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□「平沼外し」は茶番だ [AERA]
http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20061204-01-0101.html
2006年12月4日
「平沼外し」は茶番だ
安倍政権の大番頭・中川幹事長と、郵政造反組の旗頭・平沼元経産相。
お互い筋を通しているように見えるが、だまされてはいけない。
平沼赳夫元経産相は声を高めて20分余り、郵政民営化法案に反対した理由を滔々と述べた。
「郵政民営化法案を、小泉首相は改革の本丸と位置づけた。私は三つのことで問題だと確信した」「まず閣議で法案を決めて、因果を含めて党に下ろしてきた。『自由民主』という政党のわりに、大変荒っぽいやり方で党を通した」「郵政民営化法案に2回反対したのは私だけだ」――。
これは1年前の話ではない。11月21日の講演だ。法案に反対して自民党を離党した「造反組」の無所属議員らを代表して、中川秀直幹事長と、復党について折衝する前日のこと。まるで自民党に改めて宣戦布告するかのようだった。
交渉長びき青木氏爆発
昨年の「郵政解散」の際に離党して総選挙を戦ったのは34人。このうち、無所属で立って小選挙区で勝った12人の復党を認めるのか認めないのかが目下、自民党の最大問題になっている。幹部の間で意見が割れ、すっかりこじれてしまった。迷走の跡を辿ると――。
安倍首相はもともと早期復党容認の立場だった。平沼氏はもとより古屋圭司氏、落選組では衛藤晟一氏など、首相と政治信条の近い「仲良し」が多い。復党問題について首相は「(民営化を確実に実施すると明記した)私の所信表明演説の基本的な方針に同意・賛成をしてもらい、同じ方向で国づくりに努力するのが当然だ」と就任後に発言。造反組12人は全員、首相指名で安倍氏に投票した。それならすぐに戻せば、と思うところだが、話はそう簡単ではなかった。
安倍首相を自民党総裁選で支えた若手・中堅や現官邸メンバーをはじめ、首相の足元に復党反対派が多いのだ。反対派は「戻して得る票よりも離れていくほうが多い」と警戒。「復党させれば内閣支持率が下がる」「(離党組に)新党をつくらせて統一会派を組むのが一番分かりやすいし、彼らにもメリットがある」と繰り返し進言してきた。安倍首相は次第に考え込み、やがて「幹事長に任せている」と口をつぐむようになった。
参院自民党を取り仕切るドン・青木幹雄参院議員会長らにしてみれば、苦戦が予想される来年夏の参院選に備えて、選挙に強い無所属当選組を戻したいところ。できれば落選組も含めて一挙に復党させようと考えていた。
10月上旬のこと。青木氏は、森喜朗元首相や中川幹事長と一緒に安倍首相に会い、復党を迫ったという。ところが、反対論もあって交渉は長引く。しびれを切らした青木氏は11月24日朝の自民党役員連絡会で「(復党の)条件に異議がある。郵政を入れるのはおかしい」と爆発してしまった。
一方、中川幹事長にしてみれば、小泉改革を継承するという安倍政権の立場、そして内閣支持率の低下を防ぐことを考えると、当初は反対せざるを得なかったようだ。
「与党は『権力維持のためなら何でもあり』であってはならない。小泉改革を進化・発展させる安倍自民党の幹事長は、小泉政治的DNAをしっかりと継承する使命がある」(自身のホームページで)
だが、衆院補選や沖縄県知事選で勝ったこともあってか、森氏や青木氏にも配慮してか、徐々に復党容認に姿勢を変えた。かといって「何でもあり」になって国民の批判を浴びないようにと、誓約書を書かせるなどのハードルを設けたわけだ。中川氏周辺によると、こう漏らしたという。
「戻せば内閣支持率は10〜20%落ちるだろう。でも何とか10%でとどめたい」
都合よく「国民」使い
当事者の議員たちは、戻るほうも戻られるほうも大変だ。
