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イスラエルとアラブの接近 [田中宇の国際ニュース解説]
http://www.asyura2.com/0610/war85/msg/488.html
投稿者 white 日時 2006 年 10 月 10 日 09:54:17: QYBiAyr6jr5Ac
 

□イスラエルとアラブの接近 [田中宇の国際ニュース解説]


田中宇の国際ニュース解説 2006年10月10日 http://tanakanews.com/

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★イスラエルとアラブの接近
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 学問の発展は、物事についての考察を、根本的なところまで掘り下げ、それ
までの通説に疑問を持つところから始まる。学問を発展させられる人の多くは、
ラディカル(根本的なところから考える人)である。

 社会の中で、根本的に考える傾向が強いのは、その社会に満足している人で
はなく、社会から外されている人、差別されている人の方である。世界の中で
近代の学問の多くを生み出したのはヨーロッパであり、欧州人の中でも、フロ
イトやマルクスなど、近代の学問の発展に大きく寄与したのはユダヤ人だった。
ユダヤ人は教育熱心だが、キリスト教社会で阻害されていたため、物事につい
て深く考える傾向がある。

 ユダヤ人がラディカルに考える傾向があることは、ロシア革命やその後の左
翼運動の中にユダヤ人が多かったことにもつながっている。私は以前、イスラ
エルを取材したときにも、ユダヤ人のラディカルさに感心した。
http://tanakanews.com/c1007israel.htm

 最近、私がユダヤ人のラディカルさを感じたのは、8月29日のヘラルドト
リビューン紙に載った、イスラエルの元軍人が書いた記事を読んだ時である。
その記事は「これまでのイスラエルは、欧米文明の一員としてのアイデンティ
ティを持ち、アラブ的なものを排除してきたが、今後はそれではいけない。こ
れからのイスラエルは、アラブの一員としてやっていくべきだ」と主張していた。
http://www.iht.com/articles/2006/08/29/opinion/edavi.php

 この記事は「イスラエルが欧州文明の一部だという認識は(欧州からの移民
でエリート層の)アシュケナジの影響でしかない」「アラブ主義とシオニズム
は矛盾しない」「アラブ諸国にはイスラム教徒以外の人々が何百万人もいる。
以前は、ユダヤ人もその一つとしてアラブで活躍していた。われわれがアラブ
化すれば、アラブ人は再び受け入れてくれるはずだ」「役所や企業の文書は、
ヘブライ語とアラビア語の両方で作ることを義務づけるべきだ」「ヘブライ語
は、100年前まで、儀式の時にしか使われていなかった(ので、ヘブライ語
だけを重視する必要などない)」といった、これまでのイスラエルを全否定す
るような、過激な指摘に満ちている。

▼アメリカに意地悪されてアラブ接近を模索

 この記事の主張は、何の背景もなしに出てきたのではない。イスラエルは、
今年7−8月にレバノンで行ったヒズボラとの戦争で、世界から非難される戦
争犯罪行為を数多く行った上、ヒズボラを壊滅させるどころか政治的に強化し
てしまう大失敗をした。しかも、対イラン戦争の前哨戦として、イスラエルを
そそのかしてこの戦争をやらせたブッシュ政権は、武器支援はしたものの、自
らレバノン南部に軍を出してイスラエルを守ることはやらなかった。
http://tanakanews.com/g0808israel.htm

 イスラエル中枢が「もう停戦したい」と考え始めると、ブッシュ政権が「イ
スラエルは好きなだけ時間を使ってテロ組織ヒズボラを壊滅させるのが良い」
と表明するという意地悪ぶりで、イスラエルははしごを外された形となった。
http://www.nytimes.com/2006/07/26/world/middleeast/26cnd-mideast.html

 この自滅的なレバノン戦争の後、イスラエルとアメリカのユダヤ人社会では、
アメリカとイスラエルの強硬派連合(アメリカのネオコン・タカ派と、イスラ
エルのリクード右派)に対して「彼らは、イスラエルを守るといって、実はイ
スラエルを潰そうとしているのではないか」という警戒感が強まった。

