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2006年12月1日 (第1、第3金曜日更新)
第19回 偽米ドルをつくっている真犯人は誰だ?
メディアが語っていることは善であり、真なのだろうか?
月日がたつのは本当に早いもので、今年ももう「師走」となった。昨年3月末に外務省を自らの意思で飛び出して以来、これまでずっと全力疾走だったが、今年は昨年にもましてさまざまな幸運に恵まれた一年だったように思う。
その一つが、会員制で毎月一回開催している「原田武夫塾」(外部サイト)に出席くださっている熱心な個人投資家の方々との出会いである。金融資本主義の荒波を生き残るために必要な情報を毎日発信し続けている私とはいえ、それに熱心に耳を傾けてくれる個人投資家の方々を目の前にして講義するとなると、大いに緊張する。私自身の頭の中では、マネーの潮流が織り成す「世界の潮目」の今とこれからについて整理されているつもりでも、これをその場で表現し、他の人に伝えるとなると別な能力が必要となる。「塾生」の方々からは、発展中である私の分析に対し、時に手厳しい質問が教室で飛び交う。しかし、「『世界の潮目』を自ら感じ取ることのできる個人投資家が一人でも増え、彼らが『新しい中間層』へと脱皮することによってだけ、日本は変わることができるのだ」という私の政治的信条を、塾生の皆さんが暖かいまなざしで見守っていて下さっている。お一人お一人が私にとっては大切な存在だ。
その「原田武夫塾」の会合がつい先日(11月18日)、東京・丸の内で開催された。その時、こんなやりとりがあった。
「皆さん、日経平均株価をベースとして、日本株マーケットは今後どうなると思われますか? 私(注:筆者)は、かねてよりご説明しているとおり、早ければ11月半ば、すなわち、間もなく大崩れになる可能性が高く、そのトレンドは年末までおおむね続くと思っていますが……」
「いえ、これからむしろ上がるというのがメディアなどでの大勢ですよ。人によっては、月末に向けて日経平均株価は2万円を越すのではないかといっているアナリストもいます。日経平均先物の取引で、個人は『買い』を重ねている人が多いですね」
それでは、「現実」はどうなったのか? 週明け(11月20日)、日本株マーケットは日経平均株価で時に300円を越す大暴落となった。とりわけ新興市場ではストップ安となる銘柄が続出し、マーケットは正に「ロング(買い)」しかしていない個人投資家による「阿鼻叫喚図」と化した感がある。
私は、この場で何も自らの「予測能力」の高さを誇りたいというわけではない。また、私の問いかけに対し、「日経平均先物の「重ね買い」こそトレンド」と語った塾生の方をあげつらおうというわけでもまったくない。相場は「水物」である。当たるも当たらぬも、ある意味、確率論でしかない側面が常にあり、その中の一局面だけをとって、投資家としての能力を測ることは不適当だ。
むしろ、私がこの場で申しあげたいのは、「メディアにおいて大勢な議論」とは一体何なのかということである。確かに、マスメディアは「社会の木鐸(ぼくたく)」とよばれ、(少なくとも日本では)基本的に「性善説」に基づく好意的なまなざしで見つめられることが多い。すなわち、「メディアが語っていることは善であり、真だ」という視線である。
しかし、果たしてそれで良いのだろうか。私たちは、そうした「性善説に基づくメディアのイメージ」にとらわれ、そこでの「大勢な議論」に盲従した結果、連日のようにマーケットでなけなしの虎の子を、むしりとられ続けるままであるべきなのだろうか。
「北朝鮮による偽米ドル作り問題」は、米国による自作自演の疑いがある
ここで、メディア、とりわけ日本のメディアとは一体何なのかと考えざるをえない話を一つ紹介しよう。「北朝鮮による偽米ドル作り騒ぎ」についてである。
北朝鮮問題といえば、日本人にとって第一に「拉致問題」、第二に「ミサイル問題」、そして第三に「核問題」であろう。ところがこの「問題群」の中に今年の春になって突然、走りこんできたもう一つの問題がある。それが「偽米ドル問題」である。
「米国を始めとする各国の情報機関から得た情報を参考にした」と豪語する日本人ジャーナリストが突然、「小説家デビュー」し、この問題を春先から喧伝し始めたのは読者の方々にとっていまだ記憶に新しい出来事であろう。どういうわけか、この「小説家デビュー」の直後、ブッシュ大統領が率いる米国政府は「北朝鮮は精巧な偽米ドルを大量につくっている」と大声で対外発表し始めた。日本のメディアも当然これを大々的に報道する中、件のジャーナリスト氏が一躍「大スター」となったことはいうまでもない。そして今や、「北朝鮮=偽造紙幣の犯人」とのイメージは、北朝鮮について関心を持つ人ならずとも、日本人なら誰しも思いつくようになっているのではなかろうか。
