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平成15年12月9日
麻生総務大臣 「太友会フォーラムでの講演」
於:国際文化会館
http://www.aso-taro.jp/kouen/index1.html
(↑リンク切れ)
平成の大改革実現を!!(講演挨拶)
昨年11月に実施されました第43回総選挙では、皆様の力強いご支援を賜り、御陰様で八期目の当選をさせていただきました。心から厚く感謝、御礼を申し上げますとともに、今後とも、ご期待に応えられますよう全力を尽くしてまいる覚悟です。
いま、小泉内閣の課題はデフレ不況の克服や年金、福祉、治安等の国民の不安を払拭し、将来の安心、安全を確保し、テロとの対決等、世界の中で日本の役割を果たすことであります。
その中で、総務大臣としてやり遂げなければならない大きな課題は、三位一体の改革を含む地方主権の確立であります。財政厳しい市町村においては、広域合併が必要となります。広域合併は、地域の未来を拓く大事業であります。国依存から脱却し、行財政基盤を強化するとともに独自の住民サービス等を実施し、ダイナミックな展望を切り拓かなければなりません。
そのためには議会、行政が中心となり、住民の参画を求めながら10年、20年後のしっかりした地域のビジョンを示すことが大切であります。
全国の状況をみると、平成15年中に22件の合併が実現し、平成16年中の合併が決まっているのは現段階で17件であります。地元八区内の各自治体でも法定協議会が発足し、合併に向けた真摯な取り組みが行われておりますが、関係各位の一層のご努力をお願いし、住民が未来に夢を持てる合併を是非とも実現していただきたいと思っています。
国としても総務省が中心になり、できる限りの支援をしてまいります。行財政上の特別措置を含む様々な支援策、社会基盤や生活環境の整備、保健、医療、福祉、教育等の対策、また産業の振興であります。平成17年3月を期限とする合併特例法を生かし、平成の大改革を必ずや実現してまいりたいと考えております。
今後とも皆様のご理解、ご支援をお願い申し上げますとともに、新しい年が幸多い年でありますよう心から祈念し、ご挨拶とさせていただきます。
講 演
今年4月に大友会がございましたので、皆様方にはそれ以来だと存じます。その後、10月10日に衆議院が解散し、11月9日投票をもって、第43回衆議院総選挙が行われました。その前の9月20日、小生63歳の誕生日に自由民主党総裁選挙がありました。ご存じのように、小泉純一郎候補が60%以上の支持率で圧勝したことを受けて、その日に当然のこととして自民党の役員は全部改選となるのです。山崎拓幹事長はその場で副総裁ということになられ、堀内光雄総務会長はそのまま留任ということになりました。
さて、もう1人の三役である私は、その日に総裁から、「君にはえらくしんどいところを頼むんだけど」と言われました。以後3回電話をいただいたりお目にかかったりしたけれど、いずれも何になるのだかさっぱりわからない。「君は打たれ強いから」とか何か訳のわからない話をされる。これは金融かなと思いましたし、北朝鮮を抱えて外務かなとも思っていました。しかし、総務大臣だけはまったく想像していなかったものですから、任命をいただいたときは正直面食らってしまいました。
組閣は、総理官邸から呼び出しがかかってくるのです。電話をいただいた時にもまだ何大臣だかさっぱり分からないまま総理官邸に入っていきましたら、知っているSPさんがいました。経企庁長官をしている時のSPだったので、「おう、久しぶりだね。何しているの?」と聞いたら、「大臣警護をいたしております」という。「ああ、そう」と言うと、またそのSPがついてくる。「どうしたの?」と聞いたら、「担当になりました」と言うんです。「ああ、そう。何大臣?」と聞くと、「総務大臣担当です」。
私が総務大臣であるということは、実は警護官から聞かされたんです。嘘だろうと思って、にわかには信じ難かったんですが、それからエレベーターに乗って、総理の執務室に行くまでの間、1分くらい、総務省って何をやるところだったかなと思っていました。あまりこれまで縁がなかったものですから、総務省などというところにはほとんど行ったこともありませんし、これはえらいことになったなと思いつつ総理の執務室に入ったわけです。
ここにお見えの方々も、総務省というのは何をするところか、あまりわかっておられない方のほうが多いと思います。簡単に言えば、昔でいう旧内務省から建設・警察を外して逓信を加えたみたいな、もう超巨大な官庁です。何をやっているかというと、約3200ある市町村のすべての窓口を前は自治省が今は総務省がしている。したがって、地方税等々も総務省でやっています。
次に旧郵政省ですから郵便を所管しています。今から2週間後の1月1日は午前7時半くらいから郵便局に行って、年賀状の配達の人たちが出発する時に「行ってらっしゃい」ということをやるんです。この郵政業務も総務省です。もちろん、電話もそうですし、テレビの電波も全部これにくっついてきます。また、インターネット等々、通信・放送はラジオを含めて全部総務省になります。
日本は世界で1番統計の進んだところで、物価がいくらとか失業率がいくらという、あの種の統計がよく出ますが、この統計局も総務省の管轄です。恩給というものがありますが、軍人恩給を含めて全部ここの人事・恩給局が所管しています。
また、総務省はほかの省庁に向かって、例えば務省に向かって、この予算の付け方はおかしいんじゃないか、この組織はおかしいんじゃないかということを言える、行政評価・監視という役人が最も恐れる権限を握っています。ですからどの大臣にでも「ちょっと」というと必ずお見えになって、そこで勧告を行える。要するに昔の総理府と行政管理庁が統合された総務庁、それに郵政省、白治省を3年前に全部1つにまとめて総務省という役所にしたわけです。
総務大臣はこれまで、参議院議員で自治省OBの片山虎之助さんが3期3年連続してされていました。今度は、衆議院議員で初めての総務大臣が出たわけです。
総務省はできてからこの1月でようやく3年になるという役所なものですから、旧省庁はお互いよくわかっていません。したがって大臣の秘書官は、例えば財務大臣秘書官というと財務省で2人ついてくるし、外務省で秘書官というと1人ですが、ここは総理大臣並みに3人います。旧省庁から1人ずつ、皆出てきます。自治省、郵政省、総務庁3つ全部から出ています。巨大な官庁なものですから、大臣秘書官になって初めて、そこでお互いに名刺を交換して、おたくも東大、入省の年次も昭和62年で同じなんて挨拶をし合うくらい、あまりの巨大さに横が全然わかっていないというところで、その秘書官が3人交代で毎日ついてくれることになっています。