 そして同時に「イスラム側をやっつけてイスラエルの領土や影響圏を拡大す
る」という従来のイスラエルの戦略そのものに間違いがあるのではないかとい
う根本的な考え直しが、イスラエルとアメリカのユダヤ人の中で強まった。
「イスラエルのアラブ化」の提案も、そうした根本的な新考察の一つである。

 今年7−8月のレバノン戦争が持つ「自滅性」は、アメリカのイラク戦争と
良く似ている。いずれの戦争も、強硬派連合が誘発したものであり、そこには
「自滅戦略」と考えたくなるほどの一貫性が感じられる。

 強硬派は、ユダヤ人の中の少数派でしかない。ユダヤ人の多くは、イスラエ
ルが安全で発展する国になってほしいと考えている。彼らは、和平がイスラエ
ルの安全と発展に結びつくなら、イスラエル労働党などの和平派を支持するが、
イスラエル側の和平姿勢に対してアラブ側がテロや過激なイスラム主義で応え
るのなら、強硬姿勢の方がイスラエルの安全に結びつくと考え、リクードなど
の強硬派を支持する。イスラエルでは1990年代後半以来、アラブ側からの
テロが増え、911以降、世界的にイスラム教徒のテロが問題にされたため、
ユダヤ人の中では強硬派支持が強くなっていた。

 しかし最近では、ブッシュ政権が強硬な姿勢をとればとるほど、イスラム世
界は激昂し、ヨーロッパなどの人々も反米になり「アメリカが破壊的な強硬姿
勢を変えないのは、ブッシュ政権の中枢に親イスラエルの勢力がいるからだ」
と考える人も増えている。ブッシュ政権は「イスラエルは一番大切な同盟国で
す」と表明しているが、こうした発言はイスラエルを強化するどころか逆に、
世界の人々の反イスラエル感情を微妙に煽っている。勘の良いユダヤ人が「イ
スラエルは、ブッシュ政権から距離を置き、早くアラブと和解する努力をした
方が良い」と考えるのは当然である。

▼サウジとイスラエルの接触

 このような背景のもと、9月になって、イスラエルとアラブの接近を思わせ
るニュースが、いくつも入ってきた。その一つは9月中旬に、イスラエルのオ
ルメルト首相と、サウジアラビアの主要な王族が秘密裏に会い、中東和平の可
能性について話し合ったことだ。
http://www.guardian.co.uk/israel/Story/0,,1880457,00.html

 表向き、イスラエルもサウジも会合について否定しているが、オルメルトは
この件について記者から尋ねられ「大々的に報じるようなことは何もないよ」
と、秘密会合が開かれたこと自体は否定せず、その一方で「サウジ国王は素晴
らしい人物だ」と賛美したりした。マスコミに把握されている限りでは、イス
ラエルとサウジの高官どうしの直接交渉は、史上初めてである。
http://www.upi.com/InternationalIntelligence/view.php?StoryID=20060925-035251-7556r
http://www.forward.com/articles/saudis-in-quiet-talks-to-revive-arab-peace-bid/

(ハアレツ紙の記事によると、オルメルトが会った相手は、サウジの駐米大使
を長年つとめたバンダル王子だった。バンダルはサウジ王室内でイスラエルと
のパイプが最も深い人で、6年前に米のクリントン大統領、イスラエルのバラ
ク首相、パレスチナのアラファト議長の3者間の和平交渉を取り持ったのもバ
ンダル王子だったという)
http://www.haaretz.com/hasen/pages/ShArt.jhtml?itemNo=771153