たとえば岐阜1区の野田聖子衆院議員と、「刺客」だった佐藤ゆかり衆院議員。総選挙では、離党した野田氏が無所属で勝ち、敗れた佐藤氏は比例区で復活当選した。だが、自民党の1区の支部長は当然ながら佐藤氏だ。地元では怪文書が出回ったり、あるいは動物の死骸が自宅に投げ込まれたとか、なんともどろどろした状態なのだ。
佐藤氏が復党反対署名を幹部に提出してテレビカメラの前に立てば、野田氏は支持者と長野県内で密談。23日には自民党岐阜県連の会合で、来賓の中川昭一政調会長が「政治には最後に情が必要」と復党容認とも受け取れる発言をして、佐藤氏が顔をこわばらせる一幕もあった。こんな状態で野田氏が復党したらどうなるのだろうか。
そんな永田町のドタバタに、郵政民営化騒動で振り回された地方には、冷ややかな視線を送る人たちがいる。東京から新幹線と在来線を乗り継いで2時間半。日本海に面した新潟県上越市は、郵便制度をつくった前島密の誕生の地だ。ここには、特定郵便局長OBらの政治団体「大樹」の会長・田中弘邦氏が局長を務めた郵便局がある。
この郵便局ができたのは、郵便制度が発足した1871年の翌年。町内の「よろず相談所」でもあった。担当管内に住む3500人はみんな顔見知りで、政治的な影響力もあった。だが、来年には統合され、11人いる職員は3人に減る。田中氏は、今も割り切れない気持ちだ。
「小泉さんは1年半前、郵政民営化法案を通すために『国民に聞いてみたい』と言って解散した。今度は、復党させるための理屈として『国民の理解を得るために』と言って(誓約書を出させようとしたりして)いる。自民党は都合のいいように『国民』を使っているようにみえる」
混乱が長引くに従って、安倍首相にも批判の矛先が向きつつある。いわく、「首相の姿が見えない」「優柔不断」「現実逃避」……。
結局、復党問題は「古い自民党」を取るか「新しい自民党」を取るか、という問題なのかもしれない。小泉前首相は「大樹」などとの旧来のつながりを「既得権」と切り捨てて「業界団体型選挙」をやめた、はずだった。11月半ば、小泉前首相は国会内の自民党控室で議員らを前に、こう語った。
「復党させて参院選に勝とうとすれば逆になる。その2倍の票が逃げていく」
「総理ごっこ」と批判
安倍首相も参院選の候補者を差し替えようとしたり、独自に参院の閣僚人事を決めようとしたり、古い秩序を打ち破ろうとする動きもみせたが、断念。今度はどうするのか。離党者の古参秘書は語る。
「小泉さんは、けんか上手だった。安倍さんは果たして、どれだけけんかができるのか。平沼さんは、それを見ている」
政府関係者の中には、復党問題が政権崩壊のきっかけになりかねない、とみる人もいる。
「佐藤孝行問題を思い出す」
と言うのだ。97年、当時の橋本龍太郎首相は、ロッキード事件で有罪が確定した佐藤氏を総務庁長官に任命した。ここから政権の求心力が急低下し、1年もたたずに退陣したのだった。
ある派閥の幹部は、こう言って安倍氏を批判する。
「胆力も決断力もリーダーシップもないから、こうなる。総理大臣ごっこをしているだけ。復党問題だって、とんだ茶番劇だ」
多くの課題を抱え、来年度予算案の編成もしなければならないという忙しい年末に、こんな喧騒が続くのには理由がある。参院選に向けてゴタゴタはなるべく早く収めたいということもあるが、1月1日現在で算定される政党交付金の問題もあるからだ。離党組が戻れば、人数に応じて自民党への交付金も増える。また、無所属のままだと台所事情が苦しい離党組にしてみれば、戻らないなら新党をつくって交付金をもらうという手もある。
だが、そもそも総選挙に出た時の立場を、選挙を経ずに変えていいのか。
現職閣僚の一人は、こう指摘する。
「離党組は、自民党候補が出ている選挙区から出馬した。戻るのか戻らないのかを問う選挙を戦って、通ってから戻るのが筋だ」
これが正論ではなかろうか。
編集部 秋山訓子
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