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スリランカ国土。濃い緑のところがタミル人地域。
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□スリランカ政府軍の「検問」で電気もバスも止まる少数民族地域 [JANJAN]
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スリランカ政府軍の「検問」で電気もバスも止まる少数民族地域 2006/11/03
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スリランカ政府軍と反政府武装勢力「タミル・イーラム解放の虎(通称タミル・タイガー)」との間で再燃した内戦の停止を模索する、和平会議が10月28、29日の両日、ジュネーブで開かれたが、決裂した。
決裂の主な理由は2つ。ひとつはタミル人地域と外部とを結ぶ国道9号線の封鎖解除をタミル・タイガーが求めたが、政府軍側が拒否したこと。もうひとつは、政府軍が海上輸送の安全確保の保証を求めたが、タミル・タイガー側が応じなかったため。
政府軍「検問」は明らかな経済制裁
少数民族タミル人のほとんどはスリランカ北部と北東部に住む。海岸線は抜け穴は多いが、政府軍が包囲している。国道9号線を封鎖することは、タミル民族への物資の供給を絶つことにつながる。この「検問」に人道的見地からの批判があるのは、こうした事情からだ。
スリランカ政府は封鎖の理由として、国道9号線のチェックポイントでタミル・タイガーが通行税を徴収していることを挙げた。これは明らかに口実。チェックポイントでの通行料金徴収は、はるか以前から行われているからだ。昨年1月と11月、筆者も通行料を払った。これに対して封鎖は8月初旬から始まったばかりである。
それぞれのチェックポイントには政府軍のものとタミル・タイガーのものとがある。二重になっているのだ。通行車両、通行人は2度、チェックを受けることになる。
タミル・タイガーの通行料金徴収以上に悪質なのが、政府軍のチェックポイントでの厳重過ぎるほどの積荷検査だ(写真参照=中段)。トラックの積荷をすべて降ろさせるのだ。軍事転用できる物資の持ち込みを防ぐため、と言われている。だが、降ろした積荷は、また積み込まなければならない。順番待ちの時間もあるので、満載の大型トラックなどでは、ほぼ1日仕事となる。
このチェックでドライバーの人件費、宿泊費が余計にかかり、輸送コストがかさむ。タミル人地域の経済にはダメージだ。これは、レッキとした経済制裁である。
幹線道路閉鎖に兵力増強で対抗
国道9号線はスリランカ国土の中心部から北端までを貫く大動脈だ。当然、戦略要衝となる。9号線をめぐる攻防は、先の内戦(1983〜2002年)の帰趨を決めるほど苛烈だった。道の両脇が今だに地雷原となっている区域もある(写真参照=上段)。「死の道路」と呼ばれるゆえんだ。
前述したようにタミル人地域への物資の搬入は、入り口が狭められている。今回はそれがエスカレートし、一大幹線道路が閉ざされた。スリランカ政府は経済封鎖に踏み切ったとも言える。
深刻なのは、この地域にディーゼルオイルが届かなくなっていることだ。火力発電に頼っているため、最北端のジャフナ県では電力不足に陥っている。電力の供給は朝2時間、夕方3時間の計5時間に制限されている。
発電所の技術者によれば、ディーゼルオイルの蓄えは、あと数日分しかない、という(10月30日現在)。タミル・タイガーの影響が強い「TamilNet」が報じていることなので、いささかの誇張はあるかもしれない。だが電力の供給制限は、この夏頃から既に伝えられていた。タミルの人々が電力不足に喘いでいることは事実だろう。
「TamilNet」によれば、ジャフナ県では役所の事務にも支障が出ており、唯一の公共輸送機関であるバスも一部の区域を除いて運転が止まっているという。
和平交渉が決裂した翌日の10月30日、タミル・タイガーはジャフナ県近くの前線兵力を増強する、と政府軍に向けて警告した。
◇本記事の執筆には「TamilNet」「Reuters」「New York Times」「スリランカ国内紙」などを参考に採り入れました。
(田中龍作)