とにかくそういう役所の大臣になって、郵政の民営化や地方の合併等の課題に取り組んでいます。なかなかそんなに簡単にいける話ではありませんが、ぜひともやり上げないといけないところです。時代が大きく変わったなと思いますのは、今回の総選挙をやる前は、私の1回り上、昭和3年生まれ以上の方は35人いらしたと思いますが、選挙を終わってみると引退もしくは落選等で残られたのは6人くらいしかいらっしゃいませんでした。あとは30数名近くが引退もしくは落選ということですから、一挙にベテランの域に入ったことになって、当選8回なんていうと、議員名簿でいきなり1ぺ一ジ目に載ってくることになりました。
ずいぶん大きく時代が変わっただけあって、各県の知事も昔とは違います。昔は年配の方が知事をされていましたが、いま4期目で佐藤栄佐久さんという64才の知事が福島県におりますけれども、これはもうご年配。40代前半という知事がいっぱい出てきた時代です。徳島県43歳、佐賀県45歳と。かなり時代の差が出てきて、変わってきたと思っております。何で世の中がこんなに変わったのかという感じを皆さんお持ちと思いますが、世の中はものすごい変わったという意識をわれわれはしっかりと持っておかなければいけないと思います。何が変わったかというと、それは次の4つです。
1つ。近代工業化社会が終わった。明治からこのかた、いきなり明治維新で近代国家になるというので、明らかに工業化社会を目指したわけです。270年間続いた幕府を倒して新しい国を作るというところまでは、間違いなく西郷隆盛という人が主役を演じたんだと思います。しかし、ぶち壊した後どういう国にするかを西郷隆盛が考えたわけではありません。これは岩倉具視が明治4年から6年まで2年間、大久保利通、木戸孝允、若いところで伊藤博文、文化人では福沢諭吉等々、岩倉使節団として海外に2年間連れていって、帰ってきて出した結論から作られたものです。
このままいったら、日本はロシアの植民地になる。なぜなら周りを見てみれば、アジアの諸国はすべて列強の植民地となっている。マレー半島はイギリスに、インドシナ半島はフランスに、インドネシアはオランダに、フィリピンはアメリカに、中国はイギリスにと皆植民地になっている。
このままいったら日本はロシアの植民地だ。そうならないためにはどうすればいいか。自主独立を保つためにはどうしたらいいか。どう考えても列強は道義、道徳の信奉者ではなく、力の信奉者だ。その力の信奉者に対して道義を説いても始まらない。太った羊の正義は飢えた狼の前では通らないということを見抜いたところが、岩倉らの一番偉いところだと思います。
われわれはそのためには近代工業化社会にしなければいけない。これはもう非常にはっきりしていた。そのためには何が必要か。まず教育だというので、イギリスに先立つこと3年も早く義務教育制度を採用しました。国の金を使って海外留学生を派遣したのも日本が最初です。そして富国強兵、殖産興業とやるのです。
鉄道、郵便、道路、大井川に橋がなかったわけですから橋、そして船のための灯台という、この5つにインフラストラクチャー整備予算を傾斜配分します。
そして国家予算の3割を教育費とし、3割を国防費とし、残り4割でその他すべてという考えられないような傾斜配分で、偏った予算をやって、結果として37年後にはナポレオンすら勝てなかった帝政ロシアに日本は勝ったわけです。間違いなくこの制度が正しかったことははっきりしていると思います。
もう一ついえば、300あった藩を全部潰して、廃藩置県といって中央集権の最たる政権を作り上げ、結果的に戦後も軍隊だけを除いて、残りの官僚組織はそのまま残した。そして戦後も通産省が産業政策を考えて、大蔵省が国策金融を使って資金を傾斜配分した。日本という国は最初は糸へんから、次は鉄、次は造船、次は自動車と確実に産業政策を通産省が立案して、即ち官僚が立案して業界がそれに協調した。この体制でいったおかげで、終戦からたった10年後の昭和30年代始めには、「もはや戦後ではない」という言葉が出てきたわけです。
不況だ不況だと言ったって、今の時代に外貨準備高世界一、個人金融資産世界一、先進国で唯一貿易収支が黒字、特許出願率世界一等々、もう数え上げればきりがないくらいのものをやってきたというのが日本という国の現状です。
そういった意味ではこれらの政策は当たったんですが、どうやらその時代が終わったようです。脱工業化社会という言葉が出始めて、何だかよくわからないけれども、とにかく工業化という時代が終わった。これはものすごく大きな変化です。多分、それが情報化と言うんでしょうけれども、情報化社会になっている、これが1つです。
2つ目の変化。朝鮮事変以来、昭和25〜26年から続いていた東西冷戦という名の構造が、1989年ベルリンの壁崩壊をもって終わりました。これで何が変わったか。米ソ対決でソ連が負けて、ロシアになって15の国に分解し、ユーゴスラビアもボスニアだ、クロアチアだとバラバラになり、東ヨーロッパのポーランド、ハンガリー、ルーマニアが全部北大西洋条約機構に入るなどという、当時、まったく考えられないような世の中になりました。その結果何が起きたかというと、中国から13億、インドから10億、ロシアから3億、東ヨーロッパから2億、合計28億の人たちが一挙に自由主義経済になだれ込んできたわけです。
その人たちは賃金は安い、しかし教育水準は結構高くて更には、若い。そういう人たちがどっと自由主義市場になだれ込んできた。当然、ものはそちらで作って日本に輸出したほうが、安くて利益が出るから、ほとんどの企業がお隣の13億人の市場を目指して日本から出ていった。その結果、何が引き起こされたかというと、これが3つ目の変化、デフレです。昭和3年、高橋是清大蔵大臣以来、初めて日本はデフレを経験しました。世界中でデフレを経験したのが、1930年代前半のアメリカ、大統領がフーバーからルーズベルトに替わる、あの時代ですから、デフレの経験者はもう日本にも、世界にもおりません。インフレで不況というのは戦後何回かあったけれど、デフレで不況というのはやったことがないし、全然それとは条件が違う。
今日太友会ご参加の皆様は経営者の方が多いのでお分かりかと思いますが、インフレの時には金の値打ちが下がるわけだから、借金、固定金利で、デフレになったらキャッシュフローの範囲内で経営を行う。インフレの時は土地は上がるから買う。デフレになったら土地は借りて、フランチャイズする。インフレになったらどんどん景気が伸びていくわけだから、その意味では一貫生産する。デフレになったらいいところだけやるので、アウトソーシングをする。インフレの時はいろいろなことが伸びるから多角経営で、デフレになったら選択と集中。もう基本的な経営が全然違うわけです。
それがわかっていない方が今でも経営をしていると…。お父さんは頑張った。しかし、お父さんが頑張った時代と今の世の中はまったく変わっているので、お父さんが昔の通りに頑張ったらうまくいかなかったという話です。
