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北朝鮮核実験と日中首脳会談でみせた日本のインテリジェンスの 「冴え」=佐藤優 [SAPIO]
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投稿者 white 日時 2006 年 11 月 10 日 22:39:43: QYBiAyr6jr5Ac
 

□北朝鮮核実験と日中首脳会談でみせた日本のインテリジェンスの 「冴え」=佐藤優 [SAPIO]

 http://seiji.yahoo.co.jp/column/article/detail/20061110-01-0401.html

2006年11月10日
北朝鮮核実験と日中首脳会談でみせた日本のインテリジェンスの 「冴え」=佐藤優
 今般の北朝鮮による核実験はインテリジェンスの観点から見てもきわめて興味深い。
 まず、日本のコリント(協力諜報)の水準がかなり高かったことを指摘したい。コリントとは耳慣れない言葉だが、情報機関の間での機微な情報の交換を意味する。ヒュミント(人による諜報)、シギント(通信傍受、衛星画像などの技術的データによる諜報)と量的に比較した場合、冷戦後のインテリジェンスの世界ではコリントの果たす役割が最も大きいといってよい。日本のように北朝鮮の公開情報がよく整理されている国では、これらの公開情報と交換にCIA(米中央情報局)、モサド(イスラエル諜報特務庁)、SVR(露対外諜報庁)などがもつ北朝鮮に関する秘密情報をとることができる。
 特に外務省の外郭団体であるラヂオプレスによる北朝鮮の要人略歴や人事情報はコリントの世界で高く評価されている。核実験について北朝鮮当局は相当厳しい情報管理をしているので、ヒュミントで事前に情報をとることはまず不可能だ。そうなると衛星写真の解析と通信傍受による情報にもっぱら頼ることになるが、この領域ではアメリカの能力が圧倒的に高い。従って、コリントの課題はどれだけ深い情報を早くアメリカから入手できるかということにかかってくるが、この点で今回、日本外務省は合格点に達する仕事をした。
 10月6日の記者会見で、麻生太郎外相が、記者からの「訪米中の谷内次官がクラウチ米大統領次席補佐官と会談をして、北朝鮮の核実験が今週末に行われる可能性も十分あるという認識で一致したようですが、状況としてそういった緊迫している状況なのでしょうか」(外務省公式HP)という質問に対して、「どうしてクラウチ米大統領次席補佐官がその話を持ち出したかの内容については、私共が知っているところではありません。インテリジェンスに関わる話ですから、内容は逐一言ったわけではないでしょうが、可能性があるという話です」(同)と応答している。
 このやりとりをインテリジェンスのプロが見れば、10月の7、8日頃に北朝鮮が核実験を行なうという情報がアメリカから日本に提供されたことがわかる。この会見で麻生外相は、「特に日本政府としてかなり緊迫した状況になっていると把握しているのでないのですか」との質問に対して、「違います」と応答しているが、これは麻生氏が情勢判断を誤ったのではなく、世論の不安や混乱を避けるために、このような応答をしているのだ。これも危機管理の観点からきわめてまっとうな対応だ。

「イラク・シンドローム」が影響したアメリカの核実験認定への躊躇
 10月9日、北朝鮮が核実験を行なった直後、ロシアは、国防省のベルホフツェフ中将が、「タス通信に対し、『我々の核爆発監視システムはモスクワ時間9日午前5時35分(日本時間同10時35分)、北朝鮮での核実験を検知した。これは100%地下における核爆発だ』と語った」(読売新聞電子版9日)のに対して、アメリカは核実験であることの確認についてきわめて慎重な姿勢をとった。結局、アメリカは13日になってから、マスコミを通じて「米政府高官の話として、北朝鮮の核実験発表後に、実験があったとみられる地域周辺の上空を飛んだ米軍機が採取した大気標本から、微量の放射性物質が初めて見つかった」(10月14日付朝日新聞夕刊)という情報を流し、初めて核実験であると認めた。「大量の通常火薬を使って核実験のように擬装した」(同)との見方もあったようであるが、核実験を擬装するための大量の通常火薬を地下に搬入する過程をアメリカの偵察衛星が見逃すことはまず考えられないので、ありえないシナリオだ。
 核問題専門家の話として、「核保有を許したと、これまでの北朝鮮政策を批判されないよう、実験を過小評価したいとの意識はどこかにあったはず」(10月15日付産経新聞)との解釈もあるが、ブッシュ政権の対北朝鮮政策が生温いとの批判がそれほど大きくなるとも考えがたい。筆者はむしろアメリカのインテリジェンス・コミュニティーに存在する「イラク・シンドローム」が現われたのだとみている。
 イラク戦争の際に、アメリカのインテリジェンス専門家の多くは、イラクに存在しなかった大量破壊兵器が存在したと事実誤認をした。その教訓から、今回は、存在する核兵器を存在しないのではないかと疑うベクトルが働いたのであろう。このようなトラウマをもたないロシアは観測データを虚心坦懐に読んで、核実験という判断をしたのである。コリントにおいて、アメリカのみに過度に依存することの危険を今回の事例は示している。北朝鮮については、今後、ロシアとのコリントをもっと重視すべきと思う。
 しかし、今回、結果からいえば、日本はアメリカのインテリジェンスデータに引きずられ、対北朝鮮制裁のタイミングを見誤るという失態から免れた。これは安倍晋三首相の決断によるところが大きい。10月11日の安全保障会議で、日本は独自の制裁第3弾として、(1)北朝鮮国籍保有者の入国原則禁止、(2)北朝鮮籍船舶の入港禁止、(3)北朝鮮産の全産品の輸入禁止を決定した。これらの禁止措置について6か月の期限をつけ、北朝鮮の対応次第では解除の可能性があるとの「ゲームのルール」を明確にしたこと、さらに「在日の北朝鮮当局職員以外の人の再入国は禁止対象から外す」(10月12日付日本経済新聞朝刊)との人道的配慮をしたことも、次のステップで北朝鮮との交渉を織り込んだシナリオである。