 サウジアラビアは2002年に「イスラエルが占領地から撤退し、パレスチ
ナ国家の建設に協力したら、アラブ諸国は集団でイスラエルと国交を正常化す
る」という内容のパレスチナ和平提案(アブドラ提案)を行っている。当時の
イスラエルのシャロン首相は、すでにアメリカの隠された悪意に気づいていて
「アラブ側との交渉は。タカ派が牛耳るブッシュ政権から阻止されて成功しな
い」と考えたらしく、提案には乗らず、代わりに一方的にガザと西岸からイス
ラエルの軍と入植者を撤退させる政策を先に開始した。
http://tanakanews.com/d0113israel.htm

 昨年末にシャロンが倒れた後、撤退戦略はオルメルトに受け継がれたが、イ
スラエルを弱めてしまった7−8月のレバノン戦争後、占領地からの撤退は危
険だと考える世論がイスラエルで強くなり、撤退は棚上げされた。だが、この
ままではパレスチナ問題に対する現実的な戦略が欠如している。そのためオル
メルトは、アラブ側と交渉する戦略を新たに採用し「イスラエルが弱くなった
今こそ、アブドラ提案を実現できる機会だ」と考えるサウジ側と会談した。

 オルメルトとサウジ王室の会合と並行するように、9月22日には、国連総
会出席のためにニューヨーク滞在中だったサウジのファイサル外相(王子)が、
「名誉毀損防止協会」(ADL)のアブラハム・フォックスマン理事長ら、ア
メリカのユダヤ人社会で指導的な立場にある5人の有力者と会い、中東和平の
進め方について話し合った。
http://www.forward.com/articles/saudis-in-quiet-talks-to-revive-arab-peace-bid/

 サウジ側と米ユダヤ人社会の代表団は、これまでも毎年会合を開いてきたが、
昨年の会合ではサウジ側がイスラエルを批判して険悪な雰囲気だったのに対し、
今年の会合は友好的な雰囲気の中で行われたという。

▼接近にはパレスチナ問題の解決が不可欠

 サウジとイスラエルには「共通の敵」がいる。中東の反米イスラム主義の流
れに乗って台頭しつつあるアハマディネジャド大統領のイランである。アハマ
ディネジャドは、イスラエルがパレスチナ人を虐待していることに対する中東
の人々の反発を利用し、声高にイスラエルを非難することで、中東の世論から
支持されている。反米イスラム主義のイランの台頭は、親米のサウジ政府にと
って都合が悪い。これは、エジプトやヨルダン、クウェートなどの親米アラブ
諸国の全体に言える。

 サウジなど親米アラブ諸国の政府が、中東の人々の支持を再獲得し、イラン
をしのぐ勢力に戻る方法として、イスラエルと組んで、パレスチナ問題を解決
するというやり方がある。

 イランの好戦的な方法だと、イスラム世界はイスラエルと戦争になり、最終
的にイスラム側が勝ったとしても、そこに至るまでには無数の市民が死ぬこと
になる。だがもし、サウジなどアラブ諸国とイスラエルが、アブドラ提案など
に沿って話し合い、パレスチナ国家の建設に成功し、中東和平を実現できるな
ら、イランよりサウジの戦略の方が良いと、世界の多くの人が考えるはずであ
る。サウジ政府が、イスラエルとの交渉でパレスチナ問題を最重視するのは、
それが自分たちの政権を維持できるかどうかを決めるテーマでもあるからだ。

 10月初め、米ライス国務長官がサウジアラビア、エジプト、イスラエル、
パレスチナなどを訪問したが、この歴訪で各国と話し合われた主なテーマは
「イラン」と「パレスチナ」だった。サウジやエジプトという親米アラブ諸国
とイスラエルが、イランと対立する同盟として関係を強化するためにパレスチ
ナ問題を解決しようとしているのが、今の中東外交の流れである。
http://rss.csmonitor.com/~r/feeds/world/~3/31912068/p01s04-wome.html

