★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK27 > 224.html ★阿修羅♪ |
Tweet |
撤退後のサマワ:
自衛隊の残したもの/2 部族に守られ攻められ
◇絶大な影響力との「戦い」
「オランダ軍に比べ自衛隊は地元の部族に配慮していた。自衛隊を守ったのも、攻撃したのも同じ部族だった」。イラク南部に駐留するオランダ軍と自衛隊の双方の宿営地で通訳として働いた経験を持つ30代のイラク人男性が証言する。
自衛隊はサマワ駐留で有力部族ザイヤード族が所有権を主張する土地(384万平方メートル)を宿営地に使い、年間30万7600ドル(約3300万円)を借地代ではなく「謝礼」名目で支払った。元通訳によると、土地提供の見返りにザイヤード族は宿営地で働く地元スタッフを身内から雇用するよう要求したという。
防衛庁は「宿営地の土地所有者はイラク政府であり、部族は土地使用者にすぎない」(同庁幹部)との立場だ。陸幕幹部は「宿営地の警備補完のため警備員を雇い、給料を払っていた。雇用に際し身元や犯罪歴の有無を調べた」と認めるが、雇用が特定部族に偏ったかどうかは「部族はいろいろあり分からない」と説明している。
だが、ザイヤード族のメンバーや宿営地で働いていた通訳は自衛隊が「宿営地内の警備員(約40人)のほぼ全員、運転手(約30人)のほぼ半数をザイヤード族から採用し、宿営地外でも同族メンバーを警備員に雇っていた」と主張する。
イラク南部は部族社会だ。交通事故や殺人でさえ部族間の話し合いで解決が図られ、警察・司法当局が介入できる余地は少ない。旧フセイン政権崩壊後、バース党の武器が部族に渡り、部族の力が強まったとされる。
ザイヤード族の中の一派は「荒い」性向で知られ、自衛隊が要求を拒否する度にデモを起こしたという。ムサンナ県警のガーネム・アジズ副本部長は、宿営地を狙った散発的な迫撃砲攻撃も「部族の仕業に違いないが、部族と問題を起こすことはできず、取り締まりは難しかった」と語る。
自衛隊が撤退した今、ザイヤード族内の数派が宿営地跡地の所有権争いを繰り広げている。
◇ ◇ ◇
復興事業でも部族の圧力があったと業者が指摘する。宿営地周辺のコンクリート壁設置やエアコン納入など自衛隊の契約を受注したある業者は「ザイヤード族に頼むと、次々に仕事が取れた」と明かす。成功報酬として受注額の3割を部族長に手渡したと話す。
自衛隊幹部は「部族の言いなりにはなっていない」と「部族優遇」を否定する。実際、宿営地で働いていたイラク人は「部族の無理難題を自衛隊は度々、拒否していた」と証言するが、先の業者は「部族の要求を自衛隊が拒否したためコンクリート搬入を阻止されたこともある」と振り返る。
ザイヤード族の成人男性は約5万人。警察幹部や裁判官の輩出人数でも他部族を寄せ付けず、地元社会での影響力は絶大だ。部族長のサーデク・モタッシャ・ファハドさん(35)は「我々が自衛隊を守った。ここは部族社会。『部族を優遇するな』との批判は非現実的だ」と語る。弟が経営する建設会社はファハドさん宅の周辺道路1・5キロの舗装事業を自衛隊から請け負ったという。
衝突による一人の負傷者も出さず、一発の銃弾も撃たずに帰国した自衛隊。その活動の裏には不慣れな部族社会との「戦い」があった。【サマワ(イラク南部)で小倉孝保、社会部・反田昌平】=つづく
毎日新聞 2006年10月4日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/archive/news/2006/10/04/20061004ddm002010052000c.html
関連記事:
撤退後のサマワ:自衛隊の残したもの/1(その1) 「贈り物」野ざらし―「毎日新聞」
http://www.asyura2.com/0610/senkyo27/msg/191.html
撤退後のサマワ:自衛隊の残したもの/1(その2止) 「役に立たない」発電機―「毎日新聞」
http://www.asyura2.com/0610/senkyo27/msg/192.html
▲このページのTOPへ HOME > 政治・選挙・NHK27掲示板
フォローアップ: