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毎日新聞 昭和43年7月10日(夕刊)
投票入場券、10万通消える
大量の不正投票か
世田谷など 本人の手に届かず
東京都内で参院選の投票入場券約十万通が有権者のもとに着かず、どこかにまぎれ込んでいたことがわかり、問題になっている。
七日の投票日に、他人の入場券で投票しようとしだ”替玉投票”が各投票所で相次いで発生しており、これら”行方不明入場券”で、二重投票されたケースはかなりの数に上るものとみられている。あわてた各区選管では調査に乗出したが「入場券の郵送形式を改めない限り、防止できない」と頭をかかえている。
マンモス選挙区東京では、投票当日の混雑緩和と投票事務手続きのスピードアップを図るため、有権者に投票入場券を郵送、投票当日各投票所で入場券と引替えに投票用紙が渡される。ところが、有権者の多い区では選挙人名簿の整理をしてから入場券を郵送するまで約一ヵ月近くかかり、この間に他府県に転出したり、都内他区に引っ越した有権者の入場券は「あて先人不明」で選管に返送されるが、返送分は約半数で、あとの半分はどこかにまぎれ込み、行方不明になってしまう。
こんどの参院選でも都内一の”マンモス票田”の世田谷区では当日有権者数五十三万千八百四十二人に対し、六月二十日、入場券を郵送した。しかし、投票日の七日には区内七十二投票所に「入場券が届かない」という有権者の苦情が相次ぎ、約八千人の有権者にその場で入場券再交付を行なった。
ところが、この八千人にはじめ郵送した投票入場券のうち約四千通が、同区選管にあて先人不明で送り返されてきた。あとの四千通は配達されたのか、配達後にポストから抜取られたのか、いずれにしても本人に届かずどこかにまぎれ込んだらしく、まったく不明。投票当日の七日午前と午後に第十一投票所(富士中)と第三十八投票所(松沢小)で他人の入場券を係員に提出して投票用紙を受取ろうとした”替玉投票”事件があり、第三十八投票所の違反者は現行犯で逮捕された。
このようなケースは各区の投票所でも相次いで発生。有権者当人が再交付入場券ですでに投票を終わっていた十数件は、違反が発見されたが、有権者が投票を棄権していた場合には、まったくのわからずじまい。都全体では七百八十三万五千五百九十八人の有権者中、本人の手に渡らなかったのは約十万通にのぼるとみられ、このうち相当数が”他人”の手で投票された疑いもあるという。
このため、各区選管は選挙終了後、この問題について話合いを行なっているが(1)郵送前日まで選挙人名簿の整理が出来ればよいが、有権者が多く不可能だ(2)配布した場合、郵便配達人が有権者に手渡してくれればよいが、ポストなどに入れるのがほとんどでポストから抜取られてしまう(3)投票所では本人に間違いないかどうか生年月日などを質問することがあるが、有権者が多く一人々々というわけにはいかない、などの問題があり、解決方法はないという。
世田谷区選管田中昭二選挙係長は「五十万通の入場券を世田谷、千歳、玉川、成城の四郵便局から郵送したが、このうち約一パーセントがどうしても本人の手に渡らないようだ。このため、選挙人名簿の整理から郵送日までをなるべく短期日にしようと努力しているが、なに分にも有権者が多く転出者のチェックはむずかしい。投票当日都内各区内で替玉投票が起こっており、都内では半数の約五万票が二重投票されている疑いもある」という。
逮捕者は十人
警視庁参院選違反取締本部では十日までに”替玉投票”で七件十人を逮補している。替玉投票の行なわれたのは世田谷、江東、中野、豊島、台東、新宿区などで、手口は郵便受から抜き取ったケースが多く、有権者がアパートや下宿住まいの場合が多い。
このほか、渋谷区でも有権者が再交付の入場券で投票したあとへその人の入場券を持って投票しようとした詐欺投票事件が三件起きている。
郵送方式を改めねば…
東京都選管選挙一課、児玉明典指導係長の話── 今度の参院選ほど入場券が届かないという苦情が多かったことはない。投票前から”悪用されると困る”といやな気がしていた。正式な報告がないのではっきりしないが、都全体で十万通に近い入場券が有権者の手に渡らなかったかもしれない。表面に出たのは氷山の一角で、あとはどうなっているのか見当がつかない。いまの投票様式をかえない限り、この種の違反はなくならないと思う。将来は選挙民手帳による方法が一番よいと思う。(以上、毎日新聞より)
■集団替え玉投票事件
創価学会は1968年(昭和43年)7月の参議院選挙において、投票率が低く、住民の移動も多く(従って替え玉投票をしてもバレにくい)、アパートなどの郵便受けに選挙投票券が入れたままになっていることが多い新宿区や世田谷区などを中心に、投票券を持ち去り替え玉で公明党に票を入れる「集団替え玉事件」を起こした。
「創価学会では、この時の選挙で、全都内でこうした投票券を使っての詐欺投票を行ない、新宿区、世田谷区、その他各区で検挙され、多数の有罪者を出した。その総数は、組織内調査の結果、二万を下らなかったと記憶している」
その頃、創価学会の顧問弁護士だった山崎正友は、そう『懺悔の告発』に記している。
この替え玉投票は、事前に投票券の本当の所有者の生年月日などを確認し、しかも年格好の合った学会員を使うという悪質極まるものだった。
投票当日に、自分の名前で誰かが既に投票していることなどを知った人などが出たことから、事件は表面化し、警察が指紋照合や聞き込みなどを行い、近くに住む創価学会員が割り出され、捜査は創価学会に向かった。
ついに検察は、アパートの住民及び前住民などの不在投票者総てをチェックする方針を固めた。創価学会は、北條浩、竹入義勝など、創価学会・公明党の全幹部、弁護団を動員しもみ消しに走っていたが、それを知りパニックに陥ったという。
顧問弁護士として事件の処理を受け持っていた山崎正友も、逮捕された学会員が総てを供述し始めたため、証拠隠滅工作容疑で逮捕状を執行されそうになったという。
「竹入委員長は、警視庁首脳とサシで会い、『共産党と本気で戦う我々を見殺しにすると、日本は大変なことになる』と訴え、創価学会の生命乞いをした。
その結果、検察庁側からの捜査要請を警視庁が拒否するという異例の形で、事件拡大は辛うじて防がれた。
この時、警視総監のお目こぼしと検察の断念がなかったら、今頃、公明党は存在していない」(『懺悔の告発』山崎正友著)
創価学会=公明党は、《言論弾圧事件》でも、田中角栄、笹川良一などを使って相手の懐柔につとめたが、この時もそういったような人脈が動いたのかもしれない。
投票日の翌日の7月8日、池田大作は創価学会の外郭企業社長を集めた『社長会』で、次のように言っている。
「警察だって動かしているのは竹入、井上だよ。龍なんかおどすだけで味方にならない。竹入の一声だよ」
創価学会=公明党は、国政に進出してから今日まで、ずっと参議院法務委員長のポストにあり、1965年の参院選で大量の選挙違反者を出した時には、竹入義勝が警察首脳にこう脅しをかけた。
「このまま捜査を拡大させるようだと、警視庁の予算、とくに機動隊の予算を、大幅に削るぞ」
この時も事件はもみ消され、池田は竹入らをねぎらった。
参考: 「警察の創価学会汚染」乙骨正生(ジャーナリスト)
http://www.forum21.jp/contents/04-9-1.html
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