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水準を満たさない学校と不適格教師は退場してもらう=下村博文/内閣官房副長官 [中央公論]
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投稿者 white 日時 2006 年 10 月 26 日 20:28:08: QYBiAyr6jr5Ac
 

□水準を満たさない学校と不適格教師は退場してもらう=下村博文/内閣官房副長官 [中央公論]

▽安倍新政権のキーマンが語る 水準を満たさない学校と不適格教師は退場してもらう=下村博文/内閣官房副長官(その1)

 http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20061026-01-0501.html

安倍新政権のキーマンが語る 水準を満たさない学校と不適格教師は退場してもらう=下村博文/内閣官房副長官(その1)
公立校には、意欲ある教師の足を引っ張る横並び意識がはびこっている。
改革により、健全な競争を促し、公立の「私学化」を図るべきだ
悪しき平等主義の横行
――九月二十六日に就任した安倍晋三首相は、自民党総裁選の過程で憲法改正などと並んで、「教育改革」を重点的に訴えてきた。教育を最優先課題のひとつに挙げた安倍首相の真意は何か、具体的にどのような対策を考えているのか。
下村 安倍首相は小泉前首相と違い、理念的・哲学的に考えるタイプの政治家だ。日本国の首相の責任として、五〇年後の日本のかたちまで視野に入れ、教育が重要だと考えたのだろう。
 教育改革を実行するにあたっては、まず先の通常国会で継続審議となった教育基本法改正案をこの臨時国会において、できるだけ速やかに成立させる。ただ、教育基本法が変わっただけで教育現場が変わるわけではない。教育基本法はいわば教育における憲法。学校教育法などの下部法令をあわせて変えることが求められると思う。
 下部法令を変える際には、今の教育の問題点を明確にし、具体的な処方箋を提示することが必要だ。それは文部科学省だけでは難しいので、官邸に安倍首相主導のもと、教育再生会議(仮称)を設置する。小渕内閣の際の教育改革国民会議に近い性質のものと考えてもらえばいい。そこで民間有識者を集めて、一〇項目くらいのテーマについて、半年間を目途に一気呵成に結論を出すことを考えている。
 
――公教育に対して厳しい見方が多いが、特に公立中学への不満は強い。巷では中学受験をテーマにした雑誌が次々と発刊され、ブームになっている。公立校のどこが問題だと考えているか。
 
下村 公立校への不信感は深刻だ。私の選挙区は東京の板橋区だが、約四分の一の子どもが、高い学費にもかかわらず、私立中学に進学する。経済的な問題がなければ、ほとんどの家庭が私立への進学を希望するのではないか。
 長らく公立校には平等主義がはびこり、学校独自の魅力を失わせるような教育が行われていたためだ。
 視察の際に耳にした印象的な話がある。意欲を持った若い先生がある中学校に配属されたところ、子どもたちが死んだような目をしていることに危機感を覚え、毎朝校門に立って一人一人の子どもに声をかけるようにしたという。その中学校は生徒の半分以上が遅刻してくるような状態で、当初は無視されていたが、徐々に挨拶が返ってくるようになり、学校の雰囲気も明るくなってきた。そんなある日、ベテランの先生が寄ってきてこう言った。
「君はよくやっていて、感謝している。しかし、他の先生たちのことを考えたことがあるのか。みんな君と同じことをしたいが、A先生は親の介護のために、B先生は子どもを保育園に送るために、遅い時間にしか登校できないんだ。君は独身だから自由にできるが、彼らの気持ちを考えたらどうだ」
 努力する教師の足を引っ張る横並び主義が、全国の公教育の現場に蔓延していた。民間なら、こんな会社は潰れていただろう。
 ベネッセ教育開発センターの調査によると、「自分のことが好きである」という問いに小学生の約七割が「あてはまる」と回答しているが、中学生では五割以下に落ち込む。教育がいかに閉塞感を与えているか。ニートやフリーターが増大し、若者に活力のない社会となっている原因ではないか。

校長に予算権と人事権を
――教育再生会議では、どのような改革案が議論されることになるのか。
 
下村 今、何より不信感をもたれているのは、公立の先生たちの質だと思う。改善するためには、優秀な先生の給料を上げ、表彰などを行う一方で、能力のない先生には辞めてもらわなければならない。したがって、まずは教員免許更新制の導入だ。中央教育審議会(中教審)の答申では、三〇時間講習を受ければ、ほぼ自動的に更新される、という非常に生ぬるい内容になっているが、適性のない教師を排除できる実効性のある制度を検討したい。来年三月までに議論をまとめ、通常国会に提出するのが目標だ。教職員組合を中心にかなりの反対があるだろうが、それでもやりきる覚悟が求められる。
 次に、全国一律に展開できるものではないが、学校選択制も推進したい。すでに東京都では導入が進み、たとえば板橋区では五七の小学校の中から自由に選ぶことができる。
 学校選択制は今後、日本の教育をドラスティックに変えていくことだろう。これまでの日本の学校教育は画一化、均一化が重要とされ、個性を出さないことが是とされてきた。たしかに教育の水準を一定に保つ点では効果があったが、今後はそのレベルを前提としたうえで、それぞれの学校が切磋琢磨し、独自の魅力を追求すべきだ。
 