そういう意味では、世の中がデフレになってよく周りを見回したら、何が一番下がっていないか。金が下がっていない。借金は同じだ。売り上げを出して利益を出そうとしても、去年と同じ1万個売っても物価が下がっているから、同じ1万個売っても売り上げは減になるわけです。
したがって、資金繰りの視点から考えれば大変なことになってくるので、この際、経営者用語でいえば利益の最大化をやめて、借金返済をする債務の最小化を目指す方向に経営を切り換える。そうしてホンダ等はまたたく間に黒字になっていくわけです。そういう経営をずっとやっていたトヨタはべらぼうな利益が出て、経常利益1兆円などというようになったわけです。インフレからデフレヘという変化を見極めてなかった方の経営がうまくいかなくなった最大の理由は、これだと思います。
4つ目。日本だけというわけではありませんが、少子高齢化です。20年くらい前まで64歳以下15歳以上勤労者8人で1人の65歳以上の高齢者の医療、介護、福祉の面倒を見ていましたが、10年前で6人で1人、今4人で1人です。あと20年たつと、2人で1人という比率になります。これは簡単にいえば子どもが産まれないからです。高齢化するのは決して悪くありませんが、子どもが産まれないという少子化が問題です。日本の場合は世界一の晩婚国で、しかも女性全体で子どもは1.3人、結婚している人で2.2人くらいしか生涯で産んでいません。そういった意味ではどんどん少なくなるわけですから、今の状態のままで社会制度はもつわけがありません。
この話は安田信さんをはじめ、この世代の方は全然気にしなくて大丈夫です。私より上の世代は関係ありません。私より若い方は払うだけ払ってもらおうという時に払う人がいないという話です。どうも高齢化の話をすると、皆おじいさんたちが身を乗りだして聞くんですが、「じいちゃん、あんた聞かんでええ。あんたらはもう20年先はおらんのやから」という話をよくするんです。(笑)問題は今からもらう人が、金を払ってくれる人がいないという話です。
もう1つは、高齢化といわれると何となく暗く貧しい社会を想像しがちですが、日本の場合、今年9月現在、65歳以上人口2341万人のうち寝たきり老人はたった13%しかいません。したがって、残り87%は元気であるというのが実態です。前にも大友会で言ったと思いますが、連れ込みホテルの忘れ物の一番は入れ歯だという話を申し上げた。それくらいこの国のお年寄りは元気で、かつその人たちが一番お金を持っているわけです。
今、よく1400兆円の個人金融資産といわれますが、このうちの実に53%、約半分は70歳以上の人が持っています。しかも、その人たちは全然お金を使わない。どんどんたまる。毎年20兆円ずつくらいたまるわけです。こちらの20兆円はどんどんたまるし、企業も債務の最小化を目指して20兆円返済しております。つい10年前まで、日本全国で企業は毎年50兆円借りていました。それが今はどんどん返済して、この4年間でいくと20兆返済のほうが多い。プラスマイナスで70兆円違うわけです。20兆円預金が増えて、20兆円返済が増えたら計40兆円の金が銀行には入ってくるわけです。そしてこの金を借りてくれる人がいないわけです。企業としては金を借りるより返したほうが利益が出るというので、債務の最小化を図られると、国としてはどうなるか。銀行としてはどうなるかというと、まったく成り立たないわけです。銀行は金を貸している商売ですから、借りてくれる人がいなければ成り立たない商売です。借りてくれる人がいないという話なので、40兆円、基本的にはそれがデフレ圧力となります。40兆円ずつ毎年これが出る。それを今、国家が30兆円借りて、海外に10兆円貸して、やっとバランスしているという状況にあります。この状況から、企業が早く金を借りて設備投資をしようという気になる状況をどうやって作るか。そこに至るまでの手段が、竹中さんと私とはまったく違ったままこの3年間来たんだと思います。
塗炭の苦しみを味わいながらも、この3月でほぼ大企業と言われるところは債務超過といわれる状態からほぼ脱却しました。ところが、問題は地方です。売り上げを伸ばして設備投資をして企業が借金を返済して債務をバランスさせたというのではなくて、リストラでバランスしていったものですから、切られた地方は明らかに痛みが出てくることになりました。それもものすごい勢いで。今の経済政策連鎖の声と申し上げて間違いないと思うんですが、一般的にはそういった雰囲気が出てくれば、当然のこととして選挙にその結果が出るはずなのに出てきません。
なぜ出ないかといえば、答えは極めて簡単です。少なくとも自分の会社の貸借対照表や財産目録という、いわゆる指標を見る立場にいる経営者もしくは銀行というのは、社会的には圧倒的にその数は少ない。世の中サラリーマンが7割です。そのサラリーマンにとってみれば給料が同じで物価は一貫して4年間下がっているのですから、使い前は増えるわけで、今は断然いい時代です。間違いなくゴルフ場は空いたし、ゴルフ場の会員権はぐっと下がった。その種の人たちにとっては、今は誠に喜ばしい時代なのであって、誰も困っている人はいません。困っているのは、いわゆる経営者といわれる人たちというところが一番の問題点です。
したがって、いろいろな意味で指標を見ていればわかりますが、そうでなければ今は別に不満はありません。特に女性にそういう方が圧倒的に多いわけです。しかし日本としては、さっき言った4つの大変化があります。国の制度も工業化社会とかインフレとかを前提にして中央集権制度を作り上げたのですが、今はその前提が違うわけです。この前提が違ったら、体制も全部変えないといけないというので出てきたのが構造改革というもので、簡単にいえば改革です。構造改革とは、今の日本のそういった状況に合わせて経済構造を変えて、企業に国際競争力をつけ、もって経済を成長させるということです。これを間を全部飛ばして、「改革なくして成長なし」という。よほど頭のいい方でないと、なかなか言葉がつながりません。それはそれなりに正しいんですが、段階がある、もしくは優先順位がある、スピードがあるということなのだと思っております。
いずれにしてもその時代に合わせて改革を進めていくということなってきて、何が起きているかというと、中央集権から地域主権にどんどん移行しています。1000人の労働者の内フランスでは役人の数は95人、イギリス、アメリカで約70人、ドイツでは約60人がいわゆる公務員ですが、これが日本では35人しかいません。自衛隊から何から全部突っ込みで日本は35人、先進国の中で最も公務員の比率の少ない国で、それだけ公務員の数が減ったわけです。