▼交渉相手作りとしてのパレスチナ連立政権構想

 パレスチナ問題を解決するには、イスラエルとパレスチナが交渉し、パレス
チナ国家の建設とイスラエルによる承認、イスラエルの軍と入植者の占領地か
らの撤退などについて決めねばならない。だが、今のパレスチナ側は、今年
1月の選挙で政権をとったイスラム主義組織のハマスと、それまで政権に座に
あった世俗系(元左翼)のファタハ(アッバス議長ら)が対立している。政権
党のハマスは反米でイスラエル敵視の傾向が強い。ファタハは比較的親米でイ
スラエルとの敵対関係もハマスより少ないが、選挙に負けてしまっている。

 イスラエルがレバノンでの戦争に勝てずに停戦に持ち込まざるを得なくなっ
た後の8月中旬、イスラエルとアラブ諸国は、ハマスとファタハを和解させて
連立政権を作らせ、ハマスに反米・反イスラエル傾向を薄めさせることで、イ
スラエルの交渉相手となるパレスチナ側を確立しようとした。8月13日、ア
ッバス議長は、連立政権構想を発表した。
http://www.arabnews.com/?page=4§ion=0&article=79206&d=13&m=8&y=2006

 9月に入ると「10日以内に連立政権を作る」という宣言がアッバスの側近
からなされた。水面下の交渉が活発化した。
http://www.arabnews.com/?page=4§ion=0&article=80207&d=3&m=9&y=2006

 イスラエル側も、オルメルト首相が「アッバスが連立政権作りに成功したら、
アッバスと会う」と表明した。イギリスからはブレア首相がパレスチナを訪問
し、ファタハとハマスを仲介しようとした(ハマスから拒否された)。
http://www.haaretz.com/hasen/pages/ShArt.jhtml?itemNo=760597
http://www.iht.com/articles/2006/09/10/news/mideast.php

 しかし、パレスチナ側で連立政権作りの交渉が始まると同時に、和平より戦
争を好むイスラエルとパレスチナ双方の強硬派がいっせいに、事態が和平の方
向に進むことを阻止しようとする動きを活発化させた。

 イスラエル政府内では、右派の牙城の一つである住宅省が、占領地内の入植
地の拡大を禁じているオルメルト首相の許可を得ないまま、入植地の690戸
の住宅建設のための入札を行い、右派は、イスラエル政府が入植地を拡大して
いるかのような印象を世界に与えることに成功した。
http://www.haaretz.com/hasen/pages/ShArt.jhtml?itemNo=758516

 パレスチナ側では、エジプトからガザへの武器搬入が活発化している。レバ
ノンからヒズボラの戦争専門家がエジプト経由でガザに入っているという報道
も流れた。右派が強いイスラエル軍はガザに戦車を入れ、ハマスを威嚇し続け
た。
http://www.haaretz.com/hasen/pages/ShArt.jhtml?itemNo=759174
http://www.telegraph.co.uk/news/main.jhtml;jsessionid=3HYQXH0E3XYXVQFIQMGSFGGAVCBQWIV0?xml=/news/2006/09/03/wmid03.xml

▼ごまかしの連立政権樹立は通らず

 9月11日、ファタハのアッバス議長とハマスのハニヤ首相が会談し、連立
政権を樹立することで合意した。翌日、隣国ヨルダンからアブドラ国王自らが
パレスチナを訪れ、連立政権の樹立を祝福するメッセージを発した。
http://www.msnbc.msn.com/id/12342828/

 ところがよく見ると、この連立政権は、イスラエルと交渉する相手として機
能しないことになっていた。ハマスのハニヤ首相は「イスラエルとの交渉は
PLO(ファタハ)が行うものであり、連立政権はイスラエルとは交渉しない」
と表明した。つまりハマスとしては、あくまでもイスラエルを国家として認め
ることを拒否しており、ファタハが参加している限り、連立政権がイスラエル
の交渉相手になることはない、という宣言だった。イスラエルは、この状態で
パレスチナ側と交渉することは拒否すると表明した。
http://www.haaretz.com/hasen/pages/ShArt.jhtml?itemNo=761475

