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イラク:
サマワ、治安悪化の兆し シーア派民兵に若者の志願急増
イラクではイスラム教シーア派とスンニ派の宗派間対立が激しさを増している。同国南部を中心にシーア派反米強硬派のムクタダ・サドル師率いる民兵組織マフディ軍が勢力を伸長、陸上自衛隊が今年7月に撤退したムサンナ県サマワでも治安悪化の兆候が出始めた。復興への道筋には暗雲が垂れこめている。【サマワで小倉孝保】
★マフディ軍台頭
イラク南部の拠点バスラから北上する途中、何度も多国籍軍の車列とぶつかったが、ムサンナ県に入ると外国兵の姿は消え、イラク軍と警察が目に付くようになる。多国籍軍のいなくなった同県で治安の最大の懸案要因はマフディ軍の台頭だ。県警によると最近、同県内でマフディ軍に加わる若者が急増。現在のメンバーは約7000人で、警察官(約6000人)の数を上回るという。
サマワの目抜き通りの円形交差点に9月上旬、サドル師の肖像画が掲げられた。自衛隊がサマワと日本の友好を記念して設置した石灯ろうの碑があった場所だ。サドル師派同県代表のイマッド・シャマリ師は「碑は日本による占領の象徴だった。肖像画設置で市民は占領拒否を表現したのだ」と語る。
マフディ軍にシーア派の若者が引きつけられている背景には、バグダッドを中心に激化の一途をたどるスンニ派との宗派対立や、改善の兆しが見えない失業状況などがある。マフディ軍の台頭はイラン国境に近いアマラやムサンナ県に近いディワニヤで顕著で、同軍が都市の大部分をコントロールしており、イラク軍や多国籍軍との大規模衝突が起きている。
★元大統領派も転身
サマワのハッサンさん(28)は最近、マフディ軍に加わった。旧フセイン政権時代には若者たちで作る親フセイン派のゲリラ部隊フェダイン・サダムのメンバーだった。ハッサンさんは「各地でシーア派とスンニ派が殺し合っている。シーア派を守るために戦おうと思った」と動機を語る。
マフディ軍との関係は不明だが、自衛隊撤退後、サマワでは旧バース党幹部の暗殺、シーア派のシスタニ師派代表の暗殺未遂などの事件が発生した。失業状況改善を求めるデモでは警察と住民が衝突し、双方で計12人が死傷した。
★UAEに移住
自衛隊を支援した住民にも不安が広がっている。サマワの日本友好協会会長を務めていたアンマル・ヒデル氏は経営する宝石店などを爆弾テロで破壊された。同氏はアラブ首長国連邦(UAE)への移住を決意し、ビザを申請した。
それでも、シーア、スンニ両派が混在し、宗派間衝突の絶えない地域に比べ、シーア派主体のムサンナ県の治安は比較的安定している。このため、サマワにはバグダッドやイラク中部バクバから宗派対立を避けて国内避難民が流入、既に数百世帯が移り住んだとされる。
★パン屋に行けず
バクバで駐車場などを経営していたモルタダさん(40)とダーファルさん(32)兄弟は9月15日に移住した。いとこがスンニ派過激派に殺害され、知人がテロで子ども4人を失ったのがきっかけだ。「この10カ月間、パン屋にさえ行けなかった。毎日、近所の誰かが殺された」とモルタダさんが語る。避難民の増加はイラク各地で深刻化する治安悪化を物語っている。
毎日新聞 2006年10月3日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/mideast/news/20061003ddm007030158000c.html