そういった意味では、すごい勢いで日本という国は見えない間に変わってきた。地方に権限を渡すと同時に、ガチガチだった規制を緩めました。結果として何が起きたかというと、例えばつい3年前まで世界で一番高かったインターネットのブロードバンドの料金は、いま世界で一番安くなりました。もう非難ごうごうでしたけれども、規制を緩和して全部自由化したわけです。その意味では、世の中は明らかに規制は緩和され、中央集権から地域主権へとどんどん流れているんですが、流れた結果、今まで既得権益を持っていた人たちのそれが失われるんですから、それは痛みが出てくるのは当然です。その人たちにとっては規制緩和は全然ありがたみも何もないんですが、しかし規制が緩和されたおかげで新しい商売がいくつも出てきて、役人がもっていたものはアウトソーシングしていいということになりました。
例えば役所で給与計算などをしていたものはアウトソシーングしていい、今までの公務員でなければならないということを外しました。昔、ここで大江君がパソコンを使ってインターネットでいろいろなことをやってみて、建築というものが今やこうなるんですという話をしてくれたと思います。ご記憶の方もあろうかと思いますが、3年後の2005年には、例えば建設会社が横須賀市に出す建築基準に基づいた製図、青図は全部インターネット送信でOK、書類は持っていかなくていいことになります。
また、印鑑証明、戸籍謄本、婚姻届等、いろいろ役所に書類をもらいにいくものは、すべて端末が郵便局などに置かれていて、それを利用すればよいことになります。例えば住基ネット端末にカードを入れて「麻生太郎です」とやる。住基カードを持っている人は少ないですけれども、住基カードというものがあるわけです。これを入れると、「麻生さんですね」と言う。そうですとガチャンとボタンを押すと、「何がご希望ですか」といって、音声と手話と字幕でバッと画面に出てくる。例えば住民登録のところを押すと、目や耳の不自由な人のために、「住民登録ですね」とちゃんと音声と手話とでまた言うわけです。確認ボタンをもう1回押すと、3秒で住民登録の紙が出ます。もうこれは今すでにある機械ですから。
こういったものが全国の市町村で行われることになります。市町村が合併してどんどんその数が減ると、田舎のほうは大変ですから、そのまま郵便局に行っても同じことができるようにするわけです。パスポートもそれで取りたい。今、そういった方向で事は動いております。日本ではITと言いますが、いま恐ろしい勢いで ICT (Informationand Communication Techno1ogy)が進んでおります。それに伴って規制はどんどん外され、競争がものすごい激しくなり、結果として値段が下がり始めだというのが、まさに今起きている現象です。
そういった意味では、総務省というところは超ドメスティックな役所かと思っていたんですが、やたらに外人の客が多いんです。皆、どうして日本ではこれだけ安くなったのか、その手口を聞きたいわけです。それは麻生というのが自民党の政調会長の時に強引にやったらしいという話は、皆もう情報で知っています。それが今、放送、通信の担当の総務大臣になったらしいというので、よくお見えになるんですが、基本的には役所が自分で持っている既得権益をはがして、皆の前で提出させるように追い込んだ結果こういうことになったわけです。
しかし、やっぱり日本の役所というのはすごいところで、いったん決まったらやる。今年の2月に行政手続オンライン化法というものを作りました。5万2120からの法律をたった1本、行政手続オンライン化法を通した結果、各役所に書類を提出しなければならないという文言のついている法律をすべて変更することになって、どこからでもオンラインでポンと手続きをすることができる。
ものを輸入する時、例えば時計を輸入する時には、通関手続きをやらなければいけない。法務省もやらないといけない、経産省もやらないといけない、何もやらないといけない。だいたい6つか7つの手続を、植物検疫なんて入ったらさらに大変なことになるんですが、それをオンラインで1つの窓口でいいことにする。例えばそれをポンと端末に入れると、7つの役所に一発でつながるというシステムが2005年で全部完了します。
日本というのは、こういうことを決めたらもう必ずやりますから、それで事が進むらしいということが見えてきた。今日の夕刊で、IT競争力は去年が世界中で20番だったけれども、今年は12番まで上がったとありました。明らかに世界は日本という国を見直しつつありますが、すべて規制緩和で競争が自由化した結果ということになります。
こういうことになっていくのですが、もう1つ考えておかないといけない別の流れがあります。いわゆる東西冷戦が終わったというところが忘れられているんです。今日政府として正式にイラクに自衛隊を派遣することを決めました。安全保障会議で決めて、閣議で了解を取りつけて、先ほど小泉総理自ら、「とにかくイラクの人道復興支援のために自衛隊を出す、こういう人たちにぜひ敬意と感謝を払ってもらいたい」という演説をしたところです。
簡単なことをいえば、われわれは1951年、国連に加盟してこのかた、国連とアメリカ、USとUNは同じものだと思っていました。小沢一郎さんや土井たか子さんなどは国連中心外交なんかと言っていたんですが、私に言わせたら、国連というのは単なるアリーナ、闘技場であって、そこにいるアメリカやその他の国々はプレーヤーです。そういった意味で国連は場所であり、アメリカはパートナー、いわゆるそこでやっているプレーヤーという意識が全然欠けている話だとずっと思っていたんです。今回、イラクの時になって、 USとUNが分かれたわけです。これは明らかに冷戦時代とまったく違う話になって、大騒ぎに今まだなっています。その結果、日本は今、選択を迫られていると思います。「サンデープロジェクト」で島田紳介さんと対談した時にも話したんですけれども、紳介さんの話によると、アメリカについていくのはいかがなものか、ドイツとかフランスみたいに格好よくいかないかと言うんです。
(2/2へ)
それは分かるけれども、ドイツやフランスにミサイルを撃ち込もうというやつは近所にいない。うちは近所に変わったのが1人おります。しかもそれを撃ち込まれたら、フランスもドイツもロシアも皆ミサイルを持っているけれども、こちらは日米安全保障条約以外報復できる手段がない。自衛隊も地対艦なんていうのは持ちませんから、そういう意味では、明らかに日本は一方的にやられるということになります。その時に頼りになるアメリカが、いま中近東で困っている。困っている時にはいってらっしゃいといって、自分の家の隣でもめ事が起きたらその時だけちゃんと助けてねと言うという、そんな都合のいい話は世間で通るはずもありません。それはとてもできないことだと言ったんです。
加えて、いま日本にとって、アメリカを取りますか、それとも国連を取りますかという選択を迫られています。何となく国連のほうがよく見えますけれども、国連はまったく助けてくれません。それはコソボを見ても、どこを見ても同じことです。したがって、これはアメリカと組まなければしょうがないということで、小泉総理はアメリカを選択した。私はこの決断は間違いなく正しい選択だと後世評価されてしかるべきところだと思います。彼はその選択を決断して、結果として今、事は動き始めているわけです。歴史をもう1回言わせていただければ、1905年の日露戦争に日本が勝ったのは、明らかに日本とイギリスとの日英同盟があったおかげです。これはもう歴史が証明しているところだと思います。