(その2へ続く)


▽安倍新政権のキーマンが語る 水準を満たさない学校と不適格教師は退場してもらう=下村博文/内閣官房副長官(その2)

 http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20061026-02-0501.html

安倍新政権のキーマンが語る 水準を満たさない学校と不適格教師は退場してもらう=下村博文/内閣官房副長官(その2)
――学校選択制が早くから導入された品川区では、校舎の豪華さや地域の生活レベルなどが重視され、必ずしも教師の努力が選択に結びついていないようだが。
 
下村 今の公教育は自由度が少ないため、施設くらいしかPRできないのが実情ではないか。学校が思い切った改革を行うには予算や人事における権限の移譲が必要だ。
 地域の問題だが、一般に低所得層が多く住む地域の学校は敬遠されがちだ。その結果、生徒が集まらず、打開策が見つからないこともあるだろう。イギリスではそういう場合、いったんその学校を廃校にしてしまう。そのうえで校長以下、スタッフを総入れ替えして、やる気と能力のある先生たちを集めて新しい学校を作るのだ。完璧な解決策はないが、たとえ避けられがちな地域にある学校でも、自治体の工夫次第で再チャレンジすることは可能だ。
 また、教育再生会議の三つ目のテーマとして、国が定める統一的な基準に基づく学校評価制度の導入を考えている。教育水準局から査察官が各学校に派遣され、学校を評価しているイギリスのシステムがここでも参考になる。国の基準を満たせない学校は廃校になっても仕方ないし、そもそも学校選択制の下では、子どもが集まらないだろうから、潰れてしまうだろう。そのような学校にいた先生は、廃校とともに職探しをしてもらうことになる。
 
――しかし教師の人事権は都道府県の教育委員会が握っている。たまたまその学校に所属していただけの教師が職を失いかねない。
 
下村 今の日本の義務教育は文部科学省、都道府県の教育委員会、市区町村の教育委員会、そして現場の学校の四重構造になっており、責任のなすりあいになっている。これを解消しなければならない。
 究極的には各公立校は「私学化」すべきだ。つまり国立大学が独立行政法人になったように、公立学校も独立地方法人のような形式になり、そのうえで各学校に予算権や人事権を移譲し、「独立経営」させる。
 それを統括するのが校長だ。予算に関しては、教育再生会議の四つ目のテーマになるが、教育バウチャー制度により、各学校の自由度を増す。バウチャー制度とは一般に、子どものいる家庭がバウチャーと呼ばれる利用券を受け取り、通う学校に提出する。その枚数に応じて、学校は予算を受け取るというものだ。
 現在、小学生一人あたり年間約一〇〇万円の税金が投入されている。それを踏まえ、「一〇〇万円×生徒数」を目安に学校に予算を配分し、校長が自由に使えるようにする。たとえば五〇〇人生徒がいれば五億円を自由に使えるわけだ。こうすれば生徒を集めるために、学校間に競争が生じ、優秀な先生はふさわしい給与で迎えられるようになるだろう。一般企業では、よいサービスや製品を提供しなければ消費者がつかないのは当たり前のことだ。
 もちろん、校長の権限が強くなると独断専行の恐れがある。その点は、地域の有識者一〇人ほどが、いわば経営者に対する「株主」として、校長を監視するシステムが必要だろう。「株主」が校長と数年ごとの契約を結び、成果によって契約更新するような仕組みも考えられる。これが五つ目のテーマのチャータースクール(地域運営学校)である。
 また、現在子どもを私立に通わせると非常にお金がかかるが、その点もバウチャー制度の導入で解決するだろう。バウチャー制度の下では公立も私立も違いがないからだ。現状でも年間一〇〇万円以上の学費がかかる学校は少数だから、経済的なハンディキャップにとらわれず、誰もが私立を目指せるようになる。私立の多様化にも貢献し、公立とも健全な競争が発生し、教育が活性化するのではないか。
 

