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http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp200612170143.html
【ワシントン16日共同=太田昌克】日本で軍部ファシズムの台頭につながった一九三五年の「天皇機関説事件」をめぐり、文部省思想局(当時、以下同)が憲法学者ら十九人を「速急の処置が必要」など三段階に分類、機関説の修正に応じない場合は講義を担当させないなどの報復措置を警告し、学説の変更を強要していたことが十六日、分かった。思想局の秘密文書が米議会図書館に保管されていた。
事件から七十年余。政府が学者を個別に攻撃、転向を迫る徹底した思想統制の過程が個人名や具体例とともに判明した。複数の専門家は、文部省による具体的な圧力の実態を記した文書が確認されたのは初めてだとしている。
文書は、米国が終戦直後に日本で接収した「各大学における憲法学説調査に関する文書」で、計約四百五十ページ。
それによると、思想局は天皇機関説排撃の気運が三五年前半に高まったことを受けて憲法学説を本格調査。機関説を支持する度合いに応じ、十九人の学者を「速急の処置が必要」「厳重な注意が必要」「注意を与えることが必要」の三段階に分類した。
その上で著書の改訂や絶版を求め、従わない場合は(1)著書発禁や憲法講義の担当解任(2)講義休講−などの報復措置を取ることを決定した。
(1)には機関説事件に絡んで貴族院議員を辞職する美濃部達吉・東京帝大名誉教授の弟子、宮沢俊義・同大教授らが(2)には佐々木惣一・立命館大教授らが該当。対象となった学者は講義内容を変更、著書三十冊以上が絶版に追い込まれた。
文書によると、一部の学者は「拙著憲法原論は根本的に修正しつつ講義を進めている」などとした上申書を提出した。
美濃部氏が唱えた天皇機関説は「国の統治権の主体は国家にあり、天皇は国家を代表する機関」とする学説。当初は政府も容認していたが、三五年二月に一部議員が議会で攻撃。右翼団体が排撃運動を進めた。美濃部氏が十九人の中に入っていないのは、既に著書発禁などの処分対象になっていたためとみられる。
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