そのイギリスが、10年後の第1次欧州大戦でドイツにやられる。その時に有名なチャーチル首相はトルコ戦線で大佐だか少佐だかをやっていて大敗するわけです。もちろんチャーチルは海軍大臣も首になる。それほどの大敗を喫した。その時に日本は約8000人、2個師団送ってくれとイギリスから言われたんですが、結果的に送らなかったわけです。イギリスは日本という国は同盟国として頼りにならないとして、結果、日英同盟は破棄されるわけです。そして日本はどうしたかというと、日独伊防共協定とかいう訳の分からない協定を結び、300万人が先の戦争で亡くなられるということになりました。
もしあの時2個師団を送っていたら、その時に犠牲は出たかもしれないけれども、300万人死ぬことは絶対なかった。その時の決断は政治的決断としては最低です。したがって今回、同じように、ここはアメリカとしっかり組まないといけないところなのです。
隣に危なっかしい国がいる。われわれは昨年有事法制を成立させ、今度国民保護法を国会で通しますけれども、そういったものもまだでき上がって間がないし、訓練ができていない。そういう状況の中で、もうずっと訓練した敵といきなり戦争してもとてもじゃないということになりますから、それなりにきちんと対応する準備は今のうちからしておかないといけないわけです。これは時間がかかる話であって、そんな簡単に右から左とできる話ではありませんから、どう考えてもアメリカと組んでおかないといけないところだと思います。
小泉総理はブッシュ大統領を選ぶわけです。結果としてアメリカを選ぶ。ご記憶がと思いますが、アメリカがイラク攻撃を始める時に、お隣メキシコはノー、お隣カナダもノーでした。太平洋を隔て遠く離れた日本と、大西洋を隔て遠く離れたイギリスとスペインだけが賛成したのですが、イギリスは当然アメリカと近いですから、これはいいにしても、日本はアメリカに感謝されました。今、アメリカの国務省でまったく点検なしで入れる外交官は日本とイギリスとオーストラリアだけです。それほどまでの関係になった。
今は多分、日米関係は戦後58年間で最も近い関係だと思います。少なくともこれまで幣原喜重郎総理以下26人総理大臣が出ていますが、アメリカ大統領の自宅に呼ばれて泊まってご飯を食べたのは多分、小泉純一郎総理だけです。そういった意味では、もうものすごい近くなっているんだと思います。
では、何で小泉総理がそんなにブッシュ大統領と話が合ったか。コリン・パウエルの次の人で海兵隊上がりのアーミテージという国務省の副長官が会談に同席していたのですが、彼が話しています。
私は小泉さんの英語は1回も聞いたことがないので、どれくらいうまいのか全然知らないんですが、イギリスにちょこっといたという話ですから、そのくらいだと思って間違いと思います。
初めて3年前の5月に小泉・ブッシュ会談が行われた時、普通初めて会えば「Hello」とか「How do you do?」とか「Nice to meet you」とか言うにちがいないんですが、小泉総理はいきなり「You know "High Noon"」と言ったそうです。『真昼の決闘』という映画で、Do not forsake me, oh my darling という歌で知られる、あれです。
「You know "High Noon"」。大統領はきょとんとするわけですが、総理がかまわず「You know Gary Cooper」と続けたら、大統領はあのホワイトハウスのローズルームのガラスが震えるような大きな声で「ウワーツ!」と言って、いきなり総理の手を握って、あとはすべてOKだったというんです。その一発だったんだというんです。だから、もうすべてジャパンOKだと言って、国務省もOKと言って、もう全部OKしたんだそうです。
「You know "High Noon"」、その一発で決まったわけですが、『真昼の決闘』は、われわれの世代の方がだいたい見た映画です。ゲーリー・クーパー演ずる保安官が悪漢を逮捕した。その悪漢どもを刑務所にぶち込んでおいたんだけれども、やつらが出てきてお礼参りに来る。すでに時はたち、ゲーリー・クーパーももうだいぶ年をとっているわけです。年をとっているけれども、お礼参りに来るという噂に対して彼は町の人が助けてくれると思ったら、誰も助けてくれない。それで西部の町の真ん中をとぼとぼと1人で出かけていく時に、Do not forsake me, oh my darling という歌がかかるわけです。それがアメリカだと、ブッシュ大統領はそう思ったのでしょう。
クリントン前大統領はこの映画を26回見たと言います。ですから、ヤンキーとかデキシーとかいうアメリカ人にとっては、やはり非常に印象的な映画だと思うんですが、ブッシュ大統領も3回見たそうです。小泉総理は、「俺は2回しか見てない」と言ってました。普通は1回ですねと言ったんだけれども、クリントン前大統領はこの間日本に来た時は26回見たというほど、やはりアメリカの大統領というのは超孤独なのでしょう。その頂点に立っている者にとっては非常に大きな印象だったんだと思いますが、アーミテージ副長官によると、「それから後はもうまったく問題ない、国務省にとってこんな楽な話はない、俺は本当に運のいい時に副長官になった」といって笑っていました。それくらい今、波長が合っているんだと思います。
そういうところからいくと、小泉総理という人が少なくとも冷戦が終わった今の時代に、アメリカという国といかに付き合うかが、これからの日本にとって最大の国家的な課題だと思っている、私はそう思います。よく例に引くんですけれども、江戸270年の間、やはり徳川家に刃向かって成功したやつはいないんです。島原の乱とか大塩平八郎の乱とか、いろいろありましたけれども、それは今のアルカイダみたいな話ですよ。ちょこちょこ散発的にはあったけれども、結果的には270年間徳川家が押さえたわけです。今はアメリカ幕府という時代なんだと思うんです。これに勝てるやつはいない、ロシアだって実際勝てないんだから、正面を向いてけんかするやつはいないわけです。
それでどういうことになるかというと、アメリカとどう付き合うかを考えなければいけない。私は今、これが日本の外交にとって最大の問題だと思います。私たちが審判になれる可能性はほぼない。審判になり得る可能性があるのはイギリスくらいなものでしょう。イギリスやオーストラリアというアングロサクソンは審判になれるかもしれません。徳川時代でいえば譜代大名になるというのもあるけれども、日本は60年くらい前まで戦争をしていたんだから、譜代になんかなるはずはありません。所詮外様大名で終わりです。
