮮にその行動(核実験)を許容しないとの明確なメッセージを送る」と訴えた。大統領はまた、中国と韓国に言及し、決議案が採択されれば、制裁内容を履行するよう求めた。
毎日新聞 2006年10月15日 東京朝刊
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