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(回答先: サウジアラビア、イラクとの国境に防壁を建設(アル・ナハール紙 News from Middle East) 投稿者 gataro 日時 2006 年 10 月 01 日 13:07:38)
報告者:東京財団 シニアー・リサーチ・フェロー 佐々木 良昭
No.431 「人類の愚行か、現代版万里の長城」 2006年09月29日
イスラエルがパレスチナのテロ攻撃を阻止することを主たる目的として、長大なコンクリートのフェンス(安全のための壁)を西岸地域に建設している。このフェンスは結果的に、イスラエルとパレスチナの国境にしたい、という考え方がイスラエルにはあるようだ。
同様のことがイスラエルとシリアとの間でも起こっていた。それは人口のフェンスではなく自然にあるゴラン高原の領有をめぐってだった。ゴラン高原がシリアの領土であったものを、イスラエルが1967年の第三次中東戦争で占領して以来、今日なおシリア側に返還していない。
それは、ゴラン高原がシリアとイスラエルとの国境に位置する高地であり、そこからは、シリアの首都ダマスカスが一望できる。したがって、非常に重要な戦略拠点だから返還しない、ということだった。
しかし、その結果、イスラエルとシリアはいまだに敵対関係が続いており、シリアはアラブ諸国の中で、最も急進的なアラブ民族主義の牙城となっており、和平の可能性が無いばかりか、イスラエルとシリアとの間では、何時戦争が起こっても不思議はない、緊張した関係が続いている。
アメリカもまたメキシコからの不法移民を阻止する目的で、国境に長大なフェンスを設けている。
サウジアラビアも似たようなフェンスを、これから建設しようとしている。全長900キロメートル、予算120億ドル、5年から6年の歳月を費やして建設しようということのようだ。
サウジアラビアの場合、フェンス建設の目的は、イラクの国内混乱がサウジアラビア国内に影響を及ぼすことを阻止することに加え、イラクからのシーア系テロの侵入、アルカーイダの侵入を阻止することが目的のようだ。
しかし、フェンスが完成する前に、サウジアラビアの王制は打倒されるかもしれない。私に言わせれば、基礎体力の無い人が、風邪が流行したからといってマスクをかけるようなのもではないか、と思えてならない。
ドイツも東西に分断され壁が建設されたが、最終的にはその存在が、なんら状況の維持に役立たなかった。多くの悲劇が、その壁を原因に起こっただけではなかったのか。
中国が同様に万里の長城を気の遠くなるような年月、膨大な費用を費やして建設したが、それがどれだけの効果をもたらしたのか。
国の安全の確保は、外敵への対応もさることながら、権力側と国民との信頼関係の構築にあるのではないか。偵察衛星が世界中の上空にあり、インターネットが即時に情報を伝え、ミサイルが発達したいま、どれだけ高いフェンスも、どれだけ長いフェンスも、その国の安全を守るとはとても思えないのだが。
http://www.tkfd.or.jp/news/today/1_20060929_1.shtml