しかし江戸時代、外様で栄えた藩もある。加賀前田藩百万石や藤堂藩三十二万石は皆外様だったけれども、全部徳川家とうまいことをやるわけです。うまいことをやって、少なくとも前田家、藤堂家はそれぞれちゃんと名前を残してこれた。やはり日本は外様のええところを狙わないといけません。このやり方が最も難しいところです。おいしいことばかり、いいことばかり言ってすり寄ったらやられてしまうから、やはりこちらはきちんと持つべきものを持って、日本とはちゃんと仲良くしないといけない、日本とはそこそこうまいことをやっておかないといけないと思わせる手口がなければいけません 。これがこの日本という国に課せられたこれからの外交としては、最大の課題だと思います。
やはりアメリカにとって頭の痛いところは、何と言っても日本のお隣の中国への対応です。中国と対抗できる経済力はやはり日本だと思わせておくためには、経済力、技術力は今後とも断固として維持させねばならないところだと思います。そのためには、政府としてやれるべきところはやる。科学技術に対する支援は徹底してやりますというので、政府は強力な援助を始めました。トロンなどというものもその1つなんでしょうけれども、坂村さんという教授が考えだしたトロンの電子タグみたいなものがあります。点みたいなものですけれども、その点1枚を海外に行く時に張っておく、荷物札に張っておくわけです。本人はニューヨーク乗り換えでサンパウロに行ったけれども、荷物だけはデュッセルドルフに行ったなんていうことがあったら、この荷物を探すのに大騒ぎですわ。ところが、この小さなタグができたおかげで、その荷物が今、デュッセルドルフにあると直ちにわかる。これは電子タグというのですが、そういったものが出てきたわけです。
また、これを薬の瓶にそれが1個張ってあれば、老人がそれを読み取り機を通してみると、その薬はもう賞味期限が切れているとか、風邪薬だとか、何と一緒に飲んではいけないとか、全部大きく画面に出てくる。そういったようなものまで、トロンという電子タグで代表されるようなシステムが出てきました。トロンのグループは1回ビル・ゲイツに潰されたんですけれども、若い40代の研究者がそのまま東大に残って頑張って、Iトロンとか、Bトロンとかいろいろなものを作り上げたわけです。今いろいろなモパイルフォンの中の7割くらいは、そのトロンというシステムを使っているはずです。
この間ビル・ゲイツが来日して私と飯を食べたいと言ってきました。この人とは3回くらい飯をご一緒したけれども、面白くない人だし、あまり飯はうまくもないし、こっちは会いたくない。どうしても会いたいというので、会いたいならこっちへ来い、飯は御馳走されるほど貧乏していないからいらない、自民党本部にくればうまいカレーライスを御馳走してやると、嘘八百を言って連れてきました。ビル・ゲイツは国会議員と役人を集めている前で、マイクロソフトのものをどうしても使ってもらいたい、日本が行政手続オンライン化になったものですから、自分たちのシステムを使えというわけです。
それなのであなたのシステムを説明してくれといったら、彼は興奮して延々とやったわけですが、そこで一斉に参加者から質問が出たわけです。あまりのそのレベルの高さに驚いて、「あなたたちは本当に国会議員か」と聞いたほどです。そのくらい自民党にはすごいのがいるんですが、その共通点はITは強いけれども選挙には弱いというものです。選挙に強い方というのは総じてITの話はまったく駄目で、当選8回だ、60歳だなんていうのはもう全然駄目なんです。でも、若い連中はどんどん質問するので、彼は興奮してもう1回やらせてくれと言った。その時、坂村教授とトロンを見に行くわけですが、本当にその場でひざをついて彼は組ませてくれと言うんです。これは10年前自分が圧力をかけて潰した会社だけれども、それがずっと地下で潜って、10年たって出てきた時には、ICタグをぶら下げて出てきた。気がついてみたら、こんなものは今さら自分で開発するよりは組んだほうがいい。組みたいというけれども、マイクロソフトの真ん中のところはブラックボックスになって見せないようになっている。それを開けるのが条件だと坂村教授をして言わせると、ビル・ゲイッは「開けます、だから組ませてくれ」と言うわけです。
やはり方なんです。技術力という力があれば、向こうは下りてくるんです。お願いだと言っても駄目、やはりしかるべき交換条件を出す。持てる力があれば、向こうは下りてくるんです。ブラックボックスを開けさせたのはイギリスと日本だけですから、それだけ力を持ったということだと思います。まだまだ政府はさらに援助を伸ばしていきますから、これから大きく変わっていくんだと思いますけれども、少なくとも規制緩和等いろいろなものをやる中で、教育というものが多分最後に残ってくる課題だと思います。
憲法改正や教育基本法の改正の論議は来年の参議院選挙が終わってから一斉に出てくるだろうと思いますが、事実、事は確実に進んでいて、教育基本法の問題などは公明党も寄ってきました。いろいろな意味で変わってきて、役人ももちろん変わったけれども、やはり自民党も変わった。
一番わかりやすいのは私も立候補しましたけれども、3年前自民党総裁選挙をやって、小泉純一郎さんが総裁となった。亀井静香さんが、「あんなのは田中真紀子のせいだ」と吠えたけれども、3年たった今回も、小泉総裁は60%の支持を得た。これは明らかに世の中の支持があるということです。
今回の衆議院選挙で何だかんだ言いながら、自民党はトータルでは270万票くらい票が増えています。民主党が伸びたというけれども、比例区では民主党は40万票しか伸びていない。自民党は比例区で270万票伸びています。やはりこれは非常に大きな伸びです。民主党は40万票、自民党は270万票でかれこれ6.5倍伸びたという事実ですから、明らかに小泉総裁というものの持った力は大きかったわけです。
公明党もこの3年間、正確に一言えば連立を組んで4年になるので、この4年間で変わったと思います。国旗国歌法という法律は公明党が賛成したから通ったのであって、公明党が反対したら通っていません。有事法制という法律も今年、殴り合いもなく、徹夜もなく、粛々と衆参両院を通った。10年前なら考えられませんが、それが成立しています。
今回の総選挙で私が地元に戻ったのは1日で、あとはかみさんにほとんど任せきりでした。私は全国32都道府県を回っていたんですが、その中で公明党の政調会長の応援に行ったんです。車中、疲れて寝てて、「着きました」といわれてパッと起きて演説会場に入っていったら、創価学会というのはこんなものだったかな、ちょっとあまり見かけない施設だなという感じがしました。よく見たら出雲大社の別院なんです。これは神社かなとうすうす思ってはいたんですけれども、寝ていたものですから、気がつかなかったんです。でも、そこから30分演説しないといけない。周りを見たら幸いにも出雲大社と書いであったから、これは間違いない。創価学会も最近デザインが変わって神社風にしたのかと思ったから、「ここは出雲大社ですね」と嫌味を言ったら、一斉にどっと笑うんですよ。