日中関係の変化を読み切れなかった北朝鮮
 北朝鮮のシナリオはいつもの通り、「求愛を恫喝で表現する」、すなわちアメリカ、日本との対話を7月5日のミサイル発射という「嫌がらせ」で求めたが、想定した反応が得られなかったので「究極の嫌がらせ」である核実験で表現したのであろうが、2つのことを見誤った。
 第1は核保有国であるロシア、中国のエゴである。核クラブの維持に、アメリカ以上に中露は執心しており、この点で北朝鮮は米中露3国の虎の尾を踏んだ。クレムリンは「ロシアは韓国による北朝鮮併合のシミュレーションを始めた」という情報を裏で流し、北朝鮮を強く牽制している。
 第2は安倍訪中による日中関係の質的転換である。この点については、詳細な分析が必要とされるが、筆者は今回の日中首脳会談で、もはや実効性が担保されない「友好外交」は終焉し、日本、中国のそれぞれが露骨に自らの国益を追求し、折り合いがつくところでは協調し、そうでないところではお互いに足を引き合うという一種の実務外交、より露骨な表現をするならば「帝国主義外交」の幕が開いたとみている。10月13日付産経新聞の検証記事「『予定調和外交』から脱皮」がこのことを示唆している。
 10月8日夕刻、日本外務省高官が、安倍首相に晩餐会のあいさつの内容を変更してほしいとの中国側の意向を伝えてきた。「『なぜ私のあいさつの内容を中国側が知っているんだ?』。首相の問いに高官は押し黙った。『こちらは温首相のあいさつを把握しているのか?』。答えはなかった。(中略)『それではあいさつはできないな』。首相の一言に高官らは狼狽したが、首相は頑として譲らず。あいさつはキャンセルとなった」これでよいのである。中国に冷や水を浴びせる安倍首相のこの手法が日中新時代を切りひらくのだ。 
 北朝鮮インテリジェンスの水準が低いため、日中関係の変化を読み取ることができず、安倍訪中直後という、北朝鮮の利益極大化の観点からは最悪のタイミングで核実験を行なったのだ。
 安倍政権発足後、日本外交は小泉前政権とは全く異なる冴えをみせている。ここでのキーパーソンは谷内正太郎外務事務次官で、同氏が日中首脳会談を根回しし、さらに北朝鮮の核実験についてコリントによって適確な情報を得て、それを安倍首相、麻生外相にただちに報告し、外交戦略に生かした功績が大きい。他方、率直にいって不安もある。本来、このような作業は西田恒夫外務審議官(政務担当)が行なうべきだが、昨年、西田氏の国連常任理事国入り戦略が失敗して以後、同氏は全く機能していない。既に外務省内部から「谷内次官は目立ち過ぎている。やり過ぎだ」という声が聞こえ始めている。外務官僚の陰湿な派閥抗争で、谷内氏が足を引っ張られるのではないかと筆者は心配している。
 安倍首相、麻生外相、さらに5名の首相補佐官など政治サイドが外務官僚の動向に目を光らせ、国益のために有益な外務官僚とそうでない者を適確に仕分けることが求められている。(起訴休職外務事務官)


▽関連記事

あなどれない金正日体制下の北朝鮮 (政財界倶楽部 )
http://www.asyura2.com/0610/war85/msg/1419.html
投稿者 まさちゃん 日時 2006 年 11 月 07 日 13:20:38: Sn9PPGX/.xYlo

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