 アメリカも、パレスチナの連立政権を承認することには消極的だった。アッ
バス議長は9月下旬にニューヨークの国連総会に出席し、その後ブッシュ大統
領と会談したが、アメリカの態度は好転しなかった。国連総会でアラブ諸国は、
パレスチナ問題を国連に持ち込んで特別の会議を開くことを提案したが、アメ
リカの反対によって話は流れた。
http://news.independent.co.uk/world/middle_east/article1645601.ece
http://www.examiner.com/a-295669~U_N__Council_to_Meet_on_Arab_Peace_Plan.html

 その後、アッバスはハマスとの交渉をやり直し、ハマスがイスラエル国家を
承認するよう迫った。だが、パレスチナの世論はすでに極度に反米・反イスラ
エルに傾いていた。7−8月のレバノンでの戦争でヒズボラがイスラエルに
「勝利」したこともあって、パレスチナの世論は好戦的になっており、ハマス
にとって今さらイスラエルを承認することは支持者を裏切ることにしかならず、
譲歩できる問題ではなかった。ファタハとハマスの再度の交渉は失敗に終わった。
http://english.aljazeera.net/NR/exeres/FFFC1266-0DCE-419F-B9A2-432BCE7D8F91.htm

 ハマスは「イスラエルを承認しなければならないのなら、連立政権には参加
しない」と発表した。一方、イスラエル側ではオルメルト首相が「ハマスがイ
スラエルを承認しない限り、アッバスとは会わず、和平交渉しない」と表明した。
http://www.usatoday.com/news/world/2006-09-22-hamas-israel_x.htm
http://www.haaretz.com/hasen/pages/ShArt.jhtml?itemNo=766032

 オルメルトとサウジ王室の秘密の会合が持たれた9月中旬は、ちょうどハマ
スとファタハの話し合いが難航していた時期だった。サウジ王室はハマスやフ
ァタハに支援金を出しており、圧力をかけられる存在である。だが、秘密会合
の後も、事態は好転しなかった。

▼支持者にデモをさせて政権転覆を画策

 次に起きた動きは、パレスチナ内部、特にガザで、ファタハの支持者が与党
のハマスを批判するデモを行い、政権転覆を図るという画策だった。ハマスは
米政府からテロ組織とみなされており、ハマスのハニヤ政権は3月に就任して
以来、欧米からの援助資金の多くを止められており、パレスチナでは公務員に
対する給料支払いが滞る事態になっている。イスラエルから封鎖されているた
め産業がほとんどないパレスチナでは、公務員が最大の雇用先である。

 この状況を利用してファタハは9月末から、教師や警察官をしている支持者
たちに、給料の払えないハマス政権を非難するストライキやデモ、集会を、ガ
ザで行わせた。ファタハ系警察官のデモ行進は過激化し、ハマス系の民兵や警
察官からの反撃を受けて、ガザは内戦的な様相を帯び始めた。(ガザではハマ
スが強く、西岸ではファタハが比較的強い)
http://www.haaretz.com/hasen/pages/ShArt.jhtml?itemNo=769437

 ハマス側は「これは、イスラエルやアメリカが、ハマスの政権を転覆しよう
とアバスにやらせたクーデターである」と表明した。事態の流れから見ると、
この指摘は当を得ている。ハマスは明言しなかったが、ハマスによるクーデタ
ーまがいの行為に対しては、イスラエルとアメリカだけでなく、エジプトやサ
ウジなど親米アラブ諸国も事前に了承していた可能性がある。
http://www.jpost.com/servlet/Satellite?c=JPArticle&cid=1159193349613&pagename=JPost%2FJPArticle%2FShowFull
http://www.ynetnews.com/articles/1,7340,L-3310486,00.html

 このガザ暴動の後、パレスチナ情勢は、ハマスとファタハの内戦に向けて一
触即発の状態にある。すでに内戦が始まっていると指摘するパレスチナ高官も
いる。敵対が激しくなる中で、10月5日にアバスは、ハマスとの交渉は失敗
したと宣言した。
http://www.washtimes.com/world/20061005-120646-5106r.htm
http://washtimes.com/functions/print.php?StoryID=20061003-115325-7171r