公明党も今までは神社は駄目、教会は駄目、お寺は駄目と言っていたのに、もう大阪なんかに行くとこうなっているんですね。あれは正直びっくりしました。
公明党も変わった。この4年間政権を担当して、少なくともイラク派兵に関しては今日賛成したんですから。結果的に、そういった時代に合わせて少しずつ見えないところで大きく変わっているということが事実なのです。結果が出るのはあとまだ数年かかるとは思いますけれども、この1〜2年、日本がどっちに振るか、振り方を間違えるとえらいことになるなと思っていました。ですからイラク関連だけはどうしてもと思っていたんですが、それが今日正式に決まったので、私は正直、これでまずは一安心というところです。
闇夜に紛れて夜逃げするみたいにしてイラクヘ行くんじゃない、閣僚全員で歓呼の声で送らないと少なくとも国のために体を張る人に対して申し訳がないと、今日、閣議で皆でその話をしたところです。
いずれにしても、こういったことも昔では考えられないことになっていて、少しずつやるべきことはちゃんとやらないといけないという流れがなっていると思います。テレビを見ると、とにかく流れはまったく違います。今日小泉総理は記者会見を開いて、みんなの前で国民にわかりやすい言葉で自分の信念をきっちり言う。その時に自衛隊に感謝と敬意を払う言葉だけは必ず入れてくださいといって、そのとおり言ってももらいました。明日どういう論評が出るか知りませんけれども、少なくとも自衛官の士気は極めて高いということだけははっきりしています。その中にあってイラクに行きますが、日本に期待されていることでいうと、戦闘なんかでは全然期待されていないんです。
期待されていることは3つあります。まず第1は水です。チグリス・ユーフラテス川が一緒になってシャトルアラブという川になるわけですが、えらく汚い川なんです。隅田川のほうがまだきれいなような川が流れているんですが、その水を皆飲むわけです。その水を自衛隊の持っている機械で処理すると飲める水になる。バイオテクノロジーの進歩でそういう機械がありますが、これは日本しか持っていないんです。これが欲しい。もうこれだけはどうしても欲しい。これがありさえすれば、週一回お風呂に入れる。この機械だけは絶対持ってきてくれという、これが1点です。
もう1つは医療です。医療は技術にしても機器にしても、どう考えても日本のほうがはるかに良い。医者を送ってくれという話と、破壊した病院がいっぱいあるので、それを直してくれという、これが2つ目です。
3つ目はもちろん食料です。この3つを期待されているのであって、戦闘なんか誰も期待していません。戦闘は俺たちがやってやる。その代わり、自分のことは自分で守れと。守るとなれば自衛隊しか行く者はいませんから、当然のことです。民間からも参加される方がずいぶんいらっしゃいますんで、やはり日本人も捨てたものじゃないなというのが正直な実感です。技術屋さんやら何やら、続々と志望しておられる方が多いので、そういう状況にありますということを申し述べさせていただいて、私の話を終わらせていただきます。
今日は今の今まで三位一体の件について交渉をしておりました。三位一体というのは昔はキリスト教の用語だったんですけれども、いつの間にか法律用語に変わったらしくて、私のような敬慶なカトリックにはかなり驚きがあります。そんな話をやっていて、その前がイラクの派遣の件と、このところバタバタになっていたものですから、話がとりとめもなくて大変恐縮に思います。
昭和54年の10月から落選した期間を入れて24年、大友会の皆様には長い間ご支援いただきました。おかげさまで今、総務大臣をさせていただいて超忙しい日々を送っておりますけれども、今のところ元気にしております。今後とも期待に応えて頑張ってまいりたいということを申し添えて、講演に代えさせていただきます。ありがとうございました。
(司会)太郎さん、ありがとうございます。大変お疲れだと思いますし、またご参加の方々も6時半集合で2時間超の時間が経過しておりますけれども、せっかくですから、太郎さんに質問等ございましたらどうぞ挙手をしてください。
( )イラクの問題はすごい納得のいく説明でしたけれども、90%納得で、10%はというところです。国同士の戦いだったら一番強い番長につくのは当たり前だけれども、相手はテロですから、それがちょっと違うのではないでしょうか。それから憲法という世界でもまれな切り札、外様として立派にうまくやっていくために必要なカードを今切っちゃうのでしょうかという、この2つについて質問します。
(麻生)最初の疑問点のテロに関しましては、やはり9.11の事件を境に世の中がテロに対してまったく変わった認識を持ったと思うんです。9.11がなければ、もう少し国対国みたいな話になったと思うんですけれども。中国の軍人が書いた『超限戦』という本をご存じですか。訳文も日本に出ていますけれども、この本はテロリストというか、小さな国はどうやって大国に勝てるかを書いた指導書みたいなものなんです。これは結構ベストセラーになっていますが、一番買っているのはテロリストという代物で、そのとおりやっているという形なんです。
やはりバグダッドにアメリカが行く、西洋人が行く、1099年の十字軍以来初めて異教徒にという状況は、なかなかイラクとしては納得できるところではありません。1000年間、違った話ですから、これはなかなか難しいと私自身はそう思います。
ただ、徳川家に対抗するテロリストがあちこちに出てくるという話は丁寧に1つ1つ対処していく以外、手がないんだと思います。やはり、テロはどのみち出ますから。そういった意味では、アメリカに対してのテロ、それを応援する連中のテロというのは、やはり逃げても追いかけてくるものだと思います。だから、これはどうしてもどこかで戦う覚悟を決めないといけない。これが1つです。
もう1つ、アメリカとのカードを切っちゃうのという話ですけれども、恩義に感じるのは向こうで、しばらくはあのイラクの状況が続くということを覚悟しないといけないわけです。日本では出てきませんが、イラクという国はアラブ人にあまり受けている国ではありません。イラクというのはかなり差別用語に近いものがある。そのイラクがやたら強いというのはお隣のサウジやシリアやレバノンにとって、あまりありがたい話ではないのです。ここに安定した政権が本当にできたら、みんなハッピーという話なんですが、16部族あって、それぞれ親分さんがおられます。
今回イラクで活動していた奥氏と一緒に通訳していた井上氏の2人を失ったというのは、日本にとっては大変大きな痛手です。この2人は誠に有能でした。彼らは部族の親分さんと話をつけないといけなかったわけです。ちゃんとお子さんの教育をやります、医者も面倒をみます、水も出しますと言って本当にやると、この人たちは俺たちのヘルパー、サポーターだということになるわけで、まったく問題は起きません。