文科省は抵抗勢力となるか
 
――学校の統廃合や職員の削減を視野に入れることには、教職員組合をはじめ、文部科学省からの反発も大きいのではないか。
 
下村 教職員組合の反発は大きいだろう。公務員として定年まで勤められるシステムを壊すことになるからだ。
 文部科学省は自らに現状の責任の一端があることを十分理解している。自己否定的な改革に踏み出さざるをえないはずだ。ちなみに小泉前首相は文科省不要論者だった。三位一体改革議論の際に、義務教育は地方に任せればいい、国がちょっかいを出す必要はない、と言っていた。文科省が安倍政権の教育改革に対する抵抗勢力になれば、不要な存在と見なされることもありうる。政策官庁に脱皮できるか問われている。
 また、校長の権限を強めれば、現在人事権を握っている都道府県の教育委員会の力は弱まり、ほとんど不要になってしまう。地方自治体からの反発も予想されるだろうが、必要な改革は進めていく。
 
――教育再生会議は、小泉内閣時代の経済財政諮問会議のように、強い反発を受けながらも、権限と力を持つ存在になるのか。
 
下村 改革の推進力を持つことは重要だが、無用な反発を避けるためにも、安倍政権では官邸機能を強化し、チームで物事を進めていきたいと考えている。総理大臣補佐官や官房副長官の増員、各省庁からの首相官邸スタッフの公募、そして多くの政治家が官邸に入ることになる。
 
(その3へ続く)


▽安倍新政権のキーマンが語る 水準を満たさない学校と不適格教師は退場してもらう=下村博文/内閣官房副長官(その3)

 http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20061026-03-0501.html

安倍新政権のキーマンが語る 水準を満たさない学校と不適格教師は退場してもらう=下村博文/内閣官房副長官(その3)
――安倍政権の教育改革においては、イギリスのブレア政権を参考にしているようだ。
 
下村 イギリスの教育界は、かつて現在の日本と似た問題を抱えていた。それがサッチャー政権から改革が始まり、ブレア首相がさらに教育に重点を置いたことで大きく改善された。
 皮肉なことに、イギリスは日本の成功事例をもとに改革したのだ。サッチャー政権以前のイギリスでは、児童中心主義が大手を振り、子どもの好きなことをやらせ、彼らの好奇心に任せればよしとされていた。その結果、自分の名前を書けない子どもが社会問題となり、児童中心主義はただの無責任な放任主義と見なされるようになった。
 そこでイギリスが参考にしたのが、日本の学習指導要領だ。それまで教科書もなく、先生が好き勝手に教えていたあり方をやめ、国が学年ごとの到達目標を立てるなど、日本を真似て改革を行った。逆に日本はその当時のイギリスの教育を成功事例と勘違いしてしまった。ゆとり教育期に喧伝された児童中心主義はいまだに残っているように思う。
 
――最近、一部の児童の問題行動に振り回され、学級崩壊が起こるケースも多い。公立校には、子どもの受け入れを拒めない難しさもある。
 
下村 児童の問題行動については、学校ではなく親の責任だとはっきりさせるべきだ。イギリスでは一九九七年、ブレア政権により「子育て命令法」が施行され、子どもの非行や不登校を親の責任とし、親に罰金刑を科している。多くの子どもを受け持つ先生にも限界があるし、学級崩壊にでもなれば、一緒に学ぶ子どもたちも被害者だ。
 

公を考える精神を養う
――学力低下が問題になっているが、今はニートやフリーターでも生きていける豊かな社会となった。勉強に励むことが明るい将来を意味した時代に比べ、教育を受ける動機が薄まった。
 
下村 それは先進国に共通する問題だ。だが現状を放置すれば、国の活力が失われるし、ニートやフリーターも今はともかく生涯幸せに暮らせるか疑問だ。彼らは家庭を持つことも難しいのではないか。将来悔いても後の祭りだ。一人一人が学ぶ意欲を持つことが、社会全体の活力に繋がる。常に学べる環境を国が提供すべきだろう。
 一方、勉強では周りにかなわないと思う子どもも当然出てくる。今はモノサシが一つしかない閉塞感がある。これも中学生がネガティブな自己評価を抱く一因ではないか。
 現在、東京大学でも京都大学でも、ペーパーテストで一〇〇%合格が決まっているが、今の社会ではペーパーテストの成績がよいからといって、真のリーダーになれるわけではない。定員の四分の一くらいはペーパーテスト以外で選んでもいいのではないか。
 
――安倍首相は大学の九月入学を提案している。意図するところは何か。
 
下村 高校卒業はこれまでどおり三月とし、大学に入学するまでの半年間のうち三ヵ月程度を介護や農作業、青年海外協力隊といった奉仕活動にあてることを義務化しようと考えている。
 人々は社会で支え合って生きているということを知る必要があるし、同い年でも社会人は納税者となっているのに対して、大学生はその教育に税金が投入されるのだから、その分だけ社会に対して責任があるはずだ。わずか三ヵ月でも、公を考える精神を身につける契機にしてほしいと考えている。
 
(しもむらはくぶん/内閣官房副長官)

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