 その後、ファタハと親米アラブ諸国は、大統領であるアバスが、ハマスが過
半数を占める議会を解散する宣言を行い、それを受けてパレスチナ領内で出直
し選挙を行うという案をやろうとした。出直し選挙をやれば、欧米からの経済
制裁を招いているハマスが負け、こんどはファタハが勝つかもしれないという
読みからだった。しかしハマスは、解散させられたら内戦に突入することにな
ると言って抵抗している。
http://www.ynetnews.com/Ext/Comp/ArticleLayout/CdaArticlePrintPreview/1,2506,L-3311839,00.html

▼再び近づく戦争

 パレスチナ側で騒動が続く中、イスラエルの右派は、将来のパレスチナ国家
となるべき占領地の中で、着々と入植地を拡大している。オルメルト政権は入
植地の拡大を禁じているが、政府内ではその方針が無視され、入植地の拡大が
右派系の役人によって進められている。
http://www.alertnet.org/thenews/newsdesk/L21436274.htm

 イスラエル軍内の右派は、レバノンでの戦争の時にやれなかったシリアとの
戦争を画策しているふしがあり、シリアのアサド大統領は「いつイスラエル軍
が攻めてきてもおかしくない状態だ」と発言した。
http://www.haaretz.com/hasen/pages/ShArt.jhtml?itemNo=771495

 レバノンでの戦争の停戦後に盛り上がったイスラエルとアラブとの接近や、
パレスチナ問題をこの機に解決しようという気運は、ハマスとファタハの内戦
という、以前より悪い状況をもたらしており、失敗してしまっている。そして、
和平が遠のく一方で、イスラエルとアラブの両方で好戦派が盛り返し、レバノ
ン停戦によって阻止された、戦争のシリアやイランへの拡大が、再び模索され
始めている。
http://www.dailystar.com.lb/article.asp?edition_id=10&categ_id=2&article_id=75893

▼イスラエルとアラブの結束は世界最強なのに

 イスラエルと親米アラブ諸国の接近は、1950年代以来、何回か試みられ
てきた。冷戦下の1960年代には、左翼のエジプトやシリア、イラクと対抗
するため、イスラエル、サウジ、ヨルダン、イランが結束するという構想もあ
った。冷戦後の経済自由化の流れの中では、パレスチナ和平をやって中東全域
を経済成長できる地域にしようというオスロ合意の構想もあった。しかし、こ
れらは全て失敗している。今回の試みもまた、失敗に終わろうとしている。

 もしイスラエルとアラブ諸国が本当に結束できたら、世界的に強大な力を持
った勢力になりうる。アラブは石油を持っており、サウジは国際石油価格を動
かせる。イスラエルは、情勢分析や盗聴、謀略などの諜報力と、欧米政府への
影響力行使(政治的脅し)のノウハウと人脈を持っている。これらが結合すれ
ば、欧米をしのぐ覇権的な勢力になりうる。

 しかし現実には、イスラエルとアラブは、結束できていない。アメリカは、
イスラエルとアラブとの結束をひそかに阻止しているふしさえある。ライス国
務長官は頻繁に中東を回っているものの、和平進展に貢献することを何もやっ
ていない。イスラエルは、イランやシリアと戦争させられかけており、潜在的
に滅亡の危機が忍び寄っている。
http://www.time.com/time/world/article/0,8599,1542699,00.html


この記事はウェブサイトにも載せました。
http://tanakanews.com/g1010mideast.htm


▽関連記事

サウジ高官と秘密会談?=イスラエル首相 [AFP=時事]
http://www.asyura2.com/0610/war85/msg/286.html
投稿者 white 日時 2006 年 10 月 06 日 09:13:30: QYBiAyr6jr5Ac

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