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□ブッシュ親子の愛憎劇とヒラリーの人たらし [国会TV]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20061114-01-0601.html
2006年11月14日
ブッシュ親子の愛憎劇とヒラリーの人たらし
アメリカ中間選挙は12年ぶりに民主党が勝利して議会の多数を制した。
その12年前の中間選挙で共和党を勝利に導いたのは後に下院議長になったニュート・ギングリッジ下院議員である。「アメリカとの契約」を掲げ、リベラル色の強い第一期クリントン政権を厳しく批判して国民の支持を得た。リベラル色を最も強く打ち出していたのは健康保険改革を主導したヒラリー夫人で、健康保険改革は「大きな政府」を嫌う国民に支持されなかった。中間選挙に敗北するとヒラリー夫人は直ちに政治の表舞台から姿を消し、内助の姿勢に徹することにした。当時その変わり身の早さに、政治家とはそういうものかと驚かされた。
元は歴史学者だったギングリッジ下院議員は弁舌一本で共和党内での地位を高めた。彼は「C−SPANコングレスマン」と呼ばれるほど議会中継専門局C−SPANに頻繁に出演して民主党批判を行い、そのため民主党が選挙に負けるようになった。これを怒った民主党のオニール下院議長は議会がC−SPANに映像提供することを差しとめようとした。そのときC−SPANの視聴者たちが「我々はC−SPANが見たい」と議会にデモをかけたことが話題になった。結局民主党もC−SPANにどんどん出演して発言すればよいではないかと言う事になり、C−SPANは存続することができた。
長年民主党が支配してきた議会を共和党が制すると、まず始められたのは議会の改革である。「小さな政府」を目指している共和党であるから議会職員の数も大幅に削減されることになった。日本では行政改革の対象にならない立法府の公務員に対してはなかなか改革のメスが入れられることはない。政治主導とは言え日本では考えられないことが起きてまたまた驚かされた。
それから12年、今度は民主党が上下両院を制することになった。これから何が変わるのか、国会TVでは11月10日夜に明治大学の越智道雄教授をゲストにアメリカ中間選挙を読み解くことにした。
越智教授には「ブッシュ家とケネディ家」(朝日選書)などの著作があり、ブッシュ家の事情に精通している。
中間選挙の敗北を受けてブッシュ大統領はイラク政策の転換を図らなければならなくなり、ラムズフェルド国防長官を更迭してロバート・ゲイツ元CIA長官を後任に据えた。 越智教授の目にはこうした動きの背景にブッシュ親子の愛憎劇が映っている。
東部エスタブリッシュメントそのものの父親と「出来の悪い長男」との間には様々な確執があった。ガレージでつかみ合いのけんかをしたこともあるという。父親は政治家を継がせるのは次男の方だと思っていた。しかしその父親の選挙を手伝う長男はマスコミ対策などに手腕を発揮する。強面の反面柔軟性もあり、民主党員を心服させる人たらしでもある。いつしかその長男が父親と同じアメリカ大統領になった。
「出来の悪い長男」は父親を意識し、父親からの自立を図ろうとしていた。そこに東部エスタブリッシュメントとは異質の考えを持つ強硬派が目をつけた。チェイニー、ラムズフェルド、ネオコンらが「長男」を取り囲み、大統領はネオコン路線を突き進んだ。そして父親の制止も聞かずにイラク戦争に突入した。
しかしイラク戦争は泥沼化して収拾がつかなくなり、その失敗が選挙の敗北となって現れた。父親の腹心であったジム・ベーカーらが中心となって超党派の「イラク研究グループ」が作られているが、ゲイツ新国防長官もそのメンバーであり、ブッシュ大統領がゲイツ氏を国防長官に任命したことは父親の側近グループに今後のイラク政策を委ねることを示している。
父親からすればいつまでたっても「出来の悪い長男」だが、世間の親と同じように出来が悪いからこそ可愛くもある。息子の失敗に父親が救いの手を差し伸べ、息子もその手にすがろうとしている。
一方、中間選挙の結果を受けてヒラリー・クリントン上院議員に注目が集まっている。2年後の大統領候補として最有力と見られるからだ。先に12年前の変わり身の早さに触れたが、その後の上院議員としての人たらしぶりも驚嘆すべき大変なものだ。
越智教授によれば、ヒラリー上院議員はリベラルで有能であることが自らの弱点にもなっていることをよく知っている。弱点を補うためにまず軍事委員会に所属して、軍事問題の勉強をはじめた。イラクに派遣されている米兵を慰問に訪れてもいる。法案の共同提出者になるときは必ず共和党右派の議員と名前を連ねるようにしている。しかし自分が法案を出すときにはリベラルな法案を提出する。そのようにしてバランスを取っている。
そして驚かされるのは日頃の行動だ。
議員たちと一緒に居るときには積極的にお茶くみをやる。お茶くみはウーマンリブが絶対に禁じていることだが、ヒラリーは皆にコーヒーをついで回る。さらには男性議員と酒の飲み比べまでやる。上院議員団でロシアを訪れたとき、ヒラリーが呼びかけてウオッカの飲み比べが催された。次期共和党の大統領候補と目されるマケイン上院議員が飲み比べに応じた。マケイン上院議員はベトナム戦争で北ベトナムの捕虜となりながら生還した戦争の英雄である。前々回の「北朝鮮の核とアメリカ」で紹介したように、1994年には北朝鮮の核施設を爆撃すべきだと強硬に主張した。そのマケイン上院議員とのウオッカの飲み比べにヒラリーは勝った。マケイン上院議員にすればは負けたことは恥だ。秘密にするのが普通だが、彼は嬉しそうにその話を周囲に明かしたという。ヒラリーの人たらしぶりはかくのごとくだ。
越智教授は「共和党はこれからヒラリー阻止に全力を挙げるだろうが、なかなか対抗馬は見つからない。考えたくはないが暗殺の対象にならないかが心配だ」と語った。
こういう話を聞くと日本の民主党も批判するばかりが野党ではないということをよく考えて貰いたいと思う。政権をとるということは国民の過半数から支持されなければならないということなのだから。