しかし、ここにきて、ある「奇妙な報道」が地球の裏側で突然流され始めた。これを流したのは「ノイエ・チューリッヒャー・ツァイトゥング」、世界有数の金融大国であるスイスのチューリッヒで発行されている伝統あるドイツ語新聞だ。
11月19日付の同紙インターネット版に掲載された記事「初心者のための北朝鮮入門」がその記事である。20日にメールマガジン「元・原田武夫の『世界の潮目』を知る」(外部サイト)でご紹介したその内容を、かいつまんで言うと、次のとおりとなる。
「約1年前より、ブッシュ政権は北朝鮮が米ドルを偽造していると主張し、これが現在、各国によって行われている対北朝鮮経済制裁を発動する際の根拠となった。しかし、そもそも極貧の北朝鮮に、米国すらも驚愕(きょうがく)するような偽札を作りあげる能力があるのだろうか? ――ドイツの有力紙であるフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング(Frankfurter Allgemeine Zeitung)の元特派員で、紙幣専門家であるクラウス.W.ベンダー氏は、今年5月に刊行した著作『マネーメーカーズ』でそうした疑問を投げかける。それでは一体、北朝鮮以外の誰がそうした精巧な偽米ドルをつくっているというのだろうか。確信を持ちつつも、用心深く、ベンダー氏は米国・ワシントンの北部を指差すのである」
要するに、「北朝鮮による偽米ドル作り問題」とは、米国による自作自演の疑いがあるというのだ。このことが「真実」であった場合、私たち=日本の個人投資家が持っている「世界観」はものの見事に崩壊するであろう。なぜなら私たちはこれまで、「北朝鮮とはリスクであり、そのリスクから救ってくれるのが米国である」とマスメディアを通じて思い込まされてきたからである。その「救世主」こそ、「地震源」であるとは、まさに悪夢のコペルニクス的展開としか言いようがない。個人としての投資のみならず、安倍政権の下、「国家全体」としてもブッシュ政権率いる米国に「賭けて」きた日本人としては、もはやあぜんとして立ち尽くすしかないのだ。
歴史的に、米国が自ら奥の手としての経済撹乱工作を行なっていた
これまでこのコラムでは、北朝鮮を何度も取り上げる中で、北朝鮮問題の核心とは何かを探ってきた。ところがそこで述べた内容について、お決まりの「陰謀論」とのレッテルを貼りたがる人たちがいまだに大勢いる。そのようにして固定観念をあえて重ね塗りすることによって、日本の個人投資家の方々が自ら思考し、米国によって「閉ざされた言語空間」である日本のメディアを乗り越えつつ、投資活動を行うのを妨げようとする彼らからの「反論」を、あらかじめ先取りする形で申しあげておきたいことが一つある。
それは、歴史的に見れば何を隠そう、米国こそ、軍事作戦の中では偽造紙幣を容赦なく用いる国家であることは明らかだということだ。たとえば、1945(昭和20)年から日本を占領統治したGHQの内部部局である「参謀第2部(G2)」の傘下において、日本および朝鮮半島での情報工作活動にあたっていた特殊機関「Z機関(キャノン機関)」で参謀格をつとめた韓国人将校・延禎はその著書「キャノン機関からの証言」(番町書房)の中で、1951(昭和26)年当時、「某国内の経済撹乱をおこなうというプラン」として偽札の製造を含む通称「冷蔵庫作戦」があったことを認めている。
延禎はこの「某国」が一体どこであるのかは明示していない。しかし、この計画が立案されたのは、韓国軍などが朝鮮戦争で苦戦していた1950(昭和25)年当時であったことを示唆していることから、おそらくは北朝鮮による支配地域での経済撹乱を狙っての作戦であったのだろう。
延禎によれば、結局、冷蔵庫作戦は上司の命令によって取りやめとなり、日本の警察から引渡しを受け、協力者として育てようとしていた偽札づくりの名人たちも解放したのだという。しかし、「一事が万事」である。軍事的な作戦行動として、米国が偽札づくりをこのほかにも無数に計画し、実施してきたことは当然想定できるのである。しかも、朝鮮戦争の結果、「終戦」ではなく「停戦合意」しか結んでいない米国と北朝鮮はいまだに「戦争状態」にある。つまり、いかなる形であれ、北朝鮮に対する勝利のためであれば軍事作戦を行うことは、米国政府にとって「正しいこと」なのである。そしてそのなかから、米国が自ら奥の手としての経済撹乱工作、すなわち「偽札作り」を排除するわけもない(ちなみに米軍が一般の「米ドル」とは別の特殊な「米ドル」を自ら発行しているということは、マーケットの深淵な場所に暮らす人々であれば知っている「事実」である)。
ブッシュ政権と一緒になって騒いできた日本のメディアの実体は!?