部族はターバンで区別します。今度行くサマーワという地域にはシーア派の部族の親分がいるんですが、奥氏はそこと話をつけている唯一の人だったわけです。その人に亡くなられるというのは、正直予定外のことでした。これをやると、基本的には日本としては、「ほら、ごらん。日本がやったらうまくいった。アメリカさん、おたくのこんな占領政策は駄目でしょう。日本で成功したというけれども、それは日本人が上等だったからうまく占領できたんで、あんなことができますか」という話になるわけです。私は前から、あそこは全然違うよと言ってたんですけれども、そこはアメリカ人の単純なところで、いけると思ったら全然いけなかったというわけで、それが悲劇なんです。
やはり彼らは東洋人にはえらく親切です。でも、奥氏たちは間違いなく狙われていた。井上氏もアラビストとしては外務省で2番か3番くらいうまい男なので、この2人のコンビで全部これまでの段取りをしていたわけですが、やはり日本から来られたら困る人がいるんです。だから、彼らは狙い撃ちされたんだと、私にはそう思えます。
そういう意味でいうと、こちらはカードを切って見せたんですけれども、だからといってアメリカがそのカードだけをもらって、「はい、さよなら」とできるかといえば、なかなかそうはいかないというくらい、いま関係は深まっていると思います。
(司会)ありがとうございました。もうお一方、田中さん、どうぞ。
(田中)いつも本当に国際情勢で勉強させてもらっています。ありがとうございます。実は前回か前々回、質問したことがあるんですけれども、例のODAのことです。中国で有人衛星が成功した、日本はロケットが失敗したということで非常に対称的なんですけれども、何であそこに3兆円もODAで出さないといけないのでしょうか。その辺のところで国民の1人として疑問があるんですけれどもお願いします。
(麻生)いま中国に貸した金が返ってくる額と、向こうでこちらが新たに貸す金とでは返ってくるほうが多い。私が自民党政調会長になってからこの3年間くらいの問に、間違いなく10貸したら12返ってきているというくらいの感じで、返ってくるほうが多くなってきているという現状にあります。
更に、ご年配の政治家の方々は中国に対しては妙な良心の呵責みたいなものがあるんだと思うんですが、今は中国に一番深く差し込んでいた竹下先生、野中先生らが引退されていますから、その意味ではかなり状況は変わってきているという感じがします。
もう1つは、中国側も対日政策が昔みたいにうまくいかなくなってきたと感じていると思います。やはり今までみたいに脅せば通じるというのは、小渕先生以降、変わってきています。小渕先生は亡くなっているけれども、不審船に対して海上自衛隊に出撃命令を出したり、やはり中国の3つのノー、スリーノーに対して、「江沢民さん、うちのノーは4つです」と言った。「もう1個あるんですか」と江沢民が言ったら、「中国の台湾に対する武力行使もノーです」と言ってのけるんです。それで江沢民が翌日、皇居の宴席にいきなり人民服を着て登場して、20世紀の首脳外交で最低の首脳外交だと、世界の評価をがた落ちにさせた。あれくらいから世論というか、党内世論も変わってきて、今ずいぶん対中国については変わったと思います。
ロケットに関しては、防衛庁がやっているのではなくて、文科省がやっているのですが、多分あれを上げられたら困る人が周りにいっぱいいるわけです。例えば電波妨害、ジャミングというものを出されるであろうという予想は、あの人たちはまったくしていないと思います。だから、成功する時というのは予定外に時間を変更して上げた時とかなんですけれども、そういう考え方はあの人たちはしないんです。
今回のように予定通りに上げたものについては、私の邪推ですけれども、世界の常識では、そんなものに成功されたら困る人はいっぱいいるわけです。アメリカだって日本が成功したら自分のロケットを買ってくれなくなる。液体酸素とか液体窒素とかではなく、いわゆる固形燃料で飛ばせるロケットを開発しているのは日本だけなんですけれども、科学技術研究所に行くと、本当に倉庫の隅にポイと置いてあるんです。固形燃料を盗まれたらというと、「えっ、誰が盗むんです?」という、そんな感じで、完全に研究者なんですよ。それが軍事技術としてものすごい価値があるものだということを知っている人がいないようなので、あわてて「ばかたれ、冗談じゃないぞ」というわけです。
今はそうなっていないけれども、当時は技術屋さんとか科学者というのは、それを作ることにだけ興味があって、それを盗まれるとか悪用されるという発想はまったくない。純粋な技術屋さんや科学者という感じがします。少なくともあのH2ロケットに関しては、あんな単純なものでひっかかるというのは通常では考えられませんから、何となくそんなことかなと思って疑うくらいの感じを持たないといけないところなのではないでしょうか。この間、文科省でそう言ったら、そんなこと誰がするんでしょうかと言われました。
誰がするんでしょうかって、周りでしてもらいたくないということでいえば、北朝鮮だって中国だってアメリカだって皆そうでしょう。アメリカもですかというけれども、自分のロケットを買わずに自分で打たれたら、昔アメリカの車を買ってくれたけれども、今トヨタの車を買わないといけないという話と同じ話です。どのみち日本がやり始めたら、安くて小さくて軽いなんてなったらとてもじゃないぞということになるから、絶対反対と思うのが常識じゃないかと言ったら、はあと言っていました。やはり、そういうひねた発想をする人は科学者にならないわけです。
(司会)どうもありがとうございました。本日は暮れのお忙しい中、大勢の皆様方に大友会フォーラムにお集まりいただきまして、大変ありがとうございました。太郎さんは明日からジュネーブの会議で、もう大変なスケジュールだと思いますが、どうぞお体を大切になさってください。太友会は来年25周年を迎えます。太友会は友人の集まりで精神的なサポートということが一番の目的ですけれども、太郎さんもいろいろな政治活動の中である意味でお金も必要です。今日お集まりの皆様方のご協力をいただいて、来年は大友会25周年記念行事として、太郎さんをさらに励ます会を春頃実施したいと思います。また、太友会も25年たちますと、太郎さんだけ若々しくいらっしゃいますが、私を含めて老齢化してまいりました。今日も何名かご参加いただいていますが、会員の皆様方のご子息にも参加していただきたいと思います。太郎さんは若い方が大変お好きなので、太友会ジュニアの会ということも含めて、そういう活動も少し考えていきたいと思います。皆様方のますますのご支援をよろしくお願いします。本日はお忙しい中を大変ありがとうございました。どうぞよいお年をお迎えください。 〔了〕
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