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2006.10.12
『月刊オルタ』10月号 特集:イスラエル/レバノンから読み解く中東問題
『月刊オルタ』の2006年10月号が「イスラエル/レバノンから読み解く中東問題」と題して特集をしているのだが、中身が詰まっていて、多角的にレバノンへのイスラエルによる攻撃を捉えられる内容になっている。
「建国以来、絶え間ない戦争状態に置かれてきたイスラエルは、「米国の九・一一」のはるか以前から、自国およびその周辺で数々の「対テロ攻撃」を遂行してきた。この七月に起きたレバノンに対する先制攻撃も、政府が事前に兵士捕捉の計画を知った上で「対テロ戦争」という名の軍事攻撃に転嫁させたことが明らかになっている。言うまでもないことだが、「対テロ戦争」における犠牲者の大半は民間人だ。イスラエルによるレバノン攻撃で、短期間に優に一〇〇〇名を超える命が失われ、ヒズブッラーのミサイル攻撃ではイスラエル市民も犠牲になった。しかし、死者の人数をカウントし、戦争を図式化することが重要なのではない。政治に翻弄される人びとの姿。イスラエルの過剰な行動の理由。眼と鼻の先で破壊と殺戮を続ける自国軍を公然と支持するイスラエル人の感情。戦争の舞台となったレバノンの社会的・歴史的背景……。「対テロ戦争」に象徴される政府主導の言説図式をマスメディアが垂れ流す今、表層的な戦争報道の覆いを引き剥がしつつ、イスラエル/レバノンというフィルターを通して今日の中東問題、そして世界のありようを考えていきたい。」(特集・序文)
<特集>イスラエル/レバノンから読み解く中東問題
終りの見えぬ狂想曲 臼杵 陽
レバノン――再び迫り来る危機に向けて 黒木英充
「イスラエル国民」の戦争――力に酔いしれる「弱者」 田浪亜央江
破壊と殺戮に晒されたレバノン――現地報告 豊田直巳
私たちは今、破滅的な中東戦争か和平かの岐路に立っています マスウード・ダーヘル(インタビュー)
コラム――レバノンのパレスチナ難民
臼杵氏の「終りの見えぬ狂想曲」はレバノン攻撃について、イスラエルの論理に即して2つの要因から戦争の動機を考えたもの。ひとつは、イスラエルの治安に対する「テロリスト」の脅威の強調という安全保障の認識の観点から、もうひとつはオルメルトをはじめとする主要閣僚と軍部の決定責任の観点から、大規模な空爆にいたった背景を描き、イスラエル社会の行き先を推測している。
黒木氏の「レバノン――再び迫り来る危機に向けて」は、わかりにくいモザイク国家のレバノンの概要を説明したうえで、ヒズボッラーの誕生から、その占めている位置を書いている。レバノン攻撃の無謀さと世界の二重基準があぶりだされている。
田浪氏の「「イスラエル国民」の戦争――力に酔いしれる「弱者」」は、戦争を支持した国民が86%(当初)だったという事実から出発し、イスラエルの文化・社会的風土を参照しながら、イスラエル国民の思考背景を考察したもの。
ジャーナリストの豊田氏は現地報告として「破壊と殺戮に晒されたレバノン」でカナ虐殺と、いまだイスラエルが占領を続けているシェバ農場についてレポートを行っている。(写真つき)
レバノン大学教授で、キリスト教徒のマスウード・ダーヘル氏は、来日中のインタビューで、レバノン人としてとらえた今回の戦争の姿を語る。
「今回の戦争は、レバノンという国家自体を破壊することがひとつの目的だったと思います。レバノンは……多様な宗派と民族による共存のモデルケース、中東における諸文化の対話のための広場なのです。イスラエルは今回、こうした共存のモデルとしてのレバノン国家の破壊に失敗したのです」(マスウード・ダーヘル)
こういうわけで、レバノン攻撃を振り返り、現在の中東を考えるうえでの大切なポイントがこの特集には詰まっている。充実した一冊。
他に
「――緊急・スリランカ内戦」
戦闘激化に伴う難民支援の緊急課題 中村尚司
とらわれのジャフナ――激戦・孤立 小野山亮
など。
『月刊オルタ2006年10月号』 定価:600円+税
*書店売りはないそうです。以下、雑誌より。
【購入方法】定期購読(7000円+税)または希望する号・冊数(例・2006年10月号を1冊)/氏名/送付先/電話番号を明記の上、
http://www.parc-jp.org/transitional/
の「コンタクト」よりお申し込みお願いします。
【連絡・問合せ先】アジア太平洋資料センター(PARC)
TEL:03-5209-3455 FAX:03-5209-3453
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