ここでこのコラムの読者である個人投資家の方々にぜひ考えていただきたいのは、次のいくつかのポイントである。
まず第一に、米国による「宣伝工作」にもかかわらず、なぜスイスは果敢にも「北朝鮮による偽札作りとは、米国による自作自演の可能性がある」と報じたのだろうか。一般の日本人にとってまったくなじみがなくとも、この「ノイエ・チューリッヒャー・ツァィトゥング」とは欧州随一の伝統ある新聞であり、しかも金融都市・チューリッヒに流れる世界中の情報をキャリーするものとして名高い。これに掲載するのに、何らかの戦略的な意図がないとは思えない。ちなみにここにきて急に、スイス・フラン買いとドル売りが一つの流れとなりつつ、世界的な「ドル安」が生じている。
第二に、こうした記事がなぜ「今」報じられたのであろうか。六か国協議が12月中旬にも再開されるというタイミングで、こうした報道が出ることによって、最も不利益を被るのはブッシュ政権であるはずだ。そうなると、スイスと米国との関係は今、一体どういった状況におかれているのだろうか。北朝鮮を巡って、どんな「利益相反」があるのだろうか。
第三に、この報道が典拠としているベンダーの著書はドイツで出版されたものである。ブッシュ政権にとって不利な内容である以上、事実上の差し止めを狙って、何らかの工作ができたはずである。しかし、それがおこなわれずに世に出たため、半年もたった今になってスイスの新聞に引用されるに至っている。――この本の出版を可能にした勢力は、ブッシュ政権とその背景よりも「大きな存在」であるのか否か。もしそうであるならば、一体、どこの誰なのか。
こうしたいくつかのポイントを読者の方々がじっくりと考えている間にも事態は進行し、やがて(実は仕組まれている)ひょんな出来事から「事の実態」が徐々に明らかになってくることであろう。すると、「今年の春から、『北朝鮮が偽米ドルづくりの犯人だ』とブッシュ政権と一緒になって騒いできた日本のメディア、そしてその中でそうした持論を展開してきた有名ジャーナリスト氏とは一体何者なのか」という疑問を持たざるを得なくなってくるはずだ。――「構造改革」を叫ぶ論陣、そしてその背後にいる米国が、唯一温存してきた「構造」が日本のメディアなのである。しかし、北朝鮮をめぐりまもなく生じるであろう「事態の急変」によって、その中でたくみに泳いできたはずのメディア人たちの化けの皮がはがされる可能性がある。正にこれこそ、ヘーゲルの歴史哲学でいう「理性の狡知」にほかならない。
戦後まもなくにおこなわれたGHQによる占領統治の中で「閉ざされた言語空間」にとどまっている限りにおいて、日本人の個人投資家たちがその呪縛から自らを解放する手立ては残念ながらほとんどない。だが、それをあえて実現するには、言語の壁を乗り越えつつ、「閉ざされた言語空間」の向こう側に広がる「真実」という豊穣な土地に勇気をもって飛び込むしかない。皆様がそうした「勇気ある一歩」を踏み出すためのお手伝いを、日々全力ですること。――これが今の私に与えられた天命なのだと思っている。
※ 原田武夫についてのさらに詳しい情報は、「しごとの自習室 - 原田武夫通信」をご覧ください(外